「「大手メーカーに対する特許ビジネス戦略」マイクロ波化学㈱」
公開
<聞き手(左)>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
弁護士 溝田 宗司さん
2002年同志社大学工学部電子工学科卒業後、株式会社日立製作所に入社。特許業務等に従事。2003年弁理士試験合格(2003年12月登録)。2005年特許コンサルタントとして活動。2009年09月司法試験合格(2010年12月弁護士登録)。2011年1月内田・鮫島法律事務所入所。
<話し手(右)>
マイクロ波化学株式会社
代表取締役 吉野 巌さん
<マイクロ波化学株式会社 概要>
設 立:2007年8月15日
資本金:29億1828万円(資本準備金を含む)
所在地:大阪府吹田市山田丘2-8 大阪大学テクノアライアンス棟3階
事業内容:マイクロ波化学プロセスの研究開発、および エンジニアリング、共同・ラインセンス事業
鮫島正洋の知財インタビュー
大手メーカーに対する特許ビジネス戦略(マイクロ波化学㈱)
大手化学メーカーとビジネスを展開するマイクロ波化学㈱吉野社長に、同社の特許戦略を一緒に取り組んできた内田・鮫島法律事務所溝田弁護士にお話を伺いました。
―溝田弁護士がマイクロ波化学の特許戦略について相談を受けたのはいつごろですか
溝田:内田・鮫島法律事務所に入所直後の2011年でした。当時は社員数名でしたがそれから大きく成長する過程を見てきました。 吉野:当時はマイクロ波化学基盤技術の開発が進む中で、どのような事業モデルを取るべきか試行錯誤していました。そのような中で、特許戦略について相談をしていました。―化学産業は大規模設備が必要でありベンチャー企業が参入するにはハードルの高い業界です
吉野:最終的に、当社としてはメーカーになるのではなく、メーカーに技術を供与することを目指すわけですが、そのような事業モデルに於いて大企業と対等に付き合うためには強い特許が重要です。溝田:特許の権利化だけを目的にすると弱い(狭い)特許になります。
吉野:そこで溝田さんと一緒にどのようにすれば強い特許になるか徹底的に練りました。また、内田鮫島事務所から紹介をされた大阪にある特許事務所とはどうすれば成立しやすい特許になるのかという側面から支援をしてもらいました。その結果、強力なマイクロ波リアクターに関する基本かつ必須の強い特許を取得することができ、これが今の私たちの事業を支えています。
―化学プロセスを特許化するというのは珍しいのでは
溝田:化学プロセスの場合、特許化するとノウハウの開示になるので特許化せず、ノウハウとして秘匿するのが一般的です。しかし、マイクロ波化学さんはそうではなかった。吉野:当社の場合、テクノロジープロバイダーとして技術をメーカーに提供することを決断したので、そのモデルにあった特許の取得が重要です。特許を核にお客様へライセンスを供与したり、一緒に合弁事業を展開するのが私たちの事業コンセプトです。
―海外も含めて特許費用も随分とかかったと思いますが十分採算は取れたわけですね
溝田:特許とビジネスが融合している例では、私が見てきた中で一番の事例だと思います。吉野:事業提携や投資を受ける度に海外メーカーを含めていろいろな人に精査されて、当社の特許戦略もずいぶん鍛えられてきました。大手化学メーカーから知財のプロも入社しました。これからも強い特許を取得していきます。
機関誌「THE INDEPEDENTS」2016年1月号 P16より