「㈱ファーストブランド、㈱ヘルスケアシステムズ」
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早稲田大学
商学博士 松田 修一 氏
1943年山口県大島郡大島町(現周防大島町)生まれ。
1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。
1973年監査法人サンワ事務所(現監査法人トーマツ)入所、パートナー。
1986年より早稲田大学に着任し、ビジネススクール教授などを歴任。日本ベンチャー学会会長、早大アントレプレヌール研究会代表世話人も務める。
2012年3月教授を退官後、株式会社インディペンデンツ顧問に就任。
インデペンデンツクラブ会長
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事業計画を発表した2社は、基調講演をいただいたHMTの菅野隆二社長の「経営のすべてがマーケティングである」ということを着実に実践しているベンチャーであり、事業拡大のための連携や必要資金の確保を必要としている。No.576 ㈱ファーストブランド(代表取締役 河本 扶美子)
銀行及び航空会社のキャリアを経て、2002年にWebブランディングを中核にした事業展開を目的に当社を設立した。ネットバブル崩壊直後の設立でもあったが、ここ5年間着実に業績を伸ばし、現在年商7.6億円までに達した。地方の小規模の専門事業者を経営資源が不足する地域中小企業に仕事を斡旋し、契約締結コンサルまで支援する「マイベストプロ事業」を拡大し、IPOをしたいというプレゼンであった。IPOを目指すに当たり、次の3点で基盤固めをする必要がある。① Webによる職業紹介サイト乱立下での確実なチャネル確保:地域No.1の新聞社や放送局と連携し、新聞などに広告を出している個人事業主を潜在登録者とし、働きかけによって登録者への誘導を行っている。この仕組みは、地域に密着している従来メディアとのWin-Winの信頼関係性がさらに強化できることを前提にしている。すでにほとんどの地域と連携ができているので、典型的なロールモデルをまず構築する。
② 登録専門家の量の拡大と質の向上:地域の登録専門家の量の確保と質の向上支援を同時に達成する手法を、徹底した地域密着の強さを活かして、確立しつつある。ただし、登録専門家が数千名から数万人に拡大するにつれて、能力の高い彼らの域外進出の支援がどこまでできるか、また全国区の新聞・放送局からの地域内浸透をどのように防ぐか、が今後の成長のキーになる。リアルとネットの組み合わせ、登録専門家が、どこでも、いつでも仕事のできるプラットフォーム構築が不可欠である。
③ ビジネスモデルの明確化:専門登録者の拡大・リピート率の維持、斡旋による契約率の向上等ここまでの仕組みづくりは成功してきた。IPOに向けては、マイベストプロ事業とイベント支援などの地域ブランドづくり事業との両輪による、地域の活性化への貢献と自社の収益モデルとの関係性をより明確にする必要がある。まだ、事業の持続的成長のプロセスの明確化が不十分である。
No.577 ㈱ヘルスケアシステムズ(代表取締役 瀧本 陽介)
日本の高齢化社会に急増する健康保険コストを下げるために、生活習慣病の早期発見と健康への効率よい支援によって、検査・研究で健康文化をつくる名古屋大学農学部の技術を担いで、2009年に設立した生体試料、食品成分の受託分析、検査システムとバイオマーカーの研究開発の会社である。現在の「ソイチェック」は、毎日食べている大豆製品の健康貢献の検査であり、検査キット購入⇒採尿⇒郵送⇒1週間後の報告という郵送診断を採用している。現在全国2万弱の検体検査でその有効性が証明されている。4千円でチェック可能な領域を、体のサビつき度のチェックとして「サビチェック」、食塩摂取量チェックとして「シオチェック」と拡大しつつあるが、将来的には20領域まで、拡大する予定である。各領域については、大学研究者及びトヨタグループの技術陣との共同開発を行っている。学会発表、テレビ放映で、認知度は急拡大しているが、事業化はスタートしたばかりである。事業の持続的成長を可能にするには、次の3点を解決する必要がある。① 検査メニュー拡大とプラットフォーム事業の可能性:遺伝子検査は、将来の発病などの可能性についてのチェックであるが、本検査は現状の生活習慣病チェックであり、食生活との関係で定期診断が必要になる。現在の大豆対象から多くの検査対象が選択でき、同時に1チェック4千円は高すぎるので、セットメニュー価格を設定する必要がある。同時に、個々人に対するキット販売・診断・報告情報を一括管理できるデータベース・プラットフォーム事業になるのか否か、ビジネスモデルを早期に決定する必要がある。
② 販売チャネルの拡大と事業連携の方向性:現状は通販と病院等経由の販売であるが、健康志向ビジネスは、小中学校・企業等の健康診断、スポーツクラブや食品加工会社の活動等と多様である、それぞれの販売チャネルによって販売方法が異なるであろうが、オピニオンリーダ的な連携先と組んだ、販売チャネルの拡大と情報管理の質的向上を同時に達成する必要がある。
③ 知財・ブランドの確立で優位な連携を:検査キットの共同開発には、多くの資金を必要としないとのプレゼンであるが、検査メニューの拡大に伴う共同研究による共願が必然的である。自社知財の検査機器を自由に販売し、高い収益モデルを確保するためには、本来共同ではなく委託研究の方が適切である。さらに、健康診断メニューに組込み、健康保険適用対象になることを短期間に進めるため、ブランド構築のためのコストを見積り、戦略的な資金調達・資本政策を、連携先を含めて検討する必要がある。
(2015.5.11)