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「「食品BtoB関連プラットフォームの事業戦略」」

公開

<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明さん(右)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手>
株式会社リンクアンドシェア
代表取締役 中間 秀悟さん(左)
1973年12月24日生まれ。栃木県立栃木高校卒業。1997年中央大学卒業後、株式会社NOVA入社。スクール運営とグループ会社の広告代理店業務に従事。2003年妻の実家が営む株式会社土屋商店入社。オリジナル食品企画開発「FOODVILLAGE」などの立ち上げに従事。2014年7月株式会社リンクアンドシェア設立、代表取締役就任。

【株式会社リンクアンドシェア 概要】
設 立 :2014年7月1日
資本金 :25,000千円(経営陣、事業会社)
所在地 :大阪府大阪市中央区石町1-1-1
事業内容:食品BtoB関連WEBサービス運営、オリジナル食品企画開発

<特別対談>これからのIPOスタイル

「食品BtoB関連プラットフォームの事業戦略」


小原:「クラウドフード」は地方の食品工場に仕事紹介や開発支援を提供するという明快なビジネスモデルです。食品原材料問屋で13年の経験がある中間社長がこの業界に感じた問題意識は何だったのでしょうか。

中間:地方の食品工場は良い商品・技術を持ちながらも営業面で致命的な問題を抱えています。一方で、都市圏に多い買い手となる小売や外食などでは、商品を探す、工場を探すなどの食品関連の仕事が日々生まれながらも情報を持ちえていません。食品物流の世界はこの構造が400年間変わっていないのです。WEBサービス「クラウドフード」によってこれらを有機的につなげれば、もっと多様な食文化が実現できると考え、2015年7月にスタートしました。

小原:事業開始と同時に九州支社を立ち上げましたが、地方の食品工場をいかにおさえるかがポイントになります。

中間:この地域は牛豚鶏魚野菜など食資源が豊富で、加工賃も安く、良い商品・技術が沢山埋もれています。九州をカバーできれば、今後の大きなアドバンテージになります。現在、食品関連の展示会でインターンの学生に勉強も踏まえてブースを回ってもらって名刺を集めたり、1件ずつ架電したりと泥臭く営業しています。最近は既に利用している方からの紹介も増えてきました。非常に手間のかかるものですが、だからこそやりきれば大きな参入障壁になります。

小原:開始1年で案件紹介100件と実績もついてきています。単なる仲介に留まらず、企画開発を支援するコーディネート機能がマッチング成立を後押ししています。

中間:広告代理店におけるクリエイティブ部門を参考にしています。前職でもオリジナル食品企画開発部門を立ち上げ、売上を3倍に伸ばしてきました。御用聞きでは介在価値がありません。食品流通は年間70兆円と言われていますが、これを問屋から置き換えるのではなく、育てていく気概で取り組んでいます。

小原:先行者としてスピード感を持って経営をしていくために、エクイティファイナンスも検討すべきです。

中間:最近事業計画を見直し、一気に展開することを決断しました。ゆっくり成長することもできますが、早く利用者を増やすことが利用者にとっての価値向上につながり、結果的に成功確度を高めると考えたからです。そのために資金調達は必須であり、投資家との交渉を始めています。

小原:都市の仕事を地方に還元する「地方創生」の文脈もあります。また、日本の食は海外からの注目度も高い。

中間:九州の食品加工工場を回ってよく分かるのは、最初から海外に目が向いていることです。既に外国からの引き合いもあり、商談は進んでいます。

小原:一見オンライン完結型に見えますが、本質は極めてアナログな会社ですね。人が成長の鍵を握り、またボトルネックにもなってくる。採用や組織つくりはどのようにお考えですか。

中間:企画開発力に長けた人材を求めています。業界経験者よりは、クリエイティブな提案ができる人を採用し、業界知識を学んでもらう方が近道だと考えています。営業体制については、信頼を得て紹介をしてもらえる仕組みづくりが先決です。人間の商売なので、貴方だからお願いしたい、そう言われる組織をつくりたいと思います。

小原:旧態依然としていた業界なので、新しいサービスに対して反発も予想されます。社会的な信頼を得るために、早期にパブリックな会社になることをおすすめします。

中間:多くの食品工場は温かく受け入れてくれますが、やはり警戒心は拭えません。ある程度の認知を得られればと考えていましたが、確かに上場がそれを解決する手段になるかもしれません。事業計画の前倒しも検討したいと思います。

小原:上場を活用して、日本の食産業を支えるプラットフォームになってください。本日はありがとうございました。



【対談を終えて】

小原靖明

IT、クラウドサービスと旧態依然とした食品加工業を結びつける非常に面白いビジネスモデルだと思います。また「食品」を通して地方を活性化するということで地方創生にも貢献してゆくでしょう。その際、食品加工業を支援してきた、これまでの中間社長の経験が生かされるのだと思います。いずれにしても、今後は「人材」「ビジネス」等に資金が必要となってくるので、綿密な事業計画と資本政策を用意し、資金調達をして、ダイナミックな事業展開を図られることを期待します。

中間秀悟

対談では、小原専務に私たちの事業の本質や問題点をズバズバとご指摘頂いて気持ちよかったです。「成長のスピード感」「食品業界からの信頼」「人材」の部分は、事業計画を立てる際に私が最も留意している点であり、これから様々な戦略で乗り越えていかなければならないポイントです。WEBとアナログの要素をうまく融合させながら事業を成長させていきたいと改めて感じることが出来た対談でした。ありがとうございました!


※「THE INDEPENDENTS」2016年7月号 - p16-17より