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「「日本発、世界にイノベーションを ドローン分野でも」」

公開

<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明さん(右)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手>
テラモーターズ株式会社
代表取締役 徳重 徹さん(左)
1970年1月山口県出身。柳井高校出身。1994年九州大学工学部卒業後、住友海上保険(株)入社。2000年サンダーバード国際経営大学院にてMBA取得後、シリコンバレーのインキュベーション企業であるBusiness Café, Inc.代表として IT・技術ベンチャーのハンズオン支援を実行。2010年当社設立、代表取締役就任。2016年テラドローン(株)設立、代表取締役就任。

【テラモーターズ株式会社 概要】
設 立 :2010年4月1日
資本金 :1,667,600千円
所在地 :東京都渋谷区神宮前5-53-67
事業内容:電動バイクの開発・製造・販売
関連会社:テラドローン株式会社、ベトナム・フィリピン・インド子会社

<特別対談>これからのIPOスタイル

「日本発、世界にイノベーションを ドローン分野でも」


小原:電動バイク市場での世界制覇を目指してもの凄いスピードで経営されてきました。設立からの6年間で、製造、販売、人材面など最も苦労した点は何でしたか。

徳重:私どもの売上の95%は新興アジア国です。私自身も月のうち3週間は海外に行き、現場主義、現地主義を徹底してきましたが、各国毎に違うお客様の価値観を掴んでそれをスピーディに製品化させる事は並大抵ではありませんでした。新興国ではとにかく価格が最重要です。性能、デザイン、サービスがどれほど良くても、競合先の中国企業やローカル企業の価格より高ければ全く売れません。日本の大企業はどの項目も5点満点なのに価格だけは1点です。

小原:当初のプロダクトアウトからマーケットイン、そしてユーザーインへと市場戦略を変えてきたわけですね。今年3月は売上30億円と前期10倍になります。電動バイク市場の新興アジア国での売上は将来どこまで伸びるでしょうか。

徳重:2011年に設立したベトナム子会社では2輪車を年間2万台販売しています。売上比率45%のバングラディシュ市場は50万台500億円です。昨年参入したインド市場はその10倍の5000億円の市場規模があり、今後は三輪車を中心に大きな成長が期待できます。その3市場で2018年売上高300億円を目指しています。

小原:今年3月に新会社を設立してドローン事業への参入を発表しました。

徳重:私どもは2020年までに売上高1000億円達成を目標にしており、半年前から新事業検討する中で、市場規模が大きい点と市場黎明期である点から参入を決めました。ドローンは空のEVと言われ今までの私どもの経験が活かせる市場です。

小原:シリコンバレーや日本国内にも競合先が多数存在し激戦が予想される中で事業収支面でのポイントはどこにあるのでしょうか。

徳重:海外では中国DJI社が圧倒的シェアを持っていますが、私どもの戦略はハードよりアプリケーション開発にあります。ハードでは差別化は難しいと考えています。対象市場は数千億円ある老朽インフラ市場の土木調査分野に絞り、従来1日以上かかっている作業時間を空からの測量によって1時間に短縮して精度とコストで新たな業務用ドローン市場を開拓していきます。

小原:海外電動バイク市場から国内ドローン市場までこれだけ事業範囲が広いと人材採用や教育面が成長のボトルネックになりませんか。

徳重:テラモーターズのカルチャーは圧倒的スピードと現場主義の徹底です。アジア新興国では日本では考えられないような問題が毎日のように起きて、前例のないそれ等問題へ対応力が求められます。メンタルタフネスでないと耐えられませんが、それでも私たちの事業に共鳴して入社する人たちと一緒に世界を目指したいと思います。

小原:貴社の事業展開スピードを考えると海外上場も一つの選択肢だと思います。

徳重:上場時期はもっと企業価値が高まってからを考えています。ソニーやホンダを超えたいと思い起業したので日本を代表する企業として世界から認められる事が上場の目的です。

小原:本日はありがとうございました。日本を代表するグローバルベンチャーとしての大きな成長を期待しています。


【対談を終えて】

小原:対談を通じて感じた徳重社長は、表面的にはスマートで論理的な方に見えますが、実は非常に熱い想いを持った方で、真のベンチャー企業の社長と言えるでしょう。今後ドローン事業も含め、事業を大きく展開してゆく際に、これまでの実績から、資金や研究開発には苦労することは無いと思いますが、社長と想いを同じくする、いわゆる同志的な人材を「会社の仕組み」の中でいかにどれだけ多く創っていけるかが課題となるのではないでしょうか。
徳重:小原様との対談の中で、いろんな業種の様々な企業を見てきたが、成長する企業の共通項は人、いかに経営者に近いマインドを持った人物を増やせるかにかかるという言葉は非常に響きました。当社も既にその領域にきていましが、ひとりの起業家がいかに優れていてもできる範囲には限界があります。ビジョンを共有できる優秀人材にきてもらい、いかにやる気になってもらうかというシステムが大きくスケールする企業には重要になってくるでしょう。

※「THE INDEPENDENTS」2016年5月号 - p16-17より