アイキャッチ

「経営革新計画の制度」

公開


株式会社グランツカンパニー
代表取締役
澤井 泰良 氏
1992年3月明治大学政治経済学部卒業後、エヌイーディー㈱(現安田企業投資㈱)入社。ベンチャーキャピタル業務として、未上場企業の投資、審査、事業支援、売却等を行う。リーマンショック以降、ベンチャー企業の資金調達が困難になる中、ベンチャー企業の助成金での研究開発資金確保をサポートする目的で、2012年9月㈱グランツカンパニーを設立。代表取締役に就任。インデペンデンツクラブ正会員。

中小企業支援は国の重要な政策の一つとなっているが、行政機関の窓口に行かないと情報が少ないこともあって、支援を受ける中小企業には伝わりづらいところがある。そこでここでは中小企業支援制度について解説する。

中小企業は、成長発展するため、新製品や新技術の開発、新サービスの提供、海外への進出、開発した商品の販促等様々なチャレンジを行っている。これらのチャレンジに対し、行政の側では、低利での融資や信用保証枠の拡大、補助金の交付等様々なサポートを実施している。中小企業は、これら支援を利用しようとする訳だが、支援の条件として経営革新計画の承認が必要な場合がある。ここで経営革新計画とは何だろうという疑問が出てくる。

経営革新計画とは、中小企業が、新たな事業活動を実施しつつ、実現可能な数値目標を設定した3~5年の中期計画のことである。中期計画には、現状認識、経営課題、課題解決のための新しい取り組み、そのスケジュール、実施後の損益計画を記載する。それではなぜ行政の支援を受けるにはこの経営革新計画の承認が必要なのかということであるが、これに関連して以下の法律がある。

中小企業新事業活動法の目的には、中小企業がイノベーションを起こし成長発展することは経済にプラスだから、それを行政は支援すると記載されている。この法律の実施策として、新たな事業活動にチャレンジしている企業を経営革新計画の承認という形で認定し(これを法認定と言う)、その認定企業を融資や補助金等の面で支援しているのである。 ここでいう新たな事業活動には4類型があり、①新商品の開発又は生産 ②新役務の開発又は提供 ③商品の新たな生産又は販売の方式の導入 ④役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動 となっている。どの類型にも新しいという言葉が入っているが、これは各企業にとって新しいということではなく、その企業が属す業界にとって新しいということが重要である。

経営革新計画は、平成23年度以降、毎期全国で3千数百社が承認されている。都道府県別では、東京都、福岡県、静岡県が特に多く、地域の中小企業とそれを支援する行政がうまくコミュニケーションできているようである。


■ 中小企業新事業活動促進法


目的(第一条)

この法律は、中小企業の創意ある成長発展が経済の活性化に果たす役割の重要性にかんがみ、創業及び新たに設立された企業の事業活動の支援並びに中小企業の経営革新及び異分野の中小企業の連携による新事業分野開拓の支援を行うとともに、地域におけるこれらの活動に資する事業環境を整備すること等により、中小企業の新たな事業活動の促進を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。


※「THE INDEPENDENTS」2016年1月号 - p18より