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「「生産・物流・販売まで手掛ける農業ビジネスのプロデューサー」」

公開

<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明さん(左)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手>
エムケイファームホールディングス株式会社
代表取締役 ポール マイルズさん(右)
1968年2月21日生。1998年大阪大学大学院修士課程卒業、三洋電気株式会社入社。2006年三洋電気株式会社と共同事業体設立。2016年代表取締役就任。

【エムケイファームホールディングス株式会社 概要】
設 立 :2014年10月14日
資本金 :40,000千円(株主:経営陣)
所在地 :大阪市西区西本町1-4-1 オリックス本町ビル10F
事業内容:総合農業プロデュース事業
URL :http://mkfarmholdings.jp/

<特別対談>これからのIPOスタイル

「生産・物流・販売まで手掛ける農業ビジネスのプロデューサー」


■ 大型農場のビジネスモデル

小原:大型農場を経営していくためには、生産方式の確立、物流システムの構築、販売先の確保という課題をクリアする必要があります。貴社はそれらを一気通貫で手掛けるビジネスモデルを完成させたという印象です。
ポール:私たちは米国アムハイドロ社の水耕栽培(NFT栽培)方式を導入する事で生産性向上と品質均一化、そしてコスト削減に成功しています。物流面では地方卸売市場やJAの低稼働施設を借りて24時間以内に商品供給可能なシステムを構築します。スーパー、給食業者、直営小売店舗、インターネット通販などへ流通チャネルを広げていきます。

小原:貴社は契約農場に対して水耕栽培ユニットを提供し、品質向上のコンサルティングを行い、農作物の販売まで手掛ける農業の新しい6次産業化モデルだと思います。
ポール:NFT水耕栽培ユニットの強みは年間20毛作が可能で計画的生産ができる点です。アメリカでは26毛作の実績もあります。NFT水耕栽培により収益性を確保し、農家の収入の安定を目指します。

■ 事業計画と資本政策について

小原:今年10月に大阪岸和田で10ユニット、2017年に愛知県名古屋市近郊および静岡県で30ユニットを建設する計画です。これらの資金調達はどのように行っていきますか?
ポール:この2年間の設備投資と運転資金で総額15億円必要と試算しており、設備投資はIPOを通じて資金調達する計画です。運転資金面については、富士電機と水耕栽培システムについて業務提携をしており、岸和田プロジェクトでは設備購入から施工元受けまでサポートいただいています。

小原:設備投資を伴うリアルビジネスの資本政策においては、エクイティ(増資)資金だけでなくデッド(借入)と組み合わせた資金調達がポイントになります。
ポール:当社関係会社の㈱ガデルは、農業法人として日本政策金融公庫や地域金融機関からの借り入れを検討中です。

小原:現在はレタス生産が中心ですが、1200億円の市場規模では成長に限界があります。それ以外の農作物を手掛ける計画はありますか?
ポール:種苗会社と農園毎の専用品種を共同開発して、業務用ネギ、ホウレンソウ、小松菜、パプリカ、ハーブ系薬草のOEM栽培を展開します。オランダ種苗に頼らない独自の種苗を知財化してコスト競争力をつけていきます。

■ 5年後10年後のビジョン

小原:岸和田と静岡の大型農園プロジェクトが軌道に乗れば5年以内のIPOが見えていきます。しかし5年後10年後も事業発展していくためには、企業の社会的使命を明確にする必要があります。
ポール:米国では農業は産業として確立されています。多くの人は日本の農業に対して成長産業と思っていないようですが、私はこのイメージを変えていきたい。消費者へ安心安全安定した農作物供給を通じて農業をビジネスとして確立させ、若年層の農業従事率増加や障碍者の自立支援など社会にも貢献していきたいと思っています。
小原:これからは商品ではなく会社のブランディングが重要になります。日本の農業が直面しているTPPや高齢化など多くの問題に対して、貴社が事業を通じて一つずつ解決していく事を期待しています。本日はありがとうございました。

【対談を終えて】

株式会社AGSコンサルティング 小原靖明

貴社にとっての大きな課題は以下の三点に対応することだと思われます。農業にかかわる事業を展開すると、必ず「規制」と「既得権益」という障害に事業を妨げられる可能性が高くなります。対談の中ではあまり触れられませんでしたが、これらの対応は早めにしておくことが、特に重要だと思われます。また、バイオ事業やAI事業と並ぶ位の15億円の資金調達は、かなり多額となるため、直接投資・間接投資を「組み合わせた」資本政策・資金調達が必要となります。最後に、「農業」の現場の担い手は「地方」です。地方創生と絡めて、地方行政・人材とどう連携していくかが、事業の展開の幅を変えていくと思われます。

エムケイファームホールディングス株式会社 ポールマイルズ

今後、大きく変化する農業に必要な要素は、品質の向上、データに基づいた安心安全です。また、消費者ニーズがますます厳しくなり、高品質ながらも安価であることが求められると考えます。このような環境変化の中で、生産側には生産性の向上、品質の向上、流通革新を起こせる能力が求められる時代となります。それを実現するためには、職業として農業が魅力的な業界にならなければいけないと私は考えます。弊社のビジネスモデルは、この環境変化の厳しさに対応できます。また、社会貢献という観点においても障がい者、及びシルバー人材の雇用を促進し、人が活きる農業を実現していきたいと思います。


※「THE INDEPENDENTS」2016年8月号 - p16-17より