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「「Boys, be to Ambitious! ~アンビシャス市場を利用して全国へ~」」

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1971年4月10日名古屋市生まれ。一橋大学商学部卒業。1995年株式会社さくら銀行(現・株式会社三井住友銀行)入行。2004年株式会社エコミック入社、管理部長、取締役管理部長を経て2004年6月代表取締役社長就任。2006年4月札幌証券取引所 アンビシャス市場に上場。

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本日の表題はいつか使いたいと思っていた次第です。アンビシャス市場は、ここをステップとしてさらに成長していく市場として、非常にいい市場ではないかと感じています。本日は、当社がそのアンビシャス市場に上場しどのように成長してきたのかのお話を中心に、今後上場をお考えの会社の方々の参考になればと考えております。

パート従業員による分業体制が特徴

まずは会社概要をご説明いたします。当社は札幌にある企業で、給与計算に関わる業務のアウトソーシングを行っております。この4月より設立20期が始まり、上場してからは丸10年になります。社員は119名で、うち70名くらいがパート従業員です。この従業員構成が当社の特徴でもあります。基本となるルーティン業務はパート従業員により分業で行っています。パート従業員で対応可能な業務に分業することにより、スケールメリットを出しやすくするという仕組みです。業務の処理は一部中国の青島で行っていますが、ほぼ全て札幌で行っており、東京と大阪は営業拠点として機能しています。

業務の前後に発生するデータ整理からアウトソーシングできる

給与計算、賞与計算、年末調整、税金関連などはどの企業でも行われている一般的な業務と思われるかもしれません。しかし実は目に見えない部分こそが業務量の多い部分であり、給与計算にしても、その前後のデータ整理等の準備段階に多くの「手間のかかる作業」が発生しているのです。当社はその「手間のかかる業務」にも対応しており、当社の優位性ともなっています。入退社データ・扶養変更情報・タイムカード・出勤簿等のデータさえ当社に送付いただけば、そこから必要な情報を取り出し、内容確認のうえで給与計算を行い、計算結果データを出力し、それをお客様にお渡しすることができます。お客様側としても、当社送付用のデータを作成する必要はなく、通常社内で使っている紙資料やデータのまま送付いただければ当社は対応が可能です。これらの作業は結局のところ、紙資料であるアナログ情報をデジタル情報化するところが一番手間のかかる作業なのです。その部分も含めてアウトソーシングできるというのが当社をご利用いただく最大の強みになります。

最大のメリットは業務増減にまつわる人事問題の解決

サービスのメリットとしては、まず人事に関することが挙げられます。給与計算は専門性の高い業務であるがゆえに、少数の担当者の選任化が進むケースが多く見られます。通常時はそれで問題ありませんが、担当者の急な休職や退職等が起こると一気に業務が停滞してしまいかねません。また、給与計算という業務は定期的に発生する業務のように見えますが、実は時期によって波があるのです。年末調整や住民税の切り替え等、年に1〜2回しか発生しない業務もあります。アウトソーシングすれば業務増減のための人員補充を行うこともなく、スムーズに対応することが可能です。また、通常は給与計算業務にはシステム所有がつきものです。それらシステムの管理やバージョンアップ等に係る手間やコストもアウトソーシングすることで不要になります。さらに、自社でシステム所有している場合、災害発生リスクに対応することが必要になりますが、アウトソーシングは結果的にそれらに対応することになります。

企業の宿命は「利益を増やすこと」

今までご説明したようなメリットがあったとしても、社内に既に給与計算や社会保険業務担当の社員がいる場合、アウトソーシングするという判断はしづらいかもしれません。しかし企業の宿命とは「利益を増やすこと」。そのためには売上を増やすかコストを下げるかの、大きく分けてふたつの方法があります。このふたつに該当しない――つまりは利益を増やすことに貢献しない業務に対する資本投入は最小に抑えなくてはなりません。そこをアウトソーシングの利用により工夫するのです。

あらゆる規模の顧客に対応できる当社だけの理由

当社のアウトソーシングにはいくつかの特徴があります。同業他社には、大規模企業を対象としたシステム系企業、小規模企業を主な対象とした税理士・会計士事務所などがありますが、当社は全ての規模の企業に対応が可能です。給与計算処理では650社7万5千人の実績があり、従業員15名から8,000名超の企業まで、様々な規模のお客様にご対応させていただいています。なぜそのような幅広い対応が当社では可能なのでしょうか。システムに関して言うと、大規模企業向けと小規模企業向けではどうしてもシステム上の違いがあります。同じシステムで対応するのは難しいといえるでしょう。しかし冒頭でご説明したとおり、当社の業務はパート従業員の分業によって行われています。一般的には同一システムでは対応が難しいような規模や性質の違う企業のデータも、パート従業員のオペレーションによって、同一システムで捌くことが可能となっているのです。それが幅広い規模の顧客に対応できる当社の強みとなっています。その点は同業の中でもユニークな立ち位置になっているといえるでしょう。

「アウトソーシング会社にとってのアウトソーシング先」としても飛躍

また、給与計算処理を行うと年末調整処理が必要となりますが、当社実績として、給与計算処理が650社、7万5千人分であるのに対し、年末調整処理は750社、32万人分となっています。すなわち、年末調整処理のみ委託している企業があり、この点も当社の特徴といえます。年末調整処理は、保険証書等の紙類を扱うことが必須の業務であり、申告書と証書類との突合作業が必要になります。そこについてはペイロール・アウトソーシング会社、シェアードサービスセンター各社から再委託を受けており「アウトソーシング会社にとってのアウトソーシング先」でもあります。このような処理ができるのも、冒頭に説明したように、パート従業員による分業体制構築の成果です。自動車工場の組み立てのように、各人が担当部分をミスなく責任を持って行う仕組みが鍵となっています。

小さくても上場することは大きな信用力を得ること

次に当社の上場についてお話します。上場したのが2006年4月4日。上場以降はリーマンショックや東日本大震災などがありましたが、それらを乗り越え、成長を続けて今に至ります。上場直前期は1億7,100万円という売上でした。ずいぶん小さな売上規模であるとお感じかと思います。バイオや研究開発企業を除けば、最も売上の小さい新規上場企業であったのではないでしょうか。それでも上場へつながった背景として、アンビシャスという市場が地元にあったということも大きな要因のひとつと考えています。上場の段階での当社はアーリーステージとも言える段階でした。信用力がないと給与計算という重要業務をお客様から任せてもらえません。そういう視点から、小さくても上場するということは大きな信用力を得ることにつながると考えました。その結果が上場後から現在に至るまでの成長につながっています。上場したことによって、大手企業や金融機関関連企業等からもダイレクトに業務を受託しており、上場していなかったらそのような信用力は得られなかったと考えています。また、その結果、売上に関する取引先内訳がずいぶん変わりました。上場前の2006年3月期は北海道内63%:北海道外37%だったのですが、2015年3月期では北海道内21%、北海道外79%となりました。北海道外から仕事を引っ張ってきて、北海道内で雇用を生むという流れを構築することができました。

真のシェアードサービス企業を目指して

今後の発展についてお話していきたいと思います。ひとつは、給与計算業務のアウトソーサーとして、さらに高品質・低価格のサービスをお客様に提供するということです。ふたつめとしては、あらゆる企業のシェアードサービス会社になることです。シェアードサービス会社というのはグループ企業の給与計算等をまとめて対応するような企業のことを指します。650社の給与計算処理という当社の実績は全国で最も多くの顧客を抱える企業であり、給与計算については既にシェアードサービス企業であると言えるでしょう。今後は顧客社数を増やすことだけでなく、今ご対応させていただいているお客様の業務の中で、給与計算以外のルーティンワークにも携わっていきたいと考えています。お客様の利益に貢献すること、それを当社の使命として、お客様の発展に寄与していきたいと思っています。上場したことで色々な道が開けたと感じています。上場をお考えの企業のみなさま、アンビシャスという市場は非常に使い勝手のよい市場です。選択肢のひとつに入れていただければと思います。

―2016年4月20日北海道インデペンデンツクラブ(札幌証券取引所)にて

【講演レポート】地域密着からグローバルへ~上場と私の経営戦略(キャリアバンク株式会社 佐藤良雄氏)