「<特別対談>株式会社鯖や 代表取締役 右田 孝宣」
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<聞き手(右)>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明さん
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)
<話し手(左)>
株式会社鯖や
代表取締役 右田 孝宣さん
1974年9月3日生まれ。大阪市立淀商業高校出身。オーストラリアの寿司チェーンで工場長とスーパーバイザーの経験を積む。帰国後30歳で居酒屋「笑とり」オープン。その店の人気メニュー鯖寿司を事業化するため株式会社鯖やを設立する。
<株式会社鯖や 会社概要>
設 立 :2007年6月1日
資本金 :5,000千円
所在地 :大阪府豊中市庄内東町1-7-33
事業内容:鯖寿司の製造販売・鯖加工食品販売
関連会社:(株)SABAR(大阪天満店、福島店、京都店、恵比寿店)
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小原:鯖に絞っての事業展開はユニークですね。
右田:とろ鯖寿司の百貨店向け卸販売と、とろさば専門店「SABAR」を関西3店舗展開しています。今年3月には「SABAR恵比寿」を、5月には大手町にテイクアウト型「とろさば食堂」と東京にも出店します。
小原:上場のタイミングはどのようにお考えですか。
右田:外食部門で20億円、卸部門で15億円の売上35億円達成段階での上場を考えています。4年以内に外食店舗18店、テイクアウト型8店を出店する計画です。
小原:加工工場も必要ですね。
右田:現在は八戸に協力工場が2つありますが、来年には関西で自社工場を建設する予定です。
小原:物流コストも膨らみます。
右田:本社工場は研究開発拠点として捉え、量産工場は外部協力工場を考えています。
小原:鯖の漁獲量が年々減少していますが、安定的な仕入体制をどう構築していきますか。
右田:現段階では天然魚で十分ですが、鯖の陸上養殖を研究しています。来年には養殖魚を販売する計画です。
小原:出店費用、工場建設など資金需要は旺盛ですが、資金調達はどのようにお考えですか。
右田:預金残高15,002円、当月支払い500万円という時期も経験しました。長期安定資金の調達が必須です。
小原:短期勝負のネット関連業界とは違い、長期成長モデルの飲食業はエクテイティだけの資本政策は無理があります。資本性ローンによる財務体質強化も検討するとよいでしょう。
小原:資金の次は人材確保が課題ですね。
右田:今年は新卒5人入社します。来年には100名体制の予定です。
小原:店長や工場長の育成システムの構築が重要になります。
右田:サッポロビールから、東京出店を機に人材教育やマニュアル作りの指導を受ける事になりました。
小原:事業計画書を拝見しましたが、緻密に作成されており驚きました。
右田:金融機関にずいぶんと鍛えられました。数値計画だけでなく、日本政策金融公庫は取引先までヒヤリングに行きました。
小原:金融機関や投資家へは数字の積上げだけでなく、ストーリー性をもって説明する事も大切です。
右田:昨年の事業計画発表会は、資料準備も含め、大変勉強になりました。5分、15分、30分と時間に合わせたプレゼン方法も学びました。人前で話をするのは得意ではありませんでしたが、経営者はどんどんプレゼンすべきです。吉本興業の起業家ピッチでは、自己紹介にもっと時間をかけてから事業説明をするように指導されました。
小原:今後はブランド戦略が重要になります。京都「いずう」のように数千円する鯖寿司もあります。
右田:鯖は大衆魚でありながら高級魚であり、付加価値を付けやすい魚です。全国各地で鯖はブランド化されています。
小原:国内だけでなく海外に向けたブランド戦略を考えるべきです。
右田:サバは世界で食べられています。しかし生のサバを食べる文化はありません。3年後にはアメリカ進出したいと思います。
小原:ぜひジャパンブランド「とろ鯖」を海外で勝負してください。
<対談を終えて>
小原:右田社長は、経営の基本である「人」「物」「金」の課題を克服すべく、確実に行動しています。「資金」の問題では、金融機関と直接に折衝し、「設備」としては自社工場を用意し、「人」の問題は大手ビール会社との連携を図っています。今後も海外へのブランド戦略も含め、着実に事業の展開を進められることでしょう。その基礎となる「中期経営計画書」を用意されていることが、期待を膨らませます。
右田:芸人は同じネタをずっと繰り返す事で自分のモノにしていくそうです。事業も同じで、誘惑に負けずに徹底的に突き詰めていく事だと思っています。鯖一本、どこまでマーケットがあるかチャレンジしていきます。穴子やサーモンはその後手掛けていけばよいと考えています。