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「事業を加速させるための外部リソース活用」

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<聞き手(右)>
株式会社AGSコンサルティング
専務取締役 小原 靖明さん
1985年明治大学大学院法学研究科修了。1989年当社入社。2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。2007年合併に伴い、当社取締役就任。2012年3月常務取締役。2014年3月専務取締役(現任)

<話し手(左)>
トビラシステムズ株式会社
代表取締役 明田 篤さん
1980年愛知県豊田市生まれ。豊田北高校卒業。名城大学理工学部中退。2004年岐阜県大垣市にて創業。06年株式会社エーアンドエーテクノロジアを設立。2010年現社名に変更。2012年6月より迷惑電話防止サービス「トビラフォン」開始。

<トビラシステムズ株式会社 会社概要>
設 立 :2006年12月1日
資本金 :65,700千円
株 主 :明田篤、松下智樹、みずほキャピタル
所在地 :愛知県名古屋市中区丸の内1-8-23
事業内容:迷惑電話防止サービス「トビラフォン」企画開発

【2019.4.25】トビラシステムズ株式会社が東証マザーズ市場に上場しました




小原:トビラシステムズ社の事業概要を教えてください。
明田:迷惑電話を未然に防ぐ「トビラフォン」のサービス展開が主力事業です。

小原:迷惑電話の手口が多様化する中、振り込め詐欺、電話勧誘販売、投資詐欺の被害が後を絶ちません。
明田:電話を使った詐欺の被害額は年間300億円以上になり、65%以上の世帯が迷惑電話を受けた経験があると報告されています。私の祖父も迷惑電話詐欺に合い、そこから「トビラフォン」システムを開発し、3年前に特許を取得しました。

小原:貴社の強みは独自に構築した迷惑電話のデータベースです。
明田:警察・自治体からの公的情報と、ユーザーフィードバックやログ状況解析によってフィルタリングされた悪質電話番号(ブラックリスト)が、現在26,000件以上あります。

小原:通信キャリアや大企業とのアライアンス戦略により堅実なビジネスモデルを構築されています。
明田:ワイモバイル(旧・ウィルコム)固定電話・PHS携帯電話向けに、NTT東日本・西日本へひかり電話利用者向けに、迷惑電話データベースの利用ライセンス販売を行っています。米国マカフィー社を通じてはスマートフォン向けアプリも提供しています。すべての電話に迷惑電話防止機能を搭載するべく、協業推進を当社の重要戦略に位置づけています。

小原:IPOを目指すにあたって、最初に取り組むべきは事業計画書の作成です。残念ながら急速に崩壊していく会社もたくさん見てきましたが、やはり事業計画書を丁寧に作成していないことが主因だったように思います。
明田:最近、通信業界で事業戦略の策定から実践まで経験してきた人材を採用することができ、5カ年計画策定や事業計画達成のためのKPI設定に今まさに取り組んでいるところです。

小原:自社に最適な主幹事証券や監査法人を選定する事も株式公開を成功させる大切なポイントです。
明田:これからは外部の専門家のアドバイスも積極的に活用していきたいと思います。

小原:資本政策の考え方も重要です。適切な資金調達額に対して、株価と株主構成をどう組み合わせていくかがポイントです。 明田:現状のキャッシュフローに問題はありませんが、成長スピードを高めるために資金調達を現在計画中です。ただ出資となると経営権に関わるので大きな決断になります。
小原:事業会社やVCを株主に迎えるにあたり、貴社のメリット・デメリットを整理する必要があります。種類株式を活用することで過度な経営関与を抑える手法もあります。

小原:将来ビジョンを教えてください。
明田:私たちの事業ドメインはセキュリティ分野です。デバイスを守るのでなく、人を守るサービスを作りたいと考えています。迷惑電話防止サービスはその第一弾に過ぎません。IT技術を活用して、より安心安全で安価なセキュリティサービスをたくさんの人に提供したい。そのためにもIPOは必ず実現したいと思います。

<対談を終えて>
小原:数多くのベンチャー企業の社長とお会いしてきましたが、明田社長はその中でも特に誠実で、着実にビジネスを進めていることが実感できました。また、ビジネスの根底に流れている思想は、単なる便利さではなく、安心・安全を守るという「哲学」があるように思えました。流行に踊ることなく、確実に事業が推進することを望みます。

明田:ビジネスにおいてスピードは非常に重要なファクターになります。このスピードをさらに加速するため、私たちはVCからの資金調達を計画しています。ただ、将来の経営に関わる後戻りできない決断となるため、信頼できる経験豊富なプロから意見をいただく必要があります。今回の対談では小原様より貴重なご意見をいただく事ができました。IPOは手段であり目的ではありません。ITを活用した安心安全な社会を目指し、引き続き力を尽くしてまいります。

※2015年2月号時点での情報です