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「カーボンナノチューブの知財戦略と資金調達」

公開

<聞き手(左)>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋さん
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。

<話し手(右)>
株式会社名城ナノカーボン
代表取締役 橋本 剛さん
1973年愛知県名古屋市生まれ。東海高校卒業。1997年早稲田大学商学部卒業後、三菱UFJ信託銀行入行。2001年株式会社スリーサンズ入社。2003年名城大学理工学部安藤研究室 研究員。2005年株式会社名城ナノカーボン設立、代表取締役就任。

鮫島正洋の知財インタビュー

カーボンナノチューブの知財戦略と資金調達



※株式会社名城ナノカーボンは、2018年5月に資金調達に成功しました。
<未来創生ファンド、SMBCベンチャーキャピタル他5社が高品質カーボンナノチューブベンチャー、名城ナノカーボンへ投資実行>



鮫島:名城大学は赤﨑勇教授のノーベル物理学賞受賞で有名ですが、カーボンナノチューブ(CNT)発祥の地としても有名ですね。
橋本:CNTは弊社最高顧問の安藤義則(現名城大学名誉教授)が、飯島澄男博士(現名城大学教授)に炭素材料を合成して提供して1991年に発見された新素材です。私どもはその技術を基盤に高純度の単層CNTの開発と生産方法を研究しています。名城大学はもちろんですが、産総研をはじめ複数の研究機関とも連携しながら分厚い技術開発体制を構築しています。

鮫島:合計26件もの特許を拝見すると、精製・製造・応用分野まで取得出願されており、バランスの取れた強い特許ポートフォリオを構築しています。CNTの応用分野は電池材料から細胞培養膜まで幅広いですが、貴社はどの分野をターゲットに事業展開を考えていますか?
橋本:CNTの性質には軽量強度性・導電性・熱伝導性・電子放出性・金属特性・半導体特性・細胞培養促進などありますが、私どもは単層CNTの高い導電性、軽量性に着目し事業化を目指しています。具体的には航空機や衛星向け特殊ケーブルを、銅に代わる新素材として提供したいと考えています。私どもは材料サンプル販売を通じて、単層CNTだけでも9トンの需要があると推定しています。ただそのためには、現在グラム数万円と非常に高価な価格を1,000円にまで下げる事が前提になります。

鮫島:特許で独占できれば理論的には90億円の市場を抑えられますね。開発型ベンチャーにはニッチトップ戦略が重要です。そのためには知財戦略が必須です。価格を下げるには量産体制構築が必要とましますが、現状の年間生産能力はどのくらいですか?
橋本:単層CNTで30kg、多層CNTで400kg、単層・多層の分散技術では10トンです。CNT材料サンプル出荷ですが、2018年までに単層CNTの生産能力1トンを目指しています。プラント建設には20億円必要ですが。

鮫島:そうなると資金調達が課題ですね。スパイバー(山形)のように公的機関や大企業からの資金調達に成功して大規模な工場設備を投資した例もあります。或いはマイクロ波化学(大阪)のように共同ライセンス型のビジネスモデルで設備投資負担を軽減する方法もあります。
橋本:設立以来、NEDOなど公的資金を活用して研究開発を行ってきましたが、単層CNTを普及させるためには上場を目指して量産体制構築のための資金調達を行いたいと考えています。

鮫島:VCから大型の資金調達をするためには事業ストーリーが重要です。素材開発型ベンチャーにとっては、どのような市場が創造されるのかを投資家に対して説明できるかがポイントになります。CNTの基本特許は切れていますが、貴社はターゲット市場が明確で、かつその分野において隅々まで特許を抑えて参入障壁を作っているのが素晴らしい。今まで基礎研究に時間をかけて技術は確立し、市場リサーチも行ってきています。大型資金調達を成功させ、事業展開のスピードアップする事を期待しています。本日はありがとうございました。

―機関誌「THE INDEPEDENTS」2016年5月号 P18-19より

株式会社名城ナノカーボン

住所
愛知県名古屋市守山区下志段味穴ヶ洞2271-129 サイエンス交流プラザ
代表者
設立
2005年4月25日
資本金
47,800千円
従業員数
事業内容
URL
http://www.meijo-nano.com/index.php