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「株式上場と成長戦略」

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<中村 崇則 略歴>
1973年1月27日生。山口県立大津高校出身
1996年3月神戸大学経営学部卒業後、NTT西日本入社。
1997年合資会社DNSを共同創業し、メーリングリスト事業を始める。
2000年1月株式会社インフォキャストを共同設立、同年10月同社を株式会社楽天に売却。
2000年11月株式会社アイティーブースト(現・株式会社ラクス)設立、代表取締役就任。

<株式会社ラクス 概要>
設 立 :2000年11月1日
東京本社:東京都渋谷区千駄ヶ谷5-33-8 サウスゲート新宿ビル3F
大阪本店:大阪府大阪市北区梅田3-4-5 毎日インテシオ5F
事業内容:中小企業向けクラウドサービス
従業員数:356名(2015年4月1日現在)
上場日 :2015年12月9日(東証マザーズ:3923)
業 績 :売上高 3,413百万円・経常利益 447百万円(2015年3月期)

<特別インタビュー>

株式会社ラクス 代表取締役 中村 崇則 氏

株式上場と成長戦略


國本:東証マザーズ上場おめでとうございます。2015年12月9日の上場初日には株価がつかず翌日の初値は3,550円と公開価格1,080円と3.28倍にもなりました。
中村:高く評価いただき大変感謝しております。私どもは2000年11月の設立時から公開企業としての成長を目指しており、これでようやくスタート台に立てたと思っています。不安定な株式市場ですが、当面の目標は高値3,620円を超えるような業績を達成する事です。

國本:神戸大学とNTT時代の同期であった谷井等さん(現・シナジーマーケティング代表取締役)、福井直樹さん(現・ミクル代表取締役)の3人で合資会社デジタルネットワークスを設立したのが1997年9月でした。
中村:当時はまだ珍しかった電子メールサービスに可能性を感じて起業しました。その直後の1999年にマザーズ市場が開設され、日本でもインターネット業界が急速に発展しました。
國本:そのタイミングで2000年1月に株式会社化(インフォキャスト設立)して、ベンチャーキャピタルから資金調達をして国内NO1のメーリングリスト会社になりました。しかしそれからわずか9か月後に米国ヤフーがライバル企業として参入すると、即断即決で事業売却したのには驚きました。
中村:資本力のある外資と正面から戦う準備はできていませんでした。幸いな事に提携先の楽天に高く事業評価いただき、売却資金で2000年12月にITブースト(現ラクス)を設立し、ITエンジニアを養成するスクール事業を始めました。同時期に開発に取り組んだ「メールディーラー」が現在のクラウド事業に主力サービスになっています。

國本:メールを一元管理するグループウェア「メールディーラー」は圧倒的市場NO1サービスです。他社に先駆けいち早く市場投入したのが成功要因だと思いますが、競合状況はどうですか。
中村:この市場規模15億円のうち10億円が当社シェアです。残りの5億円の市場には数社の競合先がいますが、私たちはその5億円を超える金額を毎年開発マーケティング費(固定費)として投資しています。常に競合先を上回る投資を継続する事で受注率と継続率の向上を実現します。

國本:2009年にサービス開始した「楽楽精算」も圧倒的NO1です。
中村:交通費精算業務を効率化するクラウドサービスですが、従業員1000人以下の企業をターゲットにしています。クラウドサービスは売上が伸びると利益率が高まりやすいストック型ビジネスモデルです。導入済企業はまだ1000社ですが大きな成長力があると考えています。

國本:創業時のITスクールのノウハウを活用したIT人材派遣事業も展開されています。
中村:未経験者を採用してエンジニアに育てる仕組みは当社の強みになります。正社員に特化、JAVAに特化してWebサービス事業者に絞って派遣しています。

國本:豊富な自社技術者によってサービス開発ができる点も強みだと思います。ただ人材確保はどのように行っていくのでしょうか。
中村:現在420名ですが、今後は毎年100名採用していきます。既にベトナムにも進出しています。株式上場も資金調達より人材採用面での効果に期待しています。

國本:数年前から株式上場の準備をしていたそうですが、このタイミングを選んだ理由を教えてください。
中村:実は7年前に上場直前まで行きましたが、それを延期しました。目先の利益目標に追われるのではなく、じっくりと新規事業を育て上げてから上場後に業績をストレッチさせるためです。結果的には、BtoC事業に2億円、海外事業に5億円の投資損失を出しましたが、この失敗の経験によって勝ち方を学びました。勝つためには、勝てる市場を選び圧倒的な戦力を投入する事です。

國本:今回はクラウド事業が安定収益源となり、余力を持った株式上場であるわけですね。今後の成長戦略についてはどのようにお考えですか。
中村:コツコツと真面目に積み上げていくだけです。ただクラウドサービスをラインアップするM&A戦略は考えています。

國本:最後にこれから上場を目指す起業家にアドバイスをください。
中村:株式上場を焦らない事です。ロードショー期間中の1週間は会社に帰れません。まずは企業としての体力をつける事が先決です。
國本:本日はありがとうございました。ますますの発展を期待しています。




※「THE INDEPENDENTS」2016年1月号 - p4-5より