「次世代IoTソリューションの知財戦略」
公開
<聞き手(右)>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋さん
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。
<聞き手(中)>同 松原 正和さん
<話し手(左)>
株式会社スカイディスク
代表取締役 橋本 司さん
1975年8月5日生。1998年長崎大学工学部卒業後、東海興業(自動車部品メーカー)入社。
2003年コアシステム(現・大亜電子)設立。
2009年10月九州大学システム情報科学府博士課程入学。
2010年4月ネビラボ設立。
2013年10月スカイディスク設立、代表取締役就任。
鮫島正洋の知財インタビュー
次世代IoTソリューションの知財戦略
■ 農業と物流分野のIoTソリューション
鮫島:モノをインターネットに接続するIoT技術は開発段階からサービス利用への拡大時期に来ています。農業・物流を当面のビジネスターゲットにする貴社はどのようなサービスを提供していくのでしょうか?橋本:私どもはセンサーデバイス開発、クラウドによるデータ収集と分析サービス、そして可視化までのIoTに必要なツールをトータルソリューションとして全て提供しています。農業分野では温湿度・照度・CO2センサを組み合わせて野菜の収穫予測に、物流分野では人感・加速度・温湿度のセンサによる倉庫の効率的なオペレーション検証に利用されています。
鮫島:収益モデルはどのように作っていくのですか?
橋本:現在はIoT導入コンサルティングが主たる収益です。工場の電力データ使用分析や大気環境計測など環境関連分野からの相談も増えています。将来的にはIoTビッグデータをSIerなどIoTソリューションサービス業者へ提供するモデルを考えています。
■ デザイン性に優れたデバイス
鮫島:貴社のセンサーデバイスは、14種類から3つのセンサをピックアップできる点が斬新ですね。橋本:誰もが簡単に利用できるようなIoTサービスを提供したいと考え、直脱可能なパッケージにしました。センサは同じでも組み合わせによって様々な分野にソリューション適用できます。
鮫島:若い女性にも受け入れられる、着脱式のおしゃれな工業デザインです。これは意匠権を取りたいですね。硬い技術をソフトに見せるのがこれからのトレンドです。その意味では日本製品が世界の中で一番進む可能性があります。
橋本:伝統工芸×IoTは、グローバル展開を考える私たちにとっての製品開発コンセプトです。
■ IoTプラットフォームの構築
鮫島:クラウドサービスによって収集されるIoTビッグデータ活用について利用者の許諾は得ていますか?橋本:ユーザーとは収集するデータの再利用許諾契約を結んでいます。
鮫島:ビッグデータの収集や解析に多くの人的リソースを必要しない点はベンチャー企業向きです。消費者がIoTビッグデータを身近に利用できるサービスとして提供できると市場も飛躍的に広がります。
橋本:B2C分野に進出には資本力が必要です。当面は事業の先行きが読みやすいB2B分野に注力しますが、将来はぜひチャレンジしたいと思います。
■ 知財の要点は価値の保存
橋本:日本ではセンサーメーカーはプロダクト提供だけ、クラウド業者はサービス提供だけと縦割りになっています。私たちの競争力は、デバイス・クラウド・ビッグデータという要素技術を持ち且つ繋げる点にあります。米国には類似モデル企業がありますが、日本ではまだ競合先と言える企業は現れていません。鮫島:貴社の競争力の源泉はビッグデータ収集力だと思います。サービスモデルの知財戦略のポイントは、発明の特許取得から始めるテクノロジーモデルとは違い、ビジネスモデルの価値を毀損させない為に強みを保存する点にあります。将来の競合先に対して参入障壁を設ける事で参入時期を遅らせてサービスモデルを進化させるのです。
橋本:5年後の知財対策の費用対効果をどのように考えたらよいですか?
鮫島:大企業は特許100件取る予算はあっても、中小ベンチャー企業はピンポイントで知財を抑える必要があります。最近は特許を会社PRや投資材料として活用するケースが増えています。農業分野における知財状況を分析すれば、自社の戦略がブルーオーシャンである事を視覚的に証明もできます。技術経営(Management of Technology)分野でも知財マーケティングが注目されています。知財の可視化と価値化はこれからの経営テーマです。本日はありがとうございました。
―対談後のコメント
【橋本】技術経営について議論するチャンスというのはなかなかなく、とても良い経験になりました。特に特許を戦略的に取得していくというのは、感覚では分かっていても実際にどう戦略を立てるのかはわかりにくいもの。そこを鮫島先生は非常にわかりやすくディスカッションできました。技術系スタートアップ企業にとって知財戦略は非常に重要なポイントだと再認識でき、すぐに社内でも取り入れようと思います。【鮫島】資力の乏しいベンチャー企業の場合、いわゆる「技術のへそ」と呼ぶべきようなフォロワーが必ず行き当たるであろう技術的特徴をピンポイントで特許取得する必要があります。当社の場合、さらにサービス系にも強みをもつオールラウンド型企業なので、フォロワーが必ず行き当たるであろうサービスの機能や、エラー処理ルーチンを特許化することが望ましい。このような特許化にあたり、専門家の知見を利用することはコストがかかるようにも見えますが、将来の事業競争力を担保する上で極めて重要な投資です。
―機関誌「THE INDEPEDENTS」2016年8月号 P22-23より
株式会社スカイディスク
- 住所
- 福岡県福岡市中央区舞鶴2-3-6 赤坂プライムビル4F
- 代表者
- 内村 安里
- 設立
- 2013年 10月 1日
- 資本金
- 1億円
- 従業員数
- 事業内容
- URL
- https://skydisc.jp/
- 情報更新日
- 2020年6月27日
※上記は、情報更新日時点での情報です。