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「「常に新しい技術を導入し、お客様に貢献できるものづくりを目指しています」」

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【藤田 靖 略歴】
1961年5月22日生。札幌開成高校出身。1984年立命館大学産業社会学部卒業後、クツワ株式会社(大阪)入社。1988年8月札幌にて個人創業。1991年2月法人設立、代表取締役就任。

【株式会社プリプレス・センター 概要】
設 立 :1991年2月25日
資本金 :85,500千円(株主:経営陣80%)
所在地 :北海道札幌市中央区南2条西10-5-3 PPCビル2F
事業内容:印刷物やWEBサイトの企画提案・制作・製造
従業員数:85名(グループ145名)



<起業家インタビュー>

株式会社プリプレス・センター 代表取締役 藤田 靖 氏

「常に新しい技術を導入し、お客様に貢献できるものづくりを目指しています」


M&A戦略と人材育成で技術と市場を開拓して市場縮小が進む印刷業界に連続増収を達成する。
フィリピン現地法人を設立しグローバル化に布石を打つ起業家。

立て続けに印刷会社2件をM&Aしましたが、今後もM&Aを基本戦略にされるのですか

パッケージ印刷の共立美線印刷㈱(大阪)と㈱東京紙芸社を2014年・2015年にM&Aしました。商業印刷は毎年3~5%減っていますがパッケージ印刷市場は伸びています。世界的に印刷業が衰退する中、いち早く成長力ある分野を開拓しないと生き残れません。一方で印刷業界では事業承継が大きな問題になっています。毎年売上が減少する中で、子供に借金させてまで事業を継がせていいのか、中小印刷業のオーナーは悩んでいます。

パッケージ印刷とはどんなものですか

医薬品・健康食品の商品箱などでコピー機では印刷できない箱モノです。全体売上20億円のうち2割がパッケージ印刷になりました。業界最大手は富山本社の朝日印刷(東2:3951)であり大切なお客様です。

全国から受注している年賀状の印刷も特徴です

年賀状の売上比率は3割で、ロフト・東急ハンズなど全国各地のステーショナリー店舗から受注しています。彼らはオリジナリティあるデザインの年賀状を探していましたが、1998年当時は私どものようにデザイン部門を自社に持つ印刷会社は珍しかった。文具業界出身の私はサブライセンス契約の経験があったので、キャラクターのライセンシーを提案して一気に取引先を拡大できました。年賀状業界のトップは郵便局を取引先に持つ総合商研(札幌本社、JQS:7850)ですが私どもは出資もいただき協力関係も築いています。

DTPの出現で印刷機械のダウンサイジングが一気に進みました

DTP(DeskTop Publishing)が出現した時は大量生産型から少量生産型の時代が来ると直感しました。設立3年後の従業員3人の時に思い切ってアップル社のマッキントッシュ機とイメージセッターを30百万円で購入しました。エンドユーザー開拓が目的でしたが、実際には同業者からの注文が殺到して望んでいなかった下請けの比率が9割になってしまいました。ただお蔭さまでたくさん儲かりましたが。

2014年にはフィリピン子会社設立しました

労働力の安さにつきますが、グローバル時代を迎え日本も英語がもっと必要になる事を考えればフィリピンが最適です。現地従業員20人で日本から派遣は4人で、デザインやHP作成を手掛けています。

人材教育に力を入れています

若くても技術力をつければ顧客が評価します。そして自信がつけば更に若い人は成長していく。教える事にコストは惜しみません。新卒採用は1997年から始めて翌年からは海外視察を始めました。海外旅行は役員の特権のようなところがありますが、当社では高価な印刷機械を購入する時は、実際に使う若い人が本場海外へ行って知識の吸収をします。

M&A先の従業員との交流も進んでいます

M&Aの目的は販売先拡大と技術の習得です。M&Aした職場は高齢化しており、私どもの若い社員を送り込むと、親代わりのようにさあ教えてやろう!という気になり活気も出てきます。これも経営交代の効果です。また、私にとっては、新しく出会ったクライアントが何を望んでいるのかを聞くために一緒に情報交換の目的で飲みに行く事も楽しみになっています。

M&A戦略実現のためにも株式上場は必須だと思います

2018年にアンビシャス上場を目標にしており、事業規模を拡大するよう指導を受けています。今までのM&A資金は幸いにも不動産含み益があったので借入金で充当できました。しかし今後は、エクイティ資金調達が必要であり、資本政策の見直しを検討しています。

印刷業界ではネット活用による低価格訴求型ベンチャー企業も出現しています

私どもの取引先数は8~900社へ増え、取引先トップでも売上比率は5%です。大量生産型は縮小していますが多品種少量型は伸びています。印刷業は最盛期の2万社が現在は8000社、市場は2兆円が1兆5000億円に減少していく中、デフレ型モデルでは対応できないと考えています。私どもは新製品開発と新規顧客確保を軸とした事業戦略を立て、フィリピン進出やM&Aなどの投資を実行してきたので毎年増収を達成できました。

北海道北見市出身ですが、関西の立命館大学に進学されました

東京は異文化という感じがないので関西に行きました。英語が好きで学生時代は外国人観光案内をボランティアでしていました。卒業後は大阪の文具メーカーに就職しましたが、北海道転勤を機に起業しました。専務はたまたま高校と大学も同級生で、喧嘩もしますが、彼は理系で私は文系で経営のバランスが取れていると思います。

未経験の印刷業界で起業したのはなぜですか

ものづくりをしたかったからです。少ない投資でものづくりができるのが印刷業界でした。当初は営業中心で印刷は外注でしたが、自社で機械設備を持たないと社内にノウハウが貯まりません。他社と比べると印刷設備を1/4に減らす一方で、24時間稼働できる体制を構築しています。目指す姿は企画デザインから印刷まで手掛けるワンストップ型印刷会社です。

本日はありがとうございました。最後に将来ビジョンを教えてください

自社制作のオリジナルキャラクターがありますが、これを活用して農産物輸出する際のパッケージを手掛けたいと考えています。10年後に印刷業界は半分規模に縮小していく中、常に先手を打っていかないと生き残れません。印刷工場を新たに始める人はとっくに居なくなりましたが、日本のモノづくりの精神を継承しながらアジア市場へ展開していきたいと思っています。

※「THE INDEPENDENTS」2016年4月号 - p4-5より