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「「資本政策」について(2)」

公開


【小原 靖明】
1985年明治大学大学院法学研究科修了。
1989年当社入社。
2000年IPO支援会社ベックワンソリューション設立、代表取締役就任。
2007年合併に伴い、当社取締役就任。
2012年3月常務取締役就任。
2014年3月専務取締役就任。

【株式会社AGSコンサルティング】
住所:東京都中央区日本橋室町1-7-1 スルガビル 7F
TEL:03-6803-6710
設立:1988年
スタッフ数:157名(公認会計士27名、税理士41名)
事業内容:MS(マネジメント・サービス)、IPO支援、M&A、事業承継 ほか
http://www.agsc.co.jp/


1.資本政策立案における留意事項
 前回は、資本調達の環境変化、資本政策の目的について整理しましたが、今回は資本政策の具体的手法・実務を述べる前に、資本政策における主な留意事項を整理しておきます。
 前回の繰り返しにはなりますが、一般に「資本政策とは」と定義すると、「上場時における株主構成、資本金および発行済株式総数等の目標や、株式数、株式時価総額といった上場基準を達成すべく、事業計画上の資金調達計画とリンクさせながら、ファイナス等の計画を立てること」(『株式上場の実務』みずほ証券業務部)ということになります。これを換言すれば、資本政策の根本は、「上場時」を大前提に「株主構成」「株式」「株式時価総額(企業価値)」「資金調達額」を計画することになるのです。また、これらを計画するにあたっては、特に実務的には、「公開前の規制」、「税務(課税)の問題」等にも留意する必要があります。
 私共はしばしば、資本政策をコンサルティングすることがありますが、経営者には、上場時の会社を徹底的にイメージしてもらい、そこから『逆算』をして現時点での資本政策の判断・決定をしてもらっています。

2.特に重要な具体的留意点
①株主構成(の是正)
 経営権そのもの左右する株主構成については、一般に経営者は比較的慎重に判断しており妥当な株主構成を形成しておりますが、稀に「反市場勢力」等の株主が介入している場合があります。このような場合は上場すら危くなるので特に早期に対応することが肝要となります。
 もちろん「安定株主比率」「取引先・金融機関等の持株比率」「事業承継対策としての持株比率」等は当然考慮すべき事項です。

②株式時価総額
株式時価総額こそ「資本政策は逆算」の典型となります。上場時の売上、利益、資本市場、類似会社等を事業計画において想定し、そこから現時点に戻って企業価値=株式時価総額を算出し、具体的に資本政策として株式の発行・移動等を行うからです。これについては会社の状況が常に現在将来にわたって変動するため、定期的な見直しをしておくことが重要です。

③資金調達(額)
資金調達(額)の決定においては、業績と将来に向けての事業計画の確実性が最も重要視されるのは言うまでもありません。立派な事業計画を立てても足もとの業績で信用を失ったり、業績はしっかり出しているのに事業計画に「成長性」を織り込めていないなどの理由で計画した資金調達ができていないことがままあります。ここについては特に経営者が心して対応することが必要です。

④法令・上場ルール
当然のことながら上場にあたっては、「形式基準」「公開前規制」「有価証券新規発行の届出義務」等の法令・ルールに留意する必要があります。金融商品取引法などの法令や各取引所の定める上場基準、規則については事前に確実に把握しておかなければならないことは言うまでもありません。

⑤税務・課税
資本政策の具体的留意点のなかでも課税の問題は決して小さくありません。創業者利潤実現での課税、上場前における株式の移動、ストックオプション発行・行使における課税の問題等、数々の留意事項が存在します。「課税」に関しては特に上場に慣れた税理士の関与が必要となるでしょう。

「THE INDEPENDENTS」2014年9月号 より