アイキャッチ

「「食品業界における中小企業の活性化・再生支援」」

公開


1964年北海道函館市生まれ。1983年北海道札幌南高校卒業。1988年一橋大学商学部(金融論専攻)卒業。1988年大和証券株式会社入社。1994年ペンシルバニア大学ウォートン校(MBA)卒業。1997年モルガン・スタンレー証券株式会社入社。2006年株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス設立、代表取締役就任。2016年3月4日東京証券取引所マザーズ市場上場(2884)。

【バックナンバー】

2008年12月~*最新号もこちら

【イベント一覧】

全国年45回の事業計画発表会他

【入会案内】

月刊誌購読、イベント参加etc.

【マイページ登録】

メルマガ購読、イベント申込etc.

■ はじめに

 今から5年ほど前、インデペンデンツクラブの会報誌に私のインタビュー記事を掲載していただきました。当社のビジネスモデルについて的確にまとめていただき、その記事を読んで当社を訪ねて下さった方がとても多かったのを覚えています。

■ ビジネスモデル

 当社は四季報では食品製造業者になっていますが、ビジネスモデルの実態は「食品業界における中小企業の活性化および再生支援」という方が適切です。
 日本には多くの中小食品会社がありますが、事業継続に資する十分な競争力を持つ“良い会社”であっても有能な後継者がいるケースは稀で、ほとんどが事業承継の問題を抱えていると言っても良いでしょう。
 “良い会社”なのに後継者がいない場合、オーナーから経営を引き継ぐプレーヤーとしてまず思い浮かぶのは買収ファンドです。しかしファンドは転売が前提ですから、オーナーの理解が得られにくくM&Aが成立しにくいのです。また、大手食品企業も有力候補ですが、中小企業の買収は手間がかかるため敬遠されがちです。
 しかし、当社は自己資金による買収で転売を前提とはしませんし、売上数十億円規模の中小企業でも連結子会社となってグループの成長に貢献してもらえます。言わば「同じ舟に乗る」買収スタイルです。当社は2008年の会社設立時からこのM&A手法によってグループ企業を増やし、現在では傘下に8社の事業会社があり、直近(2016年2月期)の売上は128億円となっています。

■ 「中小企業支援プラットフォーム」とは

 当社が買収するのは、厳しい競争の中で生き残って来た“良い会社”です。そういう会社には強みがあります。その強みは商品力であったり営業力であったり製造力であったりと会社によって様々です。
 「中小企業支援プラットフォーム」の考え方はとてもシンプルで、買収会社の強みや弱みを機能別に洗い出し、「強み」を活かし、「弱み」を補完する仕組みのことです。
 例えば営業力の補完なら、当グループには全社合計で数十名の営業マンがおり、統括責任者が横断的にコントロールしているので、この組織力を活かして「どの既存商品と組み合わせて販売するか」、「どういう販路を使うか」、「地域性をどう考えるか」など、商品販売をグループ全体の戦略として考えます。これにより、買収前に比べると営業力が格段にパワーアップするのです。
商品開発や品質管理、経営管理など他の機能でも同じ手法を取ることが出来ますから、買収企業は、当社の「中小企業支援プラットフォーム」の仕組みの中で更なる成長を目指すことが出来るのです。

■ 従業員のモチベーションアップが成功の鍵

 買収後には、業務フローや会議のやり方、目標管理手法などを見直しますが、これによりムダや非効率が目に見えて改善されます。また、買収会社の役職員をホールディングの幹部に抜擢したり、古い生産設備の更新など設備投資を実施することもあります。
 グループ傘下の楽陽食品はチルドシウマイトップシェアの優良会社ですが、8年前の買収当時は赤字会社でした。従前の株主は買収子会社に資金を投じようとせず、古い設備を修理しながら使い続けていました。ところが、当社は買収後に思い切った設備投資を実施したので、従業員が「これまでの株主とは違う」と感じてくれたようです。設備投資により生産性が上がると利益が出るようになり、賞与も復活しました。
 業務フロー改善や人事政策、設備投資などの一連の施策により経営数値が改善されると、従業員のモチベーションが高まります。そうなると社内の風通しが良くなり、現場から様々な情報が上がって来るようになります。その結果、更に生産性が上がり利益が増え、従業員の所得も上がるという好循環が生まれます。私は、このような正のスパイラルを創り出すことこそが、中小企業再生の鍵だと実感しています。

■ 質疑応答

Q:M&Aの失敗事例は?
A:過去に1社あります。買収企業の弱みが想定以上に大きかったことが原因です。
Q:買収直前にM&Aを取り止めたことは?
A:デューデリノウハウが蓄積されて来ているので、見込みが低い案件は早い段階で謝絶しています。
Q:海外展開については?
A:現状のプロダクツでは難しいと感じています。今後、海外市場が狙えるM&Aが実現すれば具体化して行きたいと考えています。
Q:今後のM&Aについては?
A:IPOにより情報量が3倍に増えましたが、当社のマンパワーが追い付きません。年間3社程度を上限にM&Aを継続して行く考えです。

―2016年5月9日インデペンデンツクラブ月例会(東京21cクラブ)にて

【起業家インタビュー】食品業界の統合戦略(株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス 吉村元久氏 )