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「権利活用(4)」

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弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士 幸谷 泰造 氏

2003年東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻修士課程修了後、ソニー(株)にて、ソフトウェア開発業務に従事。その後企業内弁理士として、国内外の特許権利化や特許侵害に関する業務等に従事した後、現職。

【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】
所在地:東京都港区西新橋1-20-3 虎ノ門法曹ビル701
TEL:03-5511-6211(代表)
構成人員:弁護士19名・スタッフ10名
取扱法律分野:知財・技術を中心とする法律事務(契約・訴訟)/破産申立、企業再生などの企業法務/瑕疵担保責任、製造物責任、会社法、労務など、製造業に生起する一般法律業務
http://www.uslf.jp/

1.今回のテーマ

 自社の商品がある程度有名になってくると、模倣品が市場に出回る場合があります。自社ブランド価値の維持のためには、模倣品への対策も検討しなければなりません。模倣品対策については、まず、自社の商標を勝手に使用している物である場合か、自社の商標は使用していないものの形態が酷似している物である場合かで対応が変わってきます。自社の商標を使用していない模倣品や模倣サービスへの対応策については、次回以降に改めてお伝えする機会を設けたいと思います。今回は、自社のブランド名が勝手に使用されている模倣品に対する対応策をまとめました。

2.ショッピングモールでの模倣品対策

 楽天やアマゾン等のインターネットショッピングモールでの模倣品被害が最近増加しています。手軽に行うことができ、売上も見込めるため、インターネットでの販売における模倣品被害が後を絶ちません。
 模倣品販売業者に対して販売を停止するよう求めることができますが、模倣品販売業者には法令遵守意識の低い者も多く、警告を無視される場合も多いです。その場合は、模倣品販売業者に対してではなく、楽天やアマゾンといったサイト運営者に対して模倣品販売を停止するよう求めることができます。商標権や意匠権といった知的財産権を保有していない場合は販売停止措置を取ってくれないことも多いのですが、商標権を取得している場合で、明らかに商標権侵害に該当するような商品の場合は、販売停止措置を取ってくれることが多いです。商標権侵害品が販売されている場合に、速やかに削除せずに放置しているときには、楽天やアマゾンといったサイト運営者も責任を負うとした判決も出ておりますので、最近はサイト運営者側も知的財産権保護の傾向が強くなっています。

3.海外からの輸入による模倣品対策

 海外からの輸入による模倣品被害も後を絶ちません。海外からの輸入品の場合、商品の出所がわからないことが多く、また、一度上陸してしまうと販売業者が多数に上ってしまうこともあり、個別に販売停止を求めること自体が難しい場合も少なくありません。こういった海外からの模倣品に対しては、税関差止制度を利用することができます。税関での差止めができれば、市場に商品が出回る前に侵害品を差し止めることができるため、非常に便利です。特に商標権侵害品の場合は、税関において侵害品であるか否かの判断を容易にできるため、差止が認められる可能性が高く、費用対効果の高い方法です。

4.まとめ

 模倣品販売業者の素性がよくわからなかったり、多数に上るような場合であっても、上記のような方法を利用することにより、効果的な販売差止ができる場合があります。いずれの場合も商標権を取得している場合に効果を発揮しますので、改めて商標権を取得しておくことのメリットがおわかりいただけたかと思います。



※「THE INDEPENDENTS」2015年12月号 - p17より

【知財を活用した中小企業のブランド戦略第1回】商標権の取得(1)
【知財を活用した中小企業のブランド戦略第2回】商標権の取得(2)
【知財を活用した中小企業のブランド戦略第3回】商標権の取得(3)
【知財を活用した中小企業のブランド戦略第4回】商標権の取得(4)
【知財を活用した中小企業のブランド戦略第5回】商標権の取得(5)
【知財を活用した中小企業のブランド戦略第6回】商標権の取得(6)
【知財を活用した中小企業のブランド戦略第7回】商標権の取得(7)
【知財を活用した中小企業のブランド戦略第8回】権利活用(1)
【知財を活用した中小企業のブランド戦略第9回】権利活用(2)
【知財を活用した中小企業のブランド戦略第10回】権利活用(3)