「エナテックス㈱「ツインパワー給湯機の特許戦略」」
公開
<聞き手(右)>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所
代表弁護士 鮫島 正洋さん
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。
<話し手(左)>
エナテックス株式会社
代表取締役 黒保 勝郎さん
1945年9月4日石川県金沢市生。石川県立金沢商業高校出身。1981年9月当社設立、取締役就任、1984年10月代表取締役に就任、現在に至る。1997年11月石川ベンチャー大賞アントレプレナー賞受賞。1998年11月中部ニュービジネス協議会主催中部ニュービジネス大賞受賞。
<エナテックス株式会社 会社概要>
設 立:1981年9月1日
資本金:55,000千円(株主:経営陣)
所在地:石川県金沢市間明町2丁目259番地2
事業内容:太陽熱利用給湯システムの製造販売 他
鮫島正洋の知財インタビュー
ツインパワー給湯器の特許戦略
鮫島:太陽熱と空気の熱を利用した「ツインパワー給湯器」が、平成26年度省エネ大賞資源エネルギー庁長官賞(節電賞)を受賞されました。
黒保:太陽エネルギーをメイン熱源としながら、雨や曇の日には自然冷媒CO2(空気熱)を補助熱源とする事で、年間70%の給湯コストを削減できる点が評価されました。
鮫島:従来のようにタンク内で均一な温度分布とするのではなく、温めたお湯をタンク上部に貯め、そこから給湯する構造は独創的なアイデアだと思います。
黒保:平成21年8月に「ヒートポンプバックアップ熱源を備えた太陽熱給湯システム」の名称で出願して26年5月に特許登録しています。
鮫島:しかし1件だけの特許でプロテクトする事は難しい。大手企業の知財部は徹底的に貴社特許を研究して回避してきます。
黒保:これからも製品改良を進めていきますが、新たに特許を出願し直した方がよいでしょうか。
鮫島:上市する(市場で売る)と原則、その製品にかかる特許は取得できません。貴社の場合は特許範囲に限定が多いので、分割出願で特許を補強していけばよいでしょう。後3つ、特許取得すれば模倣リスクは大分減ると思います。
黒保:特許取得のコストは高いので、少なく確実に特許を取得したいと考えています。
鮫島:請求項にいろいろな構成を規定すれば特許取得のハードルは下がりますが、それだけ権利としては弱くなります。また特許を取得して意味があるかを検討する必要もあります。侵害が見えにくいソフトウエアや、ものづくり中小企業のノウハウをうかつに特許に出すと、技術が流出してかえって弊害になります。形のあるモノは簡単に模倣されますが、一方で特許に馴染みやすい。 黒保:私どもは「空調・給湯一体化システム」「農業用土壌暖房システム」という新たな取り組みを行っている最中ですが、代理店開拓と資金調達が課題になっています。
鮫島:新事業を展開する場合に、自社の商品やサービスに知財による参入障壁を設ける事は重要です。間接的効果として、特許を取得していればVC等からの資金調達にもプラスになります。私ども自身は特許出願業務を行いませんが、効果的な知財ビジネスのアドバイスによって、中小ベンチャー企業のお役に立ちたいと思っています。本日はありがとうございました。
エナテックス株式会社
- 住所
- 石川県金沢市間明町2-259-2
- 代表者
- 代表取締役 黒保 勝郎
- 設立
- 昭和56年9月
- 資本金
- 5,500万円
- 従業員数
- 14名
- 事業内容
- 太陽熱利用給湯システムの製造販売
- URL
- http://www.enetecs.jp/