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「「日本農業の海外展開と知財戦略」(株)鈴生」

公開

<聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 鮫島 正洋さん
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。

<話し手>
株式会社鈴生
代表取締役 鈴木 貴博さん
1976年4月13日生まれ。東海大学第一高校卒業。九州東海大学工学部卒業。山梨県の農業法人で1年間の研修を受け、父の経営する鈴木農園に2008年入社。自社生産だけではなく協力農家、独立の生産者を育て作物を購入することができる会社を目指して農業を始める。簡単には良いものができず苦戦の日々。恩師から、「作物は育てているのではなく、成長の手助けをするもの」との言葉をもらい経営が大きく前進する。

鮫島正洋の知財インタビュー

日本農業の海外展開と知財戦略(株式会社鈴生)


「レタス日本一」を目指す(株)鈴生の鈴木社長に、日本農業の海外展開と知財戦略について伺いました。

鮫島:日本ブランドの海外浸透を日本政府は強力に進めています。ジャパニーズフードも海外から高く評価されていますが、まさにその中核となる日本の農業技術そのものの海外展開が期待されています。
鈴木:私たちはレタスなど野菜を中心とする農業生産法人です。グループにはモスフードサービスとの合弁会社もあり、高品質かつ安心・安全な野菜生産を追求しています。昨年はスリランカ、モンゴル、ベトナムへ関係者と視察に行き、農業技術の海外活用を検討しています。海外では野菜を生で食べる習慣はなく、野菜生産から野菜加工まで総合的な展開力が求めれます。

鮫島:自動車業界と同じように農業分野はノウハウの占める割合が大きく、海外展開してもコピーされるリスクは少ない。一方で特許化も難しい分野です。最近感じるのは特許の無力化です。東南アジアでビジネスを考える場合、全ての国に特許出願することに現実性はありません。
鈴木:鈴生グループでは農業生産データを蓄積分析して生産性向上を図るだけでなく、農業後継者の育成にそのノウハウを活かしています。

鮫島:日本の家電業界はコスト優先で技術を全てパッケージ化してしまったので労働コストの低い国に負けた。その轍を踏まないように、ノウハウの一部をきちんと管理しつつ、アジアの多くの生産者が利用するプラットフォームを構築するライセンスビジネスも展開可能です。
鈴木:私たちが目指すのは健康になる野菜開発などプラスの農業です。低コスト化などマイナス面解消からは脱却したい。例えば私たちの作るレタスや枝豆は他と比較して抗酸化力が1.2倍から1.5倍高いという分析結果が出ています。そのような、体に良い野菜を作ることができるのが弊社の一番の強みです。

鮫島:遺伝子工学の急速な発展で農産物の産地特定、品種分析や評価、新たな品種開発も行われています。今後は美味しさや安全性だけでなく、これをブランド化していくことが重要です。これによって、認知度と売値が上がり、利益率が高くなります。ドール、サンキストなど海外では数多くの農産物ブランドの成功例があります。
鈴木:キウイでは、ニュージーランドのZespri(ゼスプリ)社がブランディングに成功しています。農家に生産技術を指導して健康効果の高いキウイを開発して他よりも高い価格設定をしています。

鮫島:農業生産技術から農産物開発までをライセンスする日本企業はまだありません。鈴木社長には農業分野でのプラットフォーム知財とブランドを確立して、日本の農業技術の高さを海外でアピールしていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

<株式会社鈴生 概要>
設 立 :2008年12月 資本金:3,000千円(株主 経営陣)
所在地 :静岡県静岡市葵区下1108-8
事業内容:農作物の生産加工販売・資材種苗等販売
年 商 :7億円(2015年度・グループ計)
関係会社:株式会社モスファームすずなり

機関誌「THE INDEPEDENTS」2016年2月号 P18より

株式会社鈴生

住所
静岡県静岡市葵区下1108-8
代表者
代表取締役 鈴木貴博
設立
2008年12月2日
資本金
従業員数
事業内容
野菜及び果実の生産、農作物の販売及び加工品製造販売
URL
http://oretachinohatake.com/