「「瀬戸内地域における観光産業の活性化について」」
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白畑 敦則 氏(株式会社せとうち観光パートナーズ 代表取締役社長)
水上 圭 氏 (株式会社瀬戸内ブランドコーポレーション 代表取締役社長)
杉内 信夫 氏(株式会社海外需要開拓支援機構 執行役員)
<モデレータ>松田 修一 氏(早稲田大学 名誉教授)
白畑:このたび、瀬戸内地域の観光活性化を目的に「せとうち観光活性化ファンド」を設立しました。本ファンドは瀬戸内地域の銀行7行(阿波銀行、伊予銀行、中国銀行、百十四銀行、広島銀行、みなと銀行、山口銀行)と日本政策投資銀行(DBJ)がLP出資者です。またクールジャパン機構からもLP出資していただいています。瀬戸内地域にあり、瀬戸内地域の観光活性化に資する事業を営む事業者の方は企業規模に関わらず本ファンドの投融資対象になります。お金を提供すること以外にも、せとうち観光推進機構と瀬戸内ブランドコーポレーションからなるせとうちDMOより様々なサポートができること、その2点が大きな特徴であると思っています。
水上:(株)瀬戸内ブランドコーポレーションは今年4月に同じタイミングで設立された一般社団法人せとうち観光推進機構とともに、「せとうちDMO(Destination Management/Marketing Organization)」を形成、瀬戸内における観光需要の創出に貢献していきます。せとうち観光推進機構は瀬戸内を共有する7県が一体となり、瀬戸内ブランドを確立し観光客を呼び込むためのプロモーションを行っていく組織です。(株)瀬戸内ブランドコーポレーションは19の地域金融機関と地域内外の27事業会社から出資を受け、せとうちの観光客に対して、地域の観光コンテンツをより魅力ある形で提供していく組織です。
杉内:クールジャパン機構(正式名称:(株)海外需要開拓支援機構)は、2年半前に経済産業省を主体として民間企業約20社からの出資を受け設立された官民ファンドです。日本の衣食住やコンテンツ産業への旺盛な海外需要を獲得し、日本の経済成長につなげることを狙いにしています。ファンド予算1,000億円に対し、これまで400億円ほどの投資実績があります。ジャパン・モールやフードコート等の「海外プラットフォーム整備型事業」への投資だけでなく、今後は、高岡銅器、日本酒、パティシエ・ケーキ店、ブライダルサービス等、国内各地域の魅力的な商品やサービス等の世界展開を支援する「地域企業等支援型事業」を新たな事業として行います。 今回のせとうち観光活性化ファンドへの出資目的は、瀬戸内国際芸術祭などで多くの外国人が訪れているせとうち地域の施設・インフラ整備支援になります。
松田:瀬戸内「工業地帯」が瀬戸内「観光地帯」に変化していくための大役を「せとうち観光活性化ファンド」および「瀬戸内ブランドコーポレーション」が担い、そして「クールジャパン機構」が後押しする。そしてそれぞれの地域の金融機関、行政が協力するというスタイルになっていると感じます。
松田:それでは最初のテーマですが、融資とファンドによる投資は違うものではあります。事業者からすると融資と投資の選択があるわけですが、どのように違いをご説明しているのでしょうか。
白畑:資金調達という点については大きな違いはないと思いますが、調達後の融資(銀行)と投資(ファンド)の目線はずいぶんと違うものになります。銀行の立場は毎月の事業進捗状況を確認させていただくことになりますが、ファンドの立場からすると、将来的に事業を成長させていく中で今何をしていくべきなのか、という視点になります。特に本ファンドについては、せとうち観光推進機構と瀬戸内ブランドコーポレーションからなるせとうちDMOによる支援という、非常に特徴のある仕組みになっています。
松田:複数の地域金融機関を取りまとめるのはご苦労もあったと思いますが、開始にあたってはどのような状況だったのでしょうか。 水上:本件の元をたどると、瀬戸内地域の各県、行政側がスタートしたものです。そこから各地域金融機関に声かけが始まり、一体となって取り組むこととなりました。少子高齢化や過疎化が進む中でどうやったら地域活性化していけるのか、そういった考えが共通の危機感があったために、一体となって進めることができました。
松田:県同士、金融機関同士が対立してしまうことはよくあることです。その中で共通した考えを持って一体となって進めていく中で、DMOという考えは切り札となると思います。地域の既存観光事業者も含め、もっと高いレベルを目指していくためにクールジャパン機構という立場からできることはないでしょうか。
杉内:例えば民泊については、既存の宿泊施設と、明らかに宿泊施設が足りない住宅地とでは棲み分けができると思っています。クールジャパン機構としては、その町の文化も同時に組み合わせて、単発施設に対する支援でなく、地域の発展に関わる長期的なプロジェクトに関わっていきたいと考えています。
松田:クールジャパン機構について、単発の事業支援と思っている人もいると思うのですが、今のお話にあったように、地域をひとつにして、海外に展開していくようなことを考えている組織ということですね。
松田:次のテーマですが、投資の出口についてどのような回収を考えているのでしょうか。
白畑:本ファンドはあくまで事業者の方の資金調達の支援がメインです。その出口としては、その事業者またはその地域の他の事業者に何らかの形でお返しするようなことを考えています。ファンドの運営期間以降は金融機関によるリファイナンスを行うなど、出口も含めて様々な可能性があります。
松田:地域をネットワーク化しながら世界に発信するために統一ブランド化する。そのような中で、ホールディング化していく中で上場等に向けて動いていく、そういう出口の可能性もあるのでしょうか。
水上:ただの経営面の再生ではなく、例えば「瀬戸内ブランド」としてホテルを作り上げていくことができるはずです。各地域で再生した複数のホテルをつなげて「瀬戸内ブランドホテル」と一体再生することで、規模も大きくできますし、プロモーションもかけやすくなります。そうすれば上場することも可能でしょう。投資の仕方、出口の作り方はもちろんのこと、瀬戸内地域全体に波及できるような考え方をして進めたいと思います。
松田:クールジャパン機構の今回の瀬戸内地域への取り組みが、他の地域の参考モデルになると思いますが、従来の取り組み方とは海外への売り込み方は違ったものになるのでしょうか。
杉内:従来の海外展開に関しても単発のプロモーション活動をしてきたわけではありません。あくまで文化に重きを置いてきました。例えばモール内で日本酒のプロモーションを行うことで、その国の人は日本に来た際、酒蔵めぐりをするかもしれません。新酒の時期に合わせて来日するかもしれません。そうなるとモノの消費だけでなく、ライフスタイルに重点を置いたツーリズムといえるでしょう。そのような多層的な取り組みを考えています。
松田:その地域の固有の経営資源というのが山ほどあるということですね。今回、瀬戸内という広い場を提供したということは、地方創生の原点になるのではないかと思います。私は周防大島の出身です。「地方創生の切り札はよそ者、ばか者、若者」と言われています。ぜひこれからのご活躍とこの地域への一層の貢献をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
―2016年5月25日広島県チャレンジ企業セミナー(サテライトキャンパスひろしま)にて