アイキャッチ

「「外国人ビジネスの経営戦略」(株)グローバルトラストネットワークス 後藤裕幸」

公開

<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明さん(左)
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手>
株式会社グローバルトラストネットワークス
代表取締役 後藤裕幸さん(右)
1978年熊本県生まれ。1997年私立熊本学園大学付属高校卒業。2000年中央大学法学部在学中に起業し、オンラインゲーム、ファッションサイトを開設。2003年㈲ミューゲートを設立、代表取締役就任(2004年退任)。2004年㈱ミューを設立、代表取締役就任(2006年退任)。2006年当社設立、代表取締役就任。

<株式会社グローバルトラストネットワークス 概要>
設 立:2009年3月31日
資本金:1億5460万円(資本準備金含)
所在地:東京都豊島区東池袋1-17-8-3階
事業内容:
外国人専門の賃貸住宅保証事業
賃貸仲介事業、生活サポート事業
人材紹介及び派遣事業、通信事業

<特別対談>これからのIPOスタイル

外国人ビジネスの経営戦略


外国人専門の賃貸保証事業を展開する㈱グローバルトラストネットワークス(GTN)の①成長戦略②上場戦略③人材戦略について、GTN後藤社長に㈱AGSコンサルティング小原専務が伺いしました。

外国人の生活総合支援企業へ


小原:外国人向けに特化する事で、外国人賃貸保証分野で圧倒的ナンバーワンのポジションを確立しました。
後藤:事業開始のきっかけは、知人の外国人が部屋を借りる際の保証人になった事です。外国人の保証ニーズはあるのに誰も成り手がいない点にチャンスがあると思いました。震災等で厳しい時期もありましたが、当社の保証サービスを利用する不動産管理会社の代理店は5,800社に達し、累計45,000件の保証実績を達成し、現在年間2万件もの外国人が利用する家賃保証サービスとなりました。
小原:貸倒引当率を抑える事に成功すれば保証ビジネスは安定収益事業になります。
後藤:私どもは早大、東工大、京大、立命館大をはじめとする留学生引受に積極的な大学と提携して外国人留学生の受け入れを積極的にサポートしています。留学生以外の外国人に対しても本国の家族や友人に対する身元確認を徹底する事で貸倒率を下げています。
小原:しかし200万人の外国人市場は日本人と比較するとわずかな市場です。保証ビジネスだけを考えると数十億円といったところではないでしょうか。新たな成長戦略は考えていますか。
後藤:2013年12月より外国人専門のアルバイト紹介事業、今年より外国人専門の格安通信事業(MVNO)を始めています。日本の生活環境に慣れていない外国人の生活サポートを行える点が私たちの強みです。ベトナムなどASEAN諸国からの大学生に対する奨学金や日本企業への就職紹介制度を設け、独自のルートによる留学生開拓事業も展開していきます。

グローバル展開するために上場を決断


小原:VC等の出資を受けた事もありますが、ここにきて上場を決意されたのはなぜですか。
後藤:保証事業を中心とするB2B2C事業をベースとしながら外国人向けコンシューマ事業を優位に展開するためです。1億円の利益が出ても税引き後50百万円では思い切った展開はできません。
小原:上場のタイミングはいつごろを考えていますか。
後藤:本格的準備は今期からですが、2020年のオリンピック前には実現したいと思います。海外事業所開設やシステム開発投資に対する資金調達を積極的に行い、事業のスピードアップを図っていきます。
小原:家賃保証事業の安定成長は評価されますが、インバウンド需要を取り込んでいく事で期待成長率(PER)が高まり時価総額も上がるでしょう。

独自の企業文化を創る


小原:HPを拝見すると社員を大切にしている会社という印象です。日本語、英語、自国語と何か国語も話せる優秀な社員がどう結束していくかはとても大変だと思います。
後藤:私どものスタッフの7割は外国人です。中国・韓国・ベトナム・ネパール・インドネシアなど多様な人種をどう融和させていくかに苦労してきました。全社で行う毎月の懇親会、毎年、忘年会も兼ねたスタッフ総会(GTNフェス)、スタッフ旅行をはじめ、部署別の達成会、部活動、誕生月会などメンバー同士が気軽にコミュニケーションできる環境づくりを心掛けています。大切な事は、それぞれの国の文化の違いを乗り越えたGTN独自の企業文化を築いていく事だと思っています。来日されるすべての外国人に「日本に来て、本当によかった」と心から言ってもらいたい、という強い想いが私たちの原点です。私は大学を起業して中退しましたが、人の幸福とはやりがいのある仕事といい仲間に恵まれる事だと実感しています。
小原:本日はありがとうございました。GTNがグローバル企業として大きく発展される事を期待しております。

<対談を終えて>


小原:後藤社長のこれまでの業歴に裏打ちされた外国人の家賃保証ビジネスはしっかり基盤を創っていますが、その市場規模を勘案して次の事業展開を始めています。そこに大きな成長余力を感じとることができます。また、その成長過程で「IPOを一通過点」と捉えていることを伺うことでベンチャー企業の真髄をみてとることができました。社員を非常に大切にしていることが、GTN社の大きな成長を支えることでしょう。

後藤:小原様からAGSコンサルティングがグローバルに展開した実際の経験、人を大切にするという小原様のポリシーと200名を超える場合のマネジメントの重要性をお伺いできて参考になりました。また、小原様には当社の事業をすぐに理解し、評価して頂けたので励みになりました。今後、10年後も20年後も評価頂けるように着実に成長していきたいと思います。


※「THE INDEPENDENTS」2015年11月号 - p18-19より