アイキャッチ

「IPOの阻害要因について」

公開


中浜明光公認会計士事務所
中浜 明光 氏

1948年11月生まれ。1971年3月名古屋大学経済学部卒業後、同年4月監査法人丸の内会計事務所(現・有限責任監査法人トーマツ)入所。1974年9月公認会計士登録。1982年6月社員就任。2013年12月同監査法人退所。2014年1月中浜明光公認会計士事務所開設。

私はトーマツで43年間、監査を中心とした業務に従事し昨年リタイアいたしました。
最近20年間はIPOに軸足に置いており、ショートレビュー約200社関与、東海地区で25社のIPOを実現いたしました。トーマツの東海地区IPO社数は84社でしたので、私はその1/3に関わりました。本日は、守秘義務の制約もありますが、IPO延期・中止事例について上場審査基準(実質審査基準)の観点からお話しようと思います。

1.企業の継続性及び収益性
*継続的に事業を営み、かつ、安定的な収益基盤を有していること

上場できなかった会社の90%以上は業績に問題がありました。
・メガFCの独自性。以前は上場できなかった。自社ブランドを立ち上げようと失敗した。
・得意先が1社に依存している。
・2代目社長が先代を乗り越えようとして新事業に失敗したケース。
・最近目立つのは減損会計です。泣きっ面にはち。
・以前のバブル時代は、財テク・不動産投資の失敗が多かった。
・銀行の勧めでデリバティブ失敗して含み損発生

2.企業経営の健全性
*事業を公正かつ忠実に遂行していること

・子会社上場(実質基準)~開示体制が課題。
・親会社等(財産保全会社、ファンド)が自分自身の開示に消極的なケース。
・関連当事者等との取引~最近は少し緩和されてきましたが。

3.企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性
*コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること

・法人税法違反
 a. 重加算税(上場延期にならないケースもあるが影響はある)
 b. 修繕費、広告宣伝費の経費繰上げ計上。
 c. オーナーの個人費用を会社が負担しているケース。
 d. 外注先へ高く発注して裏で返金するバックリベート問題
・見せ金増資~会社から借入して社長が払込したケース
・金融商品取引法違反~有価証券届出書提出漏れ。特に通算規定理解していないース。
・労働基準法~労働基準監督署の是正勧告、サービス残業
・談合~公正取引委員会課徴金

4.企業内容等の開示の適正性
*企業内容等の開示を適正に行える状況にあること

・5年間の財務諸表等の開示
・循環取引、粉飾決算の発覚。
・上場会社M&Aによる会計基準不統一
・収益認識基準
・特別償却・圧縮記帳
・原価計算制度
・新会計基準、過去のデータ
・実地棚卸立会

5.その他公益又は投資家保護の観点から当取引所が必要と認める事項

・反社会的勢力(役員、株主、取引先)との関係
・係争・紛争等 自己株式の買い取り価格
・風営法関連~Pホール、アダルトグッズ関連。
・経営者の誠実性*最近は監査契約の段階でも経営姿勢を重視しています。