アイキャッチ

「「世界にはばたくグローバルベンチャー」」

公開



【松田 修一 略歴】
1943年山口県大島郡大島町(現周防大島町)生まれ。1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。1973年監査法人サンワ事務所(現監査法人トーマツ)入所、パートナー。1986年より早稲田大学に着任し、ビジネススクール教授などを歴任。日本ベンチャー学会会長、早大アントレプレヌール研究会代表世話人も務める。2015年11月特定非営利活動法人インデペンデンツクラブ設立、会長理事就任。

【バックナンバー】

2008年12月~*最新号もこちら

【イベント一覧】

全国年45回の事業計画発表会他

【入会案内】

月刊誌購読、イベント参加etc.

【マイページ登録】

メルマガ購読、電子書籍閲覧etc.


■ 人的パワーの変革を求めて

2016年はそれぞれが自立し、何を以って社会に貢献していくのかについて見直すことが求められる年になるのではないだろうか。「日本経済再生の原動力:深尾京司・権赫旭(2010年)」によれば、設立が若い会社ほど雇用創出し、設立が古い会社の多くは雇用削減しているという調査データがある。やはりベンチャー企業を次々に生み出すスキームを構築しなければ、日本経済は立ちいかなくなってしまう。収益モデルや付加価値を倍増させるような仕組み、あるいは人材育成に、まさに今から取り組む必要がある。

■ イノベーション推進の国の政策

民主党政権下でことごとく仕分けされてしまった人材育成事業は、安倍内閣により長期戦略の下でじっくり取り組む素地ができてきている。経済産業省がおこなう「新事業創出のための目利き・支援人材育成等事業」や、文科省が取り組む「グローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム)」もその一環だ。NEDOの「シード期の研究開発型ベンチャー支援(STS)」では、認定VCの半数が海外の支援機関であり、日本で花開いた技術を海外市場で展開するということにも力を入れている。「技術で勝って、ビジネスで負ける」という失敗を繰り返さないよう、大学発技術や研究者とビジネス人材を掛け合わせ、育てていくことが必要だ。

■ 日本のベンチャー顕彰の役割

2015年1月におこなわれた「第一回日本ベンチャー大賞」では、安倍首相が自ら登壇し、ユーグレナ出雲社長に内閣総理大臣賞を授与した。国家戦略の中枢に、ベンチャーを位置づけていることを強く象徴する出来事だった。ユーグレナ社は、「Japan Venture Awards 2012」での受賞を契機に大企業との提携を次々と実現している。顕彰制度は世の中に事業をPRすることはもちろん、会社が今どのポジションに位置するのかを知る機会にもなる。ぜひ活用してもらいたい。

■ 世界にはばたくグローバルベンチャー

①CYBERDYNE株式会社:先進国が直面する高齢化社会の課題解決を図るロボットスーツ「HAL」の開発をおこなう筑波大学発ベンチャー。欧州全域で医療機器としての認証を取得するなど、海外展開も事業の柱としている。
②オスカーテクノロジー株式会社:早稲田大学笠原・木村研が約150億円の研究費を投じて20年以上の歳月をかけ開発したソフトウェアの並列化技術(早稲田大学保有の特許36件・著作権)をベースに創業。世界唯一の技術でグローバル展開を図る。
③株式会社アクセルスペース:超小型衛星等を活用したソリューション提供をおこなう。ライバルは海外企業だが、2015年9月に約19億円の大規模ファイナンスを実行。「AxelGlobe計画」として、地球観測画像データ事業への参入も表明した。2015年インデペンデンツクラブ大賞グランプリ。
④AOSリーガルテック株式会社:データ復旧技術を用いて、不祥事や訴訟の際のフォレンジックサービスを提供。ボトルネックであった費用面に対し、データ復旧保険を商品化。ニッポン新事業創出大賞・経済産業大臣賞(2015年)

ベンチャー企業は結果から見れば大成功物語だが、それはごく一部でしかない。小さな失敗を試行錯誤するしか、前へ進むことはできない。しかしながら、物事が成功したときに仲間とそれを喜びあえることこそが成長のドライバーなのだと思う。起業家とそれを支えるサポーターのインフラであるインデペンデンツクラブでも、皆で知恵を出し合い、感動を共有して、この超高齢化社会を乗り越えていけることを願っている。


*2016年1月15日名古屋インデペンデンツクラブ@名古屋証券取引所にて