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「リスティング広告」

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弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士 幸谷 泰造 氏

2003年東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻修士課程修了後、ソニー(株)にて、ソフトウェア開発業務に従事。その後企業内弁理士として、国内外の特許権利化や特許侵害に関する業務等に従事した後、現職。

【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】
所在地:東京都港区虎ノ門2-10-1 虎ノ門ツインビルディング東館16階
TEL:03-5561-8550(代表)
構成人員:弁護士23名・スタッフ10名
取扱法律分野:知財・技術を中心とする法律事務(契約・訴訟)/破産申立、企業再生などの企業法務/瑕疵担保責任、製造物責任、会社法、労務など、製造業に生起する一般法律業務
http://www.uslf.jp/


1.今回のテーマ

 今回は、近年インターネット広告の中で普及してきているリスティング広告にまつわる問題を取り上げたいと思います。

2.自社の商標が使われている!?

 GoogleやYahooの検索エンジンで自社名や自社ブランド名を検索すると、なぜか他社のホームページや他社の商品の紹介ページが上位に表示されてしまうので、やめさせることはできないでしょうか?
このようなご相談が最近増えています。自社ブランドの検索であるのに他社の表示が上位に表示されてしまう理由の一つとして、他社が勝手に自社のブランド名をキーワードとして登録している可能性が考えられますが、この問題に対する商標権での対処は、難しい問題を抱えています。

3.商標としての使用

 第8回の記事で、商標とは、商品やサービスと結びついていなければならず、単に商標をブログなどの記事に記載するだけでは、商品やサービスに対して使用しているわけではないので、商標権侵害にはならないことをお伝えしました。商標権は、言葉に対する絶対的な支配権ではないのです。
よって、自社名等が勝手にキーワードとして登録されただけでは、商品やサービスに対して使用していないので、商標として使用していない可能性が高いのです。

4.対応策

 商標権の権利行使が難しいとなると、他の対応策としてはどのようなものが考えられるでしょうか。第一に、検索エンジンを運営する会社へ差止申立を行う方法があります。会社によって対応はまちまちですが、申立の窓口は設けられていますので、まずは申し立ててみると良いと思います。ただし、商標権を取得していないと、申し立てても門前払いをされる可能性が高いため、リスティング広告対策として商標権を取得しておくことは依然として有効です。
 第二に、リスティング広告に自社ブランド名をキーワード登録していると思われる相手方へ直接差止を求める方法があります。その場合は法的根拠に基づかなければなりませんが、上記の説明にあるとおり、商標権に基づいた主張は簡単ではありません。相手方が自社ブランド名との比較をして有利であるような広告を提供しているような場合には、不正競争防止法などを根拠として差止を求めることができる可能性がありますが、いずれにせよ簡単なことではありません。対応策は事案によって異なってきますので、くわしくは専門家にご相談ください。

5.まとめ

 以上みてきたように、リスティング広告については、未だ過去の事例の蓄積がなく、確立した対応策がないというのが現状です。商標権の隙間をつく新たなタイプの問題といえます。しかしながら、商標権を取得しておけば、検索エンジンを運営する会社への申立ての足掛かりとなりますし、相手方へのプレッシャーにもなります。そういった意味でも、商標権を取得しておくことはなお有効でしょう。

※「THE INDEPENDENTS」2016年3月号 - p15より

【知財を活用した中小企業のブランド戦略第11回】権利活用(4)
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【知財を活用した中小企業のブランド戦略第13回】商標権の経済価値