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「「ベンチャー経営者と会計」」

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公認会計士・監査審査会
会長 千代田 邦夫 氏
1944年1月埼玉県生まれ。1966年3月早稲田大学第一商学部卒業。1968年3月早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了。鹿児島大学、立命館大学、熊本学園大学、早稲田大学大学院研究科教授。2013年4月公認会計士・監査審査会会長。

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ベンチャー経営者を前にして講演するのは初めてなので、どういうテーマが良いかを考えましたが、本日は会計のフレームワークについて説明します。上場する際の参考にしていただければと思います。

■会社の「実態」、「真実な姿」とは?

 財務ディスクロージャー(disclosure)とは、closeの反対語、財務公開という意味です。簿記は日々の取引を記録しながら会社の実態を示す500年前から続いている計算手段です。財務諸表の作成基準である会計基準は現在は世界統一が図られていて、国内上場企業3500社のうち国際会計基準を採用企業は200社、その時価総額は20%を占めます。財務諸表は、経営者と同時に、企業を取り巻く利害関係者にとっても、意思決定の重要な手段になります。上場企業となると、株主・債権者・取引先・従業員・消費者など利害関係者が増えていくので、その信頼性を第三者が担保する必要があります。それが公認会計士、監査法人の役割です。
 公認会計士・監査審査会は、監査法人の監査が適切であったかを我々30人のチームが調査して判断します。東芝は結果的に2000億を超える虚偽記載をしました。単純に言えば粉飾決算。それを監査したのが我が国最大手の新日本有限責任監査法人。最大手と言っても「売上高」1000億円で、あずさ、トーマツも同規模です。4番目はあらた監査法人です。この4大監査法人で上場企業のシェア73%という業界です。新日本有限責任監査法人には東芝だから大丈夫だろうという緩みと、監査法人としての精神的独立性に欠如がありました。我々は2年に1度、監査法人を検査するが、以前の指摘事項も守られていなかった。そこで修正力を働かせるため、新日本有限責任監査法人に対しては21億円という多額の課徴金を科しました。

■会計のフレームワークと税金

 損益計算書と貸借対照表の2つの財務諸表は、発生主義という考え方によって作成されます。場合によっては財務諸表では黒字なのに現金がなくて倒産する事も起こりうる。そこで現金主義に基づくキャッシュフロー計算書を併せた3つの財務諸表で会社の実態を示すようになりました。一定時点の財政状態を示す貸借対照表、一定期間の経営成績を示す損益計算書、営業活動・投資活動・財務活動による一定期間の現金の動きを示すキャッシュフロー計算書を基本財務諸表と呼びます。
 次に税金の問題です。申告書別表4の課税所得額は、損益計算書の当期純利益を、税法の規定によって加算・減算することによって計算されます。課税所得を計算するのは税理士の仕事ですが、1年間の売上を計画した段階で税額がわかります。「税金を取られる」とよくいいますが、税金は利益を上げた後に払います。利益を上げないと経営は永続しません。税金対策は経営計画作成から始める必要があります。ベンチャー経営者には経営計画作成は簡単ではありません。しかし、作ったら達成に向けて努力することです。

■ 会社の財産は自ら守る

私のささやかな経験から言えることは、自分の財産は自分で守る以外に方法がないということです。会計が苦手でも財務諸表は自分自身で読めなくてはいけません。会計士や税理士に丸投げせず、疑問点をどんどん質問してください。

2016年1月22日インデペンデンツクラブ設立会員総会(新丸ビルコンファレンススクエア)にて