「「『鶴岡の奇蹟』を超えるために」」
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特別セミナー「地方創生と大学発バイオベンチャー成功の条件」
パネルディスカッション「『鶴岡の奇蹟』を超えるために」
東洋大学 経営学部 教授
西澤 昭夫 氏
『大学発ベンチャー成功の条件』~「鶴岡の奇蹟」と地域Eco-System~
慶応義塾大学 先端生命科学研究所 教授
曽我 朋義 氏
ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社
代表取締役 菅野 隆二 氏
鶴岡市 企画部政策企画課 課長
髙橋 健彦 氏
日経BP社 特命編集委員
宮田 満 氏
「鶴岡バイオ戦略懇談会とはなんだったのか?」
株式会社バイオフロンティアパートナーズ
代表取締役 大滝 義博 氏
専門性の高い支援がバイオベンチャー成功の鍵
西澤:鶴岡の奇蹟の意義は、日本でもアメリカ型ベンチャー支援発展モデルが実現できた点にある。具体的にいえば、
1.日本の将来を決める先端技術の商業化を大学発ベンチャーが担う成功事例となった。
2.大学発ベンチャーの簇業(=多数の創業)・成長・集積(=クラスタリング)を通じたハイテク産業地域を形成し、地域経済の再生を図る。
3.「地方創生」成功の十分条件(「ブレない一貫性」を持ってリスクを取る)を明らかにした。
4.地域が主導する「地方創生」の成功モデルとなった。
5.東京一極集中の成長に対し、地域主導による発展の可能性を実証した、ことにある。
宮田:ゲノム(遺伝情報)解明の次の課題を追っていた時に、冨田先生に呼ばれて鶴岡へ行って衝撃を受けた。これはポストゲノムに必要なテクノロジーだ。遺伝子のジェノタイプとフェノタイプを網羅的に解析する。尿と血液で代謝活動を解明できる。医薬品も植物も開発できる。それにプラットフォーム型の技術の応用分野は無限にある。目指すはシュミレーションバイオテクノロジーという分野。HMT社はまだまだ1合目。上場は入場料にしかすぎない。
菅野:横河アナリティカルシステムズでは曽我氏の上司だった。当時からテクノロジー的には世界トップになると思っていた。曽我氏から熱心な誘いがあったが年収は外資系会社とは大違い。結局は、日本発技術を世界トップにしてやろうと2008年に社長を引き受けた。スタートはバイオマーカーを見つけて特許化するビジネスモデルだったが5年で資金枯渇していた。就任後にまず取り掛かったのは稼ぐビジネスモデルの構築。解析技術の商品化を行い、大学、医薬品から食品、そして海外へと営業先を拡大して何とか黒字になった。代謝物診断は遺伝子検査と違って定期的測定が必要。メタボローム解析は不滅だ。IPO成功のカギは慶應義塾大学と自治体の10年以上に亘る支援。それがあったので愚直にサイエンスを追求できた。地元金融機関やVCの資金支援も大きかった。経営的には長期の成長エンジンを短期のキャッシュフローを賄うビジネスモデルの開発。それと優秀な管理系の人材。慶應義塾大学もいい人材を出してくれた。技術屋はお金をどんどんお金を使う。IPO後は豊富な資金で設備投資や人材投資を行えるようになった。社会的信用度も高まり全社員がストックオプションを持っている。鶴岡の奇跡第1章は上場。第2章はノーベル賞で第3章はボストン直行便。世界のバイオ集積地と鶴岡との提携。庄内空港は小さいと思ったがボーイング787で実現可能性が高まった。
宮田:バイオ懇談会の今のテーマは幼稚園づくり。技術者が定着するにはインターナショナルに通用する娯楽教育施設が必要。懇談会メンバー3人(冨田、大滝、宮田)で決めた事は市がすぐ実現する。戊申戦争後も庄内藩の秩序伝統が続くのが鶴岡行政。猛烈なスピードで実行するインビジブルなキャピタルがここにはある。
大滝:地方創生の成功事例がなかったが、このように10年間こつこつ積み上げた鶴岡市の試みは他地域のモデルとなる。
宮田:明治以来恵まれていなかった地域が有望。ベンチャー精神は現状満足にはない。
高橋:スパイバー社の関山社長は、独自の志とビジョンが大切だと言っている。鶴岡は続ける事によって偶然が偶然でなくなったと思う。
菅野:自治体の自主性が重要。まずは自分たちの資金から始め国の資金には頼らない事ではないか。
曽我:支援反対派議員に議会でガンガン言われた。そのプレッシャーが研究成果に結びついた。
西澤:本日は皆様ありがとうございました。
2014年11月17日特別セミナー「地方創生と大学発バイオベンチャー成功の条件」 パネルディスカッションより
1.日本の将来を決める先端技術の商業化を大学発ベンチャーが担う成功事例となった。
2.大学発ベンチャーの簇業(=多数の創業)・成長・集積(=クラスタリング)を通じたハイテク産業地域を形成し、地域経済の再生を図る。
3.「地方創生」成功の十分条件(「ブレない一貫性」を持ってリスクを取る)を明らかにした。
4.地域が主導する「地方創生」の成功モデルとなった。
5.東京一極集中の成長に対し、地域主導による発展の可能性を実証した、ことにある。
鶴岡に「奇蹟」をもたらした技術について
曽我:メタボロームはアミノ酸など細胞が生きていくために必要な代謝物。しかし数千種類のヒトの代謝物を網羅的に解析できる技術はなかった。2001年に慶應義塾大学先端生命科学研究所に移って、メタボロームをイオン性物質の質量分析によって一斉測定する方法を開発、2002年に特許が成立した。この技術を使ってメタボローム解析すれば、新薬開発、バイオマーカーによる予防医療、機能性食品などの農業分野など関連分野が一気に広がる。そこにバイオ専門のVCであるバイオフロンティアパートナーズが目をつけてHMT社が設立された。その後に菅野社長が経営に参画して昨年上場した。宮田:ゲノム(遺伝情報)解明の次の課題を追っていた時に、冨田先生に呼ばれて鶴岡へ行って衝撃を受けた。これはポストゲノムに必要なテクノロジーだ。遺伝子のジェノタイプとフェノタイプを網羅的に解析する。尿と血液で代謝活動を解明できる。医薬品も植物も開発できる。それにプラットフォーム型の技術の応用分野は無限にある。目指すはシュミレーションバイオテクノロジーという分野。HMT社はまだまだ1合目。上場は入場料にしかすぎない。
大学発ベンチャーの創業と成長のプロセス
大滝:大学で研究された技術は、データの蓄積がないと実用化はできない。大企業は提携するまでに1、2年かかる。そこで大企業が納得できるまで技術を進化させるためにHMT社を設立した。最初に曽我先生にお会いした時に、メタボライトを測定した膨大なデータをまとめた分厚いファイルを見せられた。これだけの裏付けがあればビジネスにできると思った。1回だけのチャンピオンデータでは論文の作成はできるが事業化には繋がらない。このメタボローム解析技術を発展させれば医療から食品、農業まで広がるビジネスに発展できると思った。菅野:横河アナリティカルシステムズでは曽我氏の上司だった。当時からテクノロジー的には世界トップになると思っていた。曽我氏から熱心な誘いがあったが年収は外資系会社とは大違い。結局は、日本発技術を世界トップにしてやろうと2008年に社長を引き受けた。スタートはバイオマーカーを見つけて特許化するビジネスモデルだったが5年で資金枯渇していた。就任後にまず取り掛かったのは稼ぐビジネスモデルの構築。解析技術の商品化を行い、大学、医薬品から食品、そして海外へと営業先を拡大して何とか黒字になった。代謝物診断は遺伝子検査と違って定期的測定が必要。メタボローム解析は不滅だ。IPO成功のカギは慶應義塾大学と自治体の10年以上に亘る支援。それがあったので愚直にサイエンスを追求できた。地元金融機関やVCの資金支援も大きかった。経営的には長期の成長エンジンを短期のキャッシュフローを賄うビジネスモデルの開発。それと優秀な管理系の人材。慶應義塾大学もいい人材を出してくれた。技術屋はお金をどんどんお金を使う。IPO後は豊富な資金で設備投資や人材投資を行えるようになった。社会的信用度も高まり全社員がストックオプションを持っている。鶴岡の奇跡第1章は上場。第2章はノーベル賞で第3章はボストン直行便。世界のバイオ集積地と鶴岡との提携。庄内空港は小さいと思ったがボーイング787で実現可能性が高まった。
地域主導の「十分条件」
高橋:富塚前市長が平成13年に慶應先端研を誘致してから10年以上バックアップしてきました。それができたのは山形県との二人三脚です。年間7億円の支援予算を折半いただいています。慶應先端研に対する要請は「世界トップの研究拠点になってもらうこと」だけです。議会対応は大変でしたが。世界トップであればこそ人も企業も来る。冨田所長がやりたことを実現できるように環境づくりをしただけです。「これからは知識産業で町づくり。農業も知的産業だ」。富塚前市長のこうした理念は今も脈々と受け継がれています。宮田:バイオ懇談会の今のテーマは幼稚園づくり。技術者が定着するにはインターナショナルに通用する娯楽教育施設が必要。懇談会メンバー3人(冨田、大滝、宮田)で決めた事は市がすぐ実現する。戊申戦争後も庄内藩の秩序伝統が続くのが鶴岡行政。猛烈なスピードで実行するインビジブルなキャピタルがここにはある。
「鶴岡の奇蹟」の再現に向けて
西澤:鶴岡の奇蹟は富塚前市長のリーダーシップが大きかったが、他の地域でもできるはずだと思っている。大滝:地方創生の成功事例がなかったが、このように10年間こつこつ積み上げた鶴岡市の試みは他地域のモデルとなる。
宮田:明治以来恵まれていなかった地域が有望。ベンチャー精神は現状満足にはない。
高橋:スパイバー社の関山社長は、独自の志とビジョンが大切だと言っている。鶴岡は続ける事によって偶然が偶然でなくなったと思う。
菅野:自治体の自主性が重要。まずは自分たちの資金から始め国の資金には頼らない事ではないか。
曽我:支援反対派議員に議会でガンガン言われた。そのプレッシャーが研究成果に結びついた。
西澤:本日は皆様ありがとうございました。
2014年11月17日特別セミナー「地方創生と大学発バイオベンチャー成功の条件」 パネルディスカッションより