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「「(株)ヘルスケアシステムズの成長戦略を考える」代表取締役 瀧本陽介」

公開

<聞き手>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明さん
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手>
株式会社ヘルスケアシステムズ
代表取締役 瀧本陽介さん
1977年生まれ。2002年金沢大学大学院自然科学研究科修了。2006年三重大学発ベンチャーで臨床試験事業の立ち上げに参画。2008年名古屋大学農学部の大澤俊彦教授(当時)と名古屋発ベンチャーとして当社設立、代表取締役就任。

<株式会社ヘルスケアシステムズ 概要>
設 立:2009年3月31日
資本金:30,000千円(株主:経営陣ほか)
所在地:愛知県名古屋市千種区千種2-22-8
事業内容:
① 疾病予防・未病検査の受託分析
② バイオマーカー・検査機器の開発
③ 機能性食品の研究開発

<特別対談>これからのIPOスタイル

ヘルスケアシステムズの成長戦略を考える


小原:東京インデペンデンツクラブでの瀧本社長による事業計画発表で郵送検診サービス「ソイチェック」のビジネスモデルについてはよく理解できました。本日はヘルスケアシステムズ社の成長戦略を①事業戦略、②資金戦略、③上場戦略を通じて考えたいと思います。まずは事業戦略面からお伺いします。
瀧本:私たちは中長期的には検査結果を届ける会社から健康を届ける会社を目指しています。「ソイチェック」を立ち上げてからの3年間は郵送検診の認知度向上に全力で努めた時期でした。その次の段階では検診サービスから得た情報を元に個々人の健康ニーズに応えていくサービスを確立していきます。郵送検診事業は健康投資事業へのきっかけ作りです。
小原:郵送検診サービスを健康管理プラットフォームへと発展させていくわけですね。1回3,800円の「大豆(ソイ)チェック」で収益モデルを作り「塩チェック」「錆チェック」など次々と検診バリエーションを増やして収益基盤を確立していく。そして測定結果を返送する事で同時にエンドユーザーとの接点を広げる戦略です。しかしアナログ型B2Cモデルだけでプラットフォームを構築するには時間がかかりすぎる。
瀧本:TVや雑誌による紹介や口コミ効果でユーザーは累計3万人を超えました。食品メーカーの販促企画やアプリ開発などIT化も進めています。マーケティングも重要ですが、さらに大切なのは個々人の健康ニーズにきちんと応えられる体制作りだと考えています。現在は370施設の医療機関が私たちの「ソイチェック」を導入し、予防医療に活用しています。今後は調剤薬局など病気予防を指導するパートナーとの提携戦略を重点的に進めていく計画です。

小原:次に資金戦略面についてお伺いします。外部資金の調達方法には、①政府系機関の活用(日本政策金融公庫、助成金・補助金等)、②政府系ファンドからの出資、③民間VCからの出資、④民間金融機関からの借入、があります。それらの資金調達を実行するためには、まずは事業戦略の見える化、すなわち事業計画が必要です。そして事業進捗に応じた資金調達計画の立案実行がポイントになります。
瀧本:今まで私たちは事業計画に基づいた資金調達を行った事はありません。名古屋大学大澤教授が開発したバイオマーカーによる検査システムや受託分析等が事業の柱であり、そこからの収益の中で郵送検診サービスを始めました。これから検査サービス事業を拡大するためには多額の資金調達が必要です。
小原:当社はREVIC(地域経済活性化支援機構)と共に地域ヘルスケア産業支援ファンドを運営しています。医療機関以外の事業者が健康診断サービスを行う事には法的問題があります。ファンドからの出資受け入れや上場審査においてはコンプライアンス面も重要なポイントになります。
瀧本:新しい検診サービス開発、アプリ等情報系開発、営業開拓や海外展開と、調達した資金をどのタイミングでどこに投資していくか、具体的な計画策定を急いでいます。
小原:資金の活用方法を知らなければ事業は大きく成長させる事はできません。資本金1000万円でも株式上場はできますが、資金調達によって事業を成長させた成功実績を見せる事で投資家からの信頼が得られます。大量の資金調達を行ったは良いが資金使途が見つからないのはベンチャー企業にとっては困りものです。

小原:最後に上場戦略あるいは管理体制の構築についてお伺いします。売上高が3億円、5億円、10億円と、経常利益も3億円が予想できるのであれば今から3年後が上場タイミングです。と同時に既に管理体制強化を段階的に着手する時期になります。上場審査クリアするためには管理系人材が申請直前期で最低3人は必要です。
瀧本:私どもは名古屋本社に研究開発と検査部門、東京に営業拠点と管理部門を置いています。昨年から人材採用を積極的にして、管理系人材も今年初めて採用をしました。管理系人材と合わせこれから重要になってくるのは検診結果(データ)を管理する部門と考えています。
小原:税務会計から金融商品取引法ベースの決算に早い時期から対応する事もポイントです。監査費用は直前期で10百万円前後のケースが多いですが、監査法人の監査を受けていると金融機関からの信頼性が格段に高まります。
瀧本:上場戦略についてはまだ具体的な検討段階の前ですが、成長戦略を考える上で避けて通れないと思います。
小原:成長戦略を検討する上で、①事業戦略、②資金戦略、③上場戦略を有機的に結びつける事が大切であり難しい点です。その点ではヘルスケアシスムズ社は瀧本社長の頭の中には事業スケジュール化が出来ているので、後はこれを「見える化」する事です。ヘルスケア分野の新しい担い手として上場される事を期待しております。

※「THE INDEPENDENTS」2015年9月号 - p8-9より