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「最近の大学発ベンチャーの動向」

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インデペンデンツクラブ会長

1943年山口県大島郡大島町(現周防大島町)生まれ。
1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。
1973年監査法人サンワ事務所(現監査法人トーマツ)入所、パートナー。
1986年より早稲田大学に着任し、ビジネススクール教授などを歴任。
日本ベンチャー学会会長、早大アントレプレヌール研究会代表世話人も務める。
2012年3月教授を退官

~自ら考え、行動し、想像しその利益を享受する人生のために!!~

 我が国の大学発ベンチャーの歴史を紐解いていくと、1998年大学等技術移転促進法、2004年国立大学法人化、2006年教育基本法改正が転換点だったと言える。改正後の教育基本法には、「成果を広く社会に提供」することが明文化された。大学はその教育・研究成果を以って社会貢献することが”使命”となったのである。あれから約10年。大学発ベンチャー支援の取組みがここにきて現実のものになってきている。
 2012年より始まった大学発新産業創出プログラム(START)では、キャピタリストが事業プロモーターとして研究成果の事業化とその出口(ベンチャー設立など)をサポートしている。2013年には、国立大学の研究成果に対する事業化投資解禁がなされ、東大・京大・阪大・東北大に1000億円の投資予算が傾斜配分された。2014年開始のグローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム)では、選定された13大学が大学技術を活かすための経営人材養成プログラムをおこなっている。
 今後の活躍が期待される優れた大学発ベンチャーと、特にその成長に寄与した大学や企業等を表彰する「大学発ベンチャー表彰」が2014年より開始され、第一回はプロメテック・ソフトウェア㈱(東大発・文部科学大臣賞)やスパイバー㈱(慶大発・選考委員会特別賞)が受賞した。第二回目となる今年は経済産業省も名を連ね、㈱創昌(阪大発・文部科学大臣賞)や㈱C&A(東北大発・経済産業大臣賞)が受賞し、大学発ベンチャーとそのチームにスポットライトを当てる取り組みが年々強化されている。
 官民ファンドも近年急増している。中小企業基盤整備機構はこれまで7,697億円・214本ものファンド支えてきた。産業革新機構は個別企業への出資のほか、ファンド・トゥ・ファンドで技術系ベンチャーを支援するファンドへの出資も増やしている。

 1990年平成バブルが崩壊しつつある中、ボストン大学へ半年留学し、IPO前後の戦略変化や米国へ進出していた中核日系企業の戦略に関する調査をおこなった。米国進出の多くの企業が赤字のまま、事業拡大を図っていることに、危機感をおぼえた。結果として得られた結論は、少子高齢化が進む日本の将来を救済するのは、志の高い技術ベースのベンチャー企業しかないということ。1994~1997年には産学官が一体となったベンチャー支援総合政策が次々と打ち出された。「事業計画発表会」は、このような時代背景から発足した経緯がある。
 2011年よりこの事業計画発表会の運営を引き継いだインデペンデンツクラブには、次のことを期待したい。ひとつは「地域経営資源の掘り起こしと人材育成」、これらによって日本ブランドの構築を実現する企業を育成すること。ふたつに「産官学の推進と支援者連携」。そして、年間50回おこなっている事業計画発表会の回数をより増やし、1社でも多くのIPO企業を輩出する場を創出してもらいたい。

 日本電産の永守社長は、ソフトバンク孫正義氏、ファーストリテイリング柳井正氏、楽天三木谷浩史氏をして、日本の「ほら吹き」3人男と呼んだ。いずれも現在の業績より遥かに高い目標を掲げているからである。永守社長自身も「親族で90歳よりも若く亡くなったものはいない」とまだまだ現役志向だ。起業家がどれだけの魂と志をその事業に賭けているかが伝わってくるエピソードである。
 副題である「~自ら考え、行動し、創造しその利益を享受する人生のために!!~」は米国建国のアントレプレナー宣言から抜粋したもの。まさに今のベンチャー、引いては日本が持たなくてはならないベンチャー精神であると思う。

2015年9月16日事業計画発表会200回記念シンポジウム基調講演より