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「経営責任と資本政策」

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【國本 行彦】
1960年8月21日生。東京都立志村高校卒業。
1984年早稲田大学法学部卒業後、日本合同ファイナンス(現・JAFCO)入社。
2006年(株)インディペンデンツ設立、代表取締役就任。


登山家、栗城史多さんの「エベレスト挑戦プロジェクト」を応援する会に参加してきました。今回のプロジェクト費用5600万円のうち、2000万円はクラウドファンディングで集めるそうです。残る3600万円は栗城さん自身が講演活動や企業へのスポンサー回りを行い資金確保します。栗城さんの生き方に共鳴する多くの方が資金支援をするようですが、必要資金の半分以上を自らの行動で確保する姿勢にプロジェクト責任者としての強い説得力を感じます。

最近のベンチャー企業の資本政策ではVCが筆頭株主になるケースが増えています。筆頭株主が経営責任を持つという考えは古くなったのかもしれません。オーナーシップを持たない経営者が高いパフォーマンスを上げる事はあります。しかしベンチャー企業の場合、株式を全く保有していない経営者(キーマン)に長期的なコミットは期待できません。

2014年度IPO会社の約1/3の事例で「公募(新株発行)」より「売出(株式売却)」が上回っていました。IPOの意義が成長資金を資本市場からの資金調達であった時代から見ると、現在のIPOの目的が既存株主の資金回収という側面が大きくなっている事がよくわかります。中でもgumi(東1:3903)のケースでは、IPO時価総額の36%にあたる約340億円が売出されています。IPO時には親引け(特定投資家への公開株式割当)制度で株主構成の安定化を図る方法もあります。経営にコミットしていくのは誰なのか、IPO後のエクイティストーリーも重要です。

※「THE INDEPENDENTS」2015年4月号 - p2より