「「宇宙ビジネスの知財戦略」㈱アクセルスペース」
公開
<聞き手(左)>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
代表弁護士 鮫島 正洋さん
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社~電線材料の開発等に従事。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)~知的財産マネジメントに従事。2004年7月内田・鮫島法律事務所開設~現在に至る。
<話し手(右)>
株式会社アクセルスペース
代表取締役 中村 友哉さん
<株式会社アクセルスペース 概要>
設 立:2008年8月8日
資本金:18億5697万円(資本準備金を含む)
所在地:東京都千代田区神田小川町2-3-13
事業内容:①超小型衛星及び関連コンポーネントの設計製造、②超小型衛星を利用したソリューションの提案
鮫島正洋の知財インタビュー
宇宙ビジネスの知財戦略(㈱アクセルスペース)
超小型衛星による宇宙ビジネスを手掛ける㈱アクセルスペース中村社長にこれからの知財戦略について伺いました。
鮫島:第200回事業計画発表会での中村社長のプレゼンには大変感銘を受けました。宇宙事業はロケットを打ち上げる事が目的でしたが、今や打ち上げた人工衛星を活用する新しい宇宙ビジネスの時代に来た。しかもそれを最先端で手掛けるのが大企業ではなくベンチャー企業であるとは。
中村:10年前に東大と東工大の学生プロジェクトとしてスタートした当初から衛星を活用した宇宙事業を創出したいという強い想いがありました。大企業に就職したら衛星開発事業の担い手になるまでは時間も掛かるしその保証もない。だったら自分たちでやるしかないと2008年に起業しました。重量60㎏の超小型商業衛星1号機打ち上げにウェザーニューズ社と成功し、JSTやNEDOの支援を受けながら現在は3機目を準備中です。
鮫島:直感的には宇宙ビジネスに関する特許は取り放題だと思います。特に、50機の宇宙衛星を上げることを前提としたビジネスモデルやデータ解析アルゴリズムは、これまでの既成観念を打ち破っているため、知財戦略的にも大きな可能性があると思っています。
中村:今までは技術を公開しないブラックボックス戦略でした。人工衛星開発に関わる技術は一般の人の目に触れる事はなく模倣する事も難しいので特許を取得する必要は感じませんでしたが、打ち上げの次の事業計画が宇宙データ解析事業なので、まさにおっしゃるような分野の知財戦略が鍵になると認識しています。
鮫島:今年9月に18億円をベンチャーキャピタルや事業会社向けの第三者割当増資で資金調達しました。モノづくりベンチャーが製品開発から事業化するまでには最低10年は必要です。最近はモノづくりベンチャーの開発資金、設備敷金、運転資金の資金調達に対しては追い風が吹いてきました。
中村:2017年までに3機製造し、打ち上げるための資金を一気に調達しました。今回シリーズAをリードしたVCのグローバルブレインのキャピタリストは、宇宙ビジネスの経験もあり、資金調達面だけでなく今後の事業展開に対する支援にも期待しています。
鮫島:気象情報、精密農業、森林観測、パイプライン監視など民間市場開拓がポイントですね。
中村:10年以内に超小型衛星50機を打ち上げるのが当社の目標です。そうなると地球全体を毎日撮影ができるので、いわゆるビッグデータ解析市場が格段に広がります。
鮫島:そのためには株式上場は必須ですね。宇宙ビジネスは未知数ですが非常に大きな可能性があります。今後のご活躍に期待しています。
機関誌「THE INDEPEDENTS」2015年11月号 P16-17より