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「IPO大賞と改めてIPOについて」

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國學院大学
教授 秦 信行 氏

野村総合研究所にて17年間証券アナリスト、インベストメントバンキング業務等に従事。
1991年JAFCO に出向、審査部長、海外審査部長を歴任。
1994年國學院大学に移り、現在同大学教授。1999年から約2年間スタンフォード大学客員研究員。
日本ベンチャー学会理事であり、日本ベンチャーキャピタル協会設立にも中心的に尽力。
早稲田大学政経学部卒業。同大学院修士課程修了(経済学修士)


ベンチャーコミュニティを巡って


一般社団法人東京ニュービジネス協議会(NBC)主催の2015年度IPO大賞の表彰式が昨晩東京証券取引所のホールで行われた。今回で10年目を迎えた。

このコラムでもIPO大賞については数回取り上げているのでご存知の方も多いと思うが、賞には2つの部門が設けられている。

まず最初がルーキー部門、この部門では、ある年の10月以降9月までの1年間に新規株式公開(IPO)した会社の中で、事業の創造性や新規性、今後の成長ポテンシャルといった点からみて、優れている会社を1社選んでいる。

もう一つの部門がグロース部門。この部門では、4年前に新規株式公開した企業で、直近までの4年間に売上100億円以上、かつ4年前と比べて売上伸び率が2倍以上になった会社の中から、将来においても一段の成長が期待できる企業を1社選んでいる。

筆者は2部門の大賞を選ぶ審査委員会の委員長を仰せつかっている。

今年度の表彰式においては、まずルーキー部門の大賞として、2014年10月から2015年9月までの1年間にIPOした企業101社の中から情報キュレーションサービスを展開する2012年11月創業の若い企業、株式会社Gunosyを選んだ。

ご存知のように、日本でのIPO企業数は、2008年秋のリーマンショック後の2009年に年間19社まで大きく落ち込んだ後徐々に回復し、昨年2015年は92社まで増えていたこともあり、Gunosyを選ぶまでには正直大分時間がかかり苦労した。

選んだポイントは、情報キュレーションサービスという新規性のあるビジネスを展開していること、創業から3年と若い企業であり、加えてCEOの福島氏も28歳と若いことなどである。若いことは当然経験の浅さに繋がり、リスクにも繋がることではあるのだが、可能性も大きいと判断した。

グロース部門は、4年前のIPO企業数が少なかったこともあって、対象会社が27社と少なく、かつ前述した売上100億円を達成しSNSゲームで伸びたKLab株式会社を選んだ。実はKLabは4年前のルーキー部門の大賞受賞会社であった。

KLabの社長である真田氏はGunosyの福島氏と違って、過去に大きな失敗も経験された方で、経験豊富な企業家といえる。KLabの現状は、成長の最大要因であったゲーム・ビジネスが踊り場にある状況で、これからの展開がむつかしくなっているように思われるが、次の新規事業開発に期待したい。

日本におけるIPO社数は、ご存知のように2006年の年間188社を直近のピークに、リーマンショック等の影響もあり、2009年には年間19社まで落ち込んだ。その後徐々に回復し、昨2015年は、前年の77社からさらに増えて92社になった。今年も上場を考えている会社はかなりあり、100社台に乗るとも聞いている。ただ一方で上場審査が厳しくなっているとも聞く。投資家に迷惑をあたえるような会社の上場は勿論困るが、反面上場審査を厳しくすることで成長発展の芽が摘まれてしまうことがないように願いたい。


※「THE INDEPENDENTS」2016年4号 - p21より