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「株式会社フリープラス、株式会社プリプレス・センター」

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早稲田大学
商学博士 松田 修一 氏

1943年山口県大島郡大島町(現周防大島町)生まれ。
1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。
1973年監査法人サンワ事務所(現監査法人トーマツ)入所、パートナー。
1986年より早稲田大学に着任し、ビジネススクール教授などを歴任。日本ベンチャー学会会長、早大アントレプレヌール研究会代表世話人も務める。2012年3月教授を退官。ウエルインベストメント㈱取締役会長
特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ代表理事

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今年3月に上場を果たした㈱ヨシムラ・フード・ホールディングスの吉村元久社長から、食品業界における中小企業の活性化・再生のために、M&Aを成功させるノウハウと成長に導く機能別のプロを揃えた中小食品業界のプラットフォーム構築に関する基調講演をいただきました。
 さて、事業計画発表の2社につき、さらなる飛躍の視点から講評を致します。

No.677 株式会社フリープラス(代表取締役 須田 健太郎 氏)

日本の経営資源を活かして「日本を元気にする」手段として「観光立国事業」を選択した須田社長は、2007年に起業しました。会社の強さは、日本の大手旅行業者が手を付けていない東南アジアの地方・中小旅行業者に直接接触し、現地のニーズをくみ取り、訪日旅行事業を設計しています。これを可能にする一端が、145名中35%の外国籍社員で構成する社内体制があります。2020年の第2回東京オリンピックでの訪日観光客2,000万人の政府目標が4,000万人に変更されたように、起業当時には考えてもいなかったフォローの風が吹いています。IPO後さらに加速して、「日本を元気にする」プラットフォームになるために、次の3点を配慮ください。

①次々と拡大する事業領域に対応した組織体制を

須田社長の想いとスピード感に挑戦意欲の高い若者が経営陣に参画している。訪日客や現地旅行業者との信頼性の高さが、リサーチ事業、自治体資源の海外発信、プロガイドと海外富裕層のマッチングを始め、ホテルや航空にまで事業拡大を可能にしています。訪日客情報を幾層にも活用するシナジー横展開事業です。これら横展開事業の拡大は、事業固有の運営が不可欠になりますので、マトリクス組織に似た風通しの良い組織体制を構築する必要があります。

②日本の地方創生のプラットフォームへ

訪日客のゴールデンルートは東京から大阪までですが、自治体資源の海外発信を支援していることもあり、地方の観光資源・観光人材育成等を通して、ゴールデンルート以外の地方創生のプラットフォームとなることも期待したい。経営効率的には劣るかもしれないが、長期的には会社運営のリスク分散にもなります。

③訪日顧客情報を活用した事業展開を

新たな事業展開は訪日顧客情報の多層的活用です。「東南アジアのお客様を日本中心から、日本のお客様を東南アジアへ、東南アジアのお客様を世界へ」と、10年単位で交流の輪を事業の輪に拡大し、「人の交流で日本を元気にから、世界を元気に」していただきたい。

No.678 株式会社プリプレス・センター(代表取締役 藤田 靖 氏)

2代目・3代目という歴史ある業界で大手と中小の2極化が明確になっている印刷業界に、1991年26歳で飛び込んだ藤田社長は、業界ではせせら笑っていたマックのパソコンを活用した紙とデジタルの融合という新たなビジネスモデルに挑戦しました。その後デザインの重視、編集やレイアウトの自動化、名刺やはがきなど大手が手掛けない小ロット・多品種印刷を手掛け、2010年以降中小印刷会社のM&Aにより、着実に印刷関連の事業領域と事業地域を拡大しつつあります。第2回の東京オリンピック前に、札幌証券取引所(アンビシャス市場)にIPOをしようと考えているが、IPOを成長加速戦略と考えるには、次の3つの課題を配慮する必要があります。

①M&Aを成長戦略の一つと考えるときの納得性

稼働率の低い中小印刷業界に、「ネット印刷サービス」事業でプラットフォームとなりつつある「ラクスル」との違いを、M&A先に対してどのように納得性のある説明ができるかが、M&Aを成長戦略とするとき重要となります。後継者難・高齢従業員が多いが技術力のある印刷会社には、当社の優位性があると考えます。ただし、ラクスルは顧客視点のビジネスモデルに対して、当社は生産視点のビジネスモデルですので、本部でのマーケット開発能力や営業能力が重要になります。

②紙ベース市場の底堅さと競争優位性の確保

紙からデジタルに言われ始めて久しいが、一覧性の高い紙ベースのニーズは高く、紙ベース市場の底堅さが現実の市場動向から明らかになっています。しかし、大手印刷会社の電子部品業界への事業シフト等があり、特殊印刷やパッケージ印刷事業から撤退している現実があり、残り物に福がある状況になりつつあります。当社の追求する多品種・小ロット印刷事業に大手が参入することはないが、当社と同じビジネスモデルが競合相手となります。印刷コストの安価なフィリピン等への製造・デザイン拠点の拡大等、国内競合相手との競争優位性を確保し続ける必要があります。

③北海道を基盤に全国展開のスピード

印刷物は重量物ですので、配送コストがかかります。印刷場所と印刷物利用場所との関係に制約がある事業です。北海道を起点に収益モデルを確立し、IPOを成長加速戦略とするには、北海道から全国展開しているニトリ等の先行企業のように、市場と連動した全国展開スピードを重視し、印刷業界の持つ機能を明確にした業界支援プラットフォームを確立することが不可欠です。

2016年5月9日東京インデペンデンツクラブ 東京21cクラブにて