「「農業ビジネスの成長戦略を考える」(株)鈴生 鈴木貴博」
=$DATE?> 公開
<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明さん(右)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)
<話し手>
株式会社鈴生
代表取締役 鈴木 貴博さん(左)
1976年4月13日生まれ。東海大学第一高校卒業。九州東海大学工学部卒業。山梨県の農業法人で1年間の研修を受け、父の経営する鈴木農園に2008年入社。自社生産だけではなく協力農家、独立の生産者を育て作物を購入することができる会社を目指して農業を始める。簡単には良いものができず苦戦の日々。恩師から、「作物は育てているのではなく、成長の手助けをするもの」との言葉をもらい経営が大きく前進する。
<株式会社鈴生 概要>
設 立:2008年12月2日
資本金:3,000千円(株主 経営陣)
所在地:静岡県静岡市葵区下1108-8
事業内容:
農作物の生産加工販売・資材種苗等販売
<特別対談>これからのIPOスタイル
農業ビジネスの成長戦略を考える(株式会社鈴生 代表取締役 鈴木貴博氏)
レタスを中心に売上高7億円の鈴生グループ(静岡県)の鈴木社長と、農業法人の事業計画支援も手掛けるAGSコンサルティング小原専務に、これからの農業生産法人の成長戦略についてお話を伺いしました。
小原:農業ビジネスは地方創生のカギを握っています。全国各地で地銀を中心とした「六次化ファンド」が組成されて資金供給体制は整いつつあります。しかし結局のところ、農業を事業としてコーディネイトできる人材が圧倒的に足らなく、農業の成長モデルが確立できていません。
鈴木:2008年12月に農業法人「株式会社鈴生」を設立してから、枝豆・レタス・トレピス・ロメインメロン・サニーレタス・グリーンリーフ・わわ菜・ミニトマトなど、いろいろな農作物を手掛けましたが、中途半端な姿勢ではどれも事業化はできません。現在は「レタス日本一」を目指して、経営資源(人、農地、モノ、カネ)を集中しています。
小原:レタスの市場規模1000億円とトマトに匹敵する市場で、まずは圧倒的なシェアトップを取り収益基盤を確立する事です。
鈴木:生産面は自社及び提携農家とITを活用しながら生産管理を行い、販売面では合弁会社「株式会社モスファームすずなり」など自社ルートによる安定供給先を確保しています。
小原:モスフードサービスからは厳しい品質管理を要求されていると思います。次はこの生産技術力をベースとして、どのように事業展開していくかです。
鈴木:野菜作りは自然との闘いですが、中でも虫をどう駆除するかは大きな悩みです。もちろん農薬散布を抑えながらが大前提です。品質向上と生産性向上の同時達成は永遠の課題ですが、まずは生産販売加工までを一気通貫で行い付加価値を高めていくつもりです。
小原:レタス以外では高級枝豆のブランディング化にも取り組んでいます。海外では枝豆はヘルシー野菜として大変注目されています。
鈴木:「オレ達の枝豆」は、一般的に流通している枝豆より色が薄く、自然な香りとコクのある甘みが特徴です。枝豆は太陽の光を浴びてできた養分は夜中に蓄えられ、太陽が昇ると呼吸によって失われていくのでまさにスピード勝負です。私たちは深夜2時には収穫作業を開始し、朝日が昇る前に採り終えるようにしています。
小原:将来的には海外での現地生産する技術力が事業展開のカギになります。
鈴木:静岡県庁関係者と先日、スリランカ、モンゴル、べトナムへ視察に行ってきました。特にスリランカの土地気候風土は野菜作りには最適だと感じました。ただ、私たちの農業技術を海外戦略に活かすためには時間がかかると考えています。
小原:これからの成長戦略は、日本国内の市場で考えるのではなく、海外でのブランディング戦略から考えていく必要があります。東京には各地のアンテナショップがありますが、海外から攻めていく発想が重要です。
鈴木:最近は農業を巡る事業環境も大いに変化しています。私たちもアグリビジネス投資育成機構の出資を受け、積極的な事業展開を行っていきます。
小原:株式上場を目指す農業法人の成長発展を弊社もぜひ応援したいと思っています。本日はありがとうございました。
―対談を終えて―
小原:「レタスを言えば、鈴生」と出てくるような、圧倒的なブランドを確立し、安定的な利益を確保出来るようになれば、事業の次の展開が見えてくると思います。海外での生産・技術コンサル等を展開することも可能でしょうし、「農業の産業化」も図れると思います。いずれにしても、農業は想像以上に資金がかかるもので、今後は民間の資金のみならず、政府系の資金も含めて資金調達の準備をしていくことが必要でしょう。
鈴木:まだまだ形が定まらない私の農業を産業にしたいとの思いを打ち明けて対談をすることが出来光栄でした。一気通貫の農業体系は私の想像をはるかに超えるもので今後もご指導を仰ぎながら進めて行ければと思います。 ただ、農業だけで終わることなく生産から加工販売まで一気通貫できるような事業計画を作っていきたいと思います。楽しい時間をありがとうございました。
※「THE INDEPENDENTS」2015年12月号 - p14-15より