アイキャッチ

「中国進出企業の業種に変化が・・・ 卸・小売業の進出ポイント」

公開


ヴェリタスアカウンティングファーム
代表 林 高史 氏

1990年名古屋大学経済学部卒業後、あずさ監査法人、ジャフコ(ジャフココンサルティング)を経て、2005年林公認会計士事務所開設。同年北京大学へ留学。08年大連市に事務所開設、ヴェリタスアカウンティングファームに統合。

【ヴェリタスアカウンティングファーム】 http://veritas-af.com/

皆様こんにちは、林です。大連はもう真冬の寒さです。男性はダウンコート、女性は毛皮コート姿が目立ってきました。男性のダウンコートは中国語で「羽*服(*刺繍用の細糸という意味を持つ語)」といい、日本で売られているものよりも毛の密度が濃く重いコートです。私も愛用していますがなるほど厳寒地の必需品、本当に暖かくて助かります。これから3月末まで大連市民は強い海風と零下20度にもなる低温との戦いを強いられます。人間も実に強い生き物ですね。

さて、これまで数々の日系企業の中国進出をお手伝いしてまいりましたが、最近の案件は、5年前にこの仕事を始めた頃とは少し趣が異なります。これまでは、安い人件費、固定費を求めていわゆるメーカー企業が中国に進出して、来料加工等でそのコストメリットを享受する仕組みが多かったのですが、最近では、自社の製品、サービスを中国で売りたい卸・小売業の相談が増えてまいりました。やはり、1億人を相手にするのと15億人を相手にするのとではマーケットの規模が比較になりませんし、高度成長を続ける中、ここ5年間で給与収入が約2倍になった中国の若手購買層を取り込むことで日本国内での伸び悩みを解消したいという意図も働いているのではないかと思います。

中国のマーケットに日本企業が参入する際のポイントは以下の通りです。

1.中国の消費志向を十分理解する
2.地方都市から始める
3.日本製だから、高くても中国の富裕層に
  売れるという考え方は間違い
4.日本ならではのサービスを売りにする、
  中国人が欲しい日本のサービスは何か?
5.現地中国人を上手に活用する

まず、中国人は富裕層でも日常生活は非常に質素です。よって、日用品、雑貨、日頃口にする食料品は、安全性への関心を除き安いもので十分であるという考え方です。さらに、上記のアイテムのうち、日本にあって中国にないものはほとんどありません。つまり十分な差別化がなければ「日本製だから・・」ということだけでは勝負できないのです。

また、「中国といえば北京、上海でしょう」という感覚だけで、いきなり巨大都市で会社を設立して商売を始めようとする中小企業のオーナーが多いのですが、今や上海あたりの会社維持コストは東京を超えているとも言われ、勝算有り無しを試行している段階での進出は危険です。地方都市級の都市(人口数百万人程度)で、まずはマーケティングをしっかり行って中国マーケットの癖をしっかりと理解することをお勧めします。

さらに、中国でのビジネス慣習を日本サイドで全て把握、理解することは困難です。従って中国でビジネスをするにあたって信頼できる中国人(または中国法人)パートナーの存在は欠かせないポイントでしょう。

なかなか最初から順風満帆とはいかないのが海外進出ですが、中国は「中国共産党の国」です。何事も慎重にバランスよく進めることが肝要でしょう。

※「THE INDEPENDENTS」2012年1月号 - p23より