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「㈱未来機械、PicoCELA㈱」

公開


早稲田大学
商学博士 松田 修一 氏

1943年山口県大島郡大島町(現周防大島町)生まれ。
1972年早稲田大学大学院商学研究科博士課程修了。
1973年監査法人サンワ事務所(現監査法人トーマツ)入所、パートナー。
1986年より早稲田大学に着任し、ビジネススクール教授などを歴任。日本ベンチャー学会会長、早大アントレプレヌール研究会代表世話人も務める。
2012年3月教授を退官後、株式会社インディペンデンツ顧問に就任。
インデペンデンツクラブ会長

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 事業計画を発表いただいた2社ともに、大学発ベンチャー及び当該地域期待の技術を持った会社であり、事業拡大のための連携や必要資金の確保を必要としている。

No.570㈱未来機械(代表取締役 三宅徹)

 大学院時代に香川大学発ベンチャーとして、未来の街の課題を解決するロボット・メカトロニクス機器等の研究開発型製造販売会社を目指して、2004年に設立した。開発思想は、大学技術+現場主義+有望ニーズに根差した次世代ロボット市場の創造である。
 当初高層ビルの窓ふきのための吸盤付移動窓拭きロボットを開発した。しかし、実験上は全く問題がなかったにもかかわらず、落下事故が全くないとは言えないという理由で、製品として採用されなかった。ここでの基礎技術を活用して、橋などのコンクリートのひび割れ検査ロボット等の受託開発事業をしながら、独自ロボットを開発してきた。中東などの砂漠に敷設される太陽光発電のパネルに積もる砂埃をブラシで掃く自律清掃ロボットを開発した。会社は設計開発を中心に、生産はグローバルに工場を持つ日本の企業に委託し、商社・エンジニアリング会社、さらに太陽光発電事業者のチャネルを通した販売を行うという事業の発表である。
 2014年に機能試作機の評価を終了し、2015年量産機の開発準備をする。受託開発は行わず、2016年から自律清掃ロボットの本格的な量産・販売に入るにあたり、在庫を含む運転資金を中心とした資金調達を考え、IPOも視野に入れているが、次のような課題を解決する必要がある。なお、高層ビル用自動お掃除ロボットの改良改善は引き続き行っている。試作品上は問題がないので、国内の受注に注力することも期待する。
① 量産外注先との戦略的連携:当社は研究開発型ファブレス企業であるので、量産生産技術の本格的開発と量産外注先との戦略的提携が重要になる。世界に工場を持っている日本企業との連携が進んでいるとの話であるが、どこまでWin-Winの戦略的連携ができるかが今後の事業拡大に不可欠である。ひさしを貸して、母屋を取られることのないような知財・委託契約が事業の前提になる。
② 販売連携先との戦略的連携:自律清掃ロボットの販売連携先を、商社、エンジニアリング会社、太陽光発電事業者で検討している。ロボットの耐用年数5年と想定し、ブラシなどの消耗品の取り換えが1年に一回必要になる。また、太陽光発電装置の耐用年数が20年とすると、ロボットの取り換えも必要になるので、アフターサービスができ、販売能力がある事業者となると、太陽光発電事業者ということになりそうである。中東に強いアフターサービス能力のある事業者の選定と契約内容が市場確保に不可欠である。
③ 中東市場でのブランド化:人で行われている製造作業の数分の一のコストで作業が可能であるとの実証実験の結果であり、現状ではコスト競争力はあると考えられる。ただし、太陽光発電装置の製造事業者は世界的に中国企業が多く、自律清掃ロボットの安価投入は時間の問題である。製造に日本企業を外注先として活用するにしても、知財の主張が困難なエリアであるので、短期かつ一気に市場に投入するブランドを確立し、市場のシェアを確保しないと、この事業自体の存続リスクが高い。

No.571  PicoCELA㈱(代表取締役 古川浩)

 NTTの長男と言われた日本電気の通信技術の研究開発に従事していた古川氏が、九州大学の職を経て、九州大学発ベンチャーとして、トラフィック爆発を救済する、無線バックホール技術によるLANケーブル不要なWi-Fiアクセスポイントとなるスモールセル中心のモバイル通信エコシステムの企画、開発、販売及び保守を目的に、当社を2008年に設立した。文科省の補助金を得ながら15年間開発してきたが、代表取締役としてJan氏(元富士通ICL)を迎えた2013年から、研究成果の事業化を本格化している。
 独自の多段階無線中継テクノロジーで、携帯端末時代に相応しい無線電波の谷間になる地域にシームレスかつ安価に情報通信ができるスモールセルの研究開発・アプリ開発及び周辺特許を取得しながら、国内外の会社に、技術支援を行い、対価を得るというライセンスモデルが基本収入である。
 電波域20m程度のスモールセルをケーブルで設置するだけで、シームレスな情報通信ができる。福岡の天神地下街でどこでも(駐車場を除く)無料で公衆無線LANサービスを提供する日本最大のWi-Fiストリートを誕生させている。これによりケーブル85%オフを達成した。モールやホテルなど公共的施設で、電波干渉・電波変動・周波数不足を解消することが可能である。今後工場向け、キャリア向け、防災向け等の市場に拡大し、国内外にライセンス供与及びアプリケーション開発、実装実験をするための資金を数億円確保し、空白市場を一気に取りに行くことを計画しているが、次のような課題を解決する必要がある。
① 事業アライアンス先との戦略的提携
 基本の収益モデルがライセンス収入であるので、当社の技術を担ぐ事業(製造・販売・サービス)アライアンス先との戦略的提携が将来の成長可能性の決め手になる。簡単な取り付けのみで作業は簡単であるが、アフターサービスを含めて、ユーザー側へのタイムリーなクレーム対応が不可欠である。世界の先行的な競合であるCiscoやHPとバッティングしない技術であるが、ビッグデータ等との活用は避けて通れないので、他サービス業者との連動も不可欠になる。
② 第三者投資に見合う出口の明確化
戦略的提携先とのライセンス収入を中心としたビジネスモデルで、低コスト・短期間に空白の地域をカバーするための技術及び市場開発のために投資を必要としている。ライセンス先を、事業、地域等どのように選定して供与するかを明確にしないと、投資に見合う出口が見えない。ライセンスモデルだけで、IPOまで持ち込めるのか、IPO後にバイアウトなどがあると、ライセンス先相互とどのような課題が生じるのかが、課題が読めないのでIPOをしないTLO機能の会社のままにするのか等を明確にする必要がある。
③ 大学との関係性
現職の教授が、CTOとして代表権を持っているのが現状である。基礎研究については依然として研究室で行い、基幹特許の知財は大学が保有し、専用実施権を供与された当社の代表取締役を兼職することは、IPOを前提に考えると、利益相反問題を含め解決しなければならない課題が多い。国立大学統一のルールがないのが現状であるので、第三者の資金を入れるまでに、所属する大学のルールに合致しているか否かの確認が必要である。
(2015.4.13)