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「人の「気づき」や「出会い」のために」

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株式会社ソケッツ[マザーズ:3634]
代表取締役社長 浦部 浩司さん

1968年5月生まれ。1992年日本合同ファイナンス(現・ジャフコ)入社。99年ビジュアルコミュニケーション入社 執行役員。2000年当社設立、代表取締役社長就任。09年4月東証マザーズ上場[3634]

住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷1-1-12 TEL:03-5785-5518
設立:2000年6月23日  資本金:386,457,000円 従業員数:105名(2011年3月末)
事業内容:インターネットを活用したサービス、アプリケーション、データベースの開発提供
http://www.sockets.co.jp/

2000年6月に起業、2009年マザーズ上場して2年が経ちました。自分の経験が起業を志す人やベンチャー支援者の方々にとって、一つでも役立つことがあればと思い、今日は話をさせて頂きます。

―会社の概要について
当社は、社名「SOCKTS」の通り、人の“気づき”や“興味”をつなげる会社です。そのために音楽・映画・書籍などをデータベース化し、商品やサービスのレコメンド(推薦)機能などを付加して企業や個人に情報を提供するサービスを行っています。当社は3つの事業を持ち、その提供するサービスのユーザー数は642万人となります。

1.メディア検索・レコメンドサービス
KDDI、DOCOMO、楽天、TSUTAYAなどの企業との協業サービス・開発、データベースライセンス提供をしています。
2.ストリーミングサービス
全国FMネット放送LISMO WAVE(運営KDDI)との協業サービスの他、世界のネットラジオ検索などの自社サイトも運営しています。
3.コンテンツサービス
メールサービス「デコガール」、クチコミグルメサービスなどのコンテンツのユーザー課金事業です。

―メディアサービスデータベース(MSDB)の特徴
当社は音楽や映像、書籍などが持つ特徴情報を最小単位で整理することを前提にコンテンツに付帯する詳細情報(メタ情報)を紐付したデータベース(DB)を構築してきました。例えば「失恋」がテーマであれば、それに関連した音楽・映画・書籍などの情報を提供します。ECサイトでは、DBを活用し、横断的なメディア・情報連携を実現し、多様なサービスをつなぎ込む仕組みです。ユーザーDBとコンテンツDBを連携する事で、物語性を持ったショッピングサービスができます。データベースの細かさが重要で、上場の目的はここを強化するためでもありました。

―起業からここまで
起業コンセプトは「人の気づきをつなげたい」です。原点は中学3年生の夏休みに見た「LIVE AID」。アフリカの腹ペコの子供たちを救うために何百万もの人が集まる事に感動しました。起業当時は着メロバブルで初年度から売上は1億円でしたが、そこで勘違いをしてしまいました。アメリカ、中国展開と身の丈以上に事業を広げ、ユーザーとの向き合いを疎かにした結果、ある日、サイトにもの凄い障害が起きて一気に会員が減少しました。それから原点回帰で、人の気持ちをつなげるためのデータベース開発やサービス開発に注力しました。その時の開発拠点はここKRP(京都リサーチパーク)にもありました。

―ターニングポイント
起業6年目に当社最大の経営危機を迎えました。ミュージックプレイヤーの開発を手掛けましたが、いつまでもバグが無くならず倒産を覚悟しました。準備が足りなかったのかも知れません。しかし結果的には多くの人に支えられ乗り越え、この時に売上は倍になりました。企業には社運をかけて勝負をする瞬間があるように思います。

―これからの事業の方向性
「セレンディピティ」、つまりまだ見ぬ新しい気持ちのつながり方の創造です。PUSH型のTV、PULL型であるインターネット検索やソーシャルメディアとは違う、偶然の幸せな出会いや再会を実現する新しいメディアサービスを展開していきます。現在は、中長期の大きな成長に向けた「種まき」ステージです。今後はサービスの幅もサービス対象機器の幅も広げていきます。

―真摯 integrity
当社の社訓は「あきらめないで、逃げないで、ごまかさないで、真摯に向き合い続ける」です。それが厳しい場面で生死を決める事になります。ドラッカーも言っていますが、リーダシップやイノベーションにも真摯な姿勢が絶対に必要です。突き詰める、こだわりぬく、これを私心なくできるかどうかではないでしょうか。イノベーションには苦楽を共にする仲間、ソウルメイトの存在が大切です。イノベーションは一人きりで興せません。

―2011年3月11日
日本はこのままではいけない、と強く思いました。ちょうど今は幕末の時のような運命、宿命の時代であると感じます。われわれ現役世代が必死に頑張り、乗り越えて突き抜けて新しい日本を創り上げていかないと大変な事になります。私たちは創業時代に戻って、もうひと勝負しようと、KRPに再入居する事にしました。東京はノイズが多いですが、京都には腰を据えて開発ができる環境があります。100年単位の時間軸で動くこの地で、100年後に向けて気持ちをつなぎ続けていきます。

【連載】ベンチャー企業のためのIT法務入門(内田・鮫島法律事務所 弁護士 伊藤 雅浩)

※全文は「THE INDEPENDENTS」2012年1月号 - p41にてご覧いただけます