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「『くまモン』にみるブランド戦略」

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熊本県商工観光労働部
くまもとブランド推進課長 成尾 雅貴 氏

1982年早稲田大学卒業後、熊本県庁入庁
2008年4月から2年間大阪事務所勤務の後、くまもとブランド推進課へ。 くまモンと共に「くまもとサプライズ」を展開し、蒲島知事が進める「県民の総幸福量の最大化」の一翼を担う。
2013年4月から現職。『くまモンの秘密』(幻冬舎新書)を執筆。

―熊本サプライズから生まれた「くまモン」
地元色を出さない「くまモン」はあらゆるものに親和する類まれなキャラクターです。もともとは、2011年3月の九州新幹線全線開業をきっかけとする「くまもとサプライズPRキャラクター」として生まれました。新幹線元年戦略アドバイザーの小山薫堂氏がイラストレイターの水野学氏に依頼する中で生まれた「おまけ」です。「ゆるキャラグランプリ2011グランプリ獲得」以来、全国的な人気者になりました。ツイッターでは、キャラクターでベスト3位、米国「THEWALL STREETJOURNAL」やAERA「現代の肖像」に取り上げられ、日本外国特派員協会をはじめとする各方面での講演など今も続いています。

―なぜ、くまモンが人気者になれたのか?
蒲島知事は常に「皿を割れ!」と言います。失敗を恐れずに果敢に挑戦しろ、と。このようにトップの理解と支援がまずは大きかったと思います。そしてくまモンの弛まぬ努力。爽快な動き・豊かな表現力を次第に身につけてきました。さらに、新聞テレビだけでなくインターネットなど新旧メディアを最大限に活用しています。最後にいつもサプライズを忘れない!という行動基本。バンジージャンプ、温泉、マラソンなどくまモンはあらゆる事にチャレンジしてきました。具体的な事例をいくつかお話します。

1.神出鬼没
九州新幹線の終着地である大阪(KANSAI)から「熊本の認知度」を向上させるために、2010年、まず「くまモンの話題化」をしかけました。具体的には、大阪各所へ熊本色を隠した神出鬼没に始まり、ユーチューブでのストーリー性のある話題の提供、ネット系媒体(SNS)の活用した双方向コミュニケーション、JRジャック、吉本新喜劇への出演などです。

2.営業部長活動
2011年にくまモンを営業部長に抜擢し、くまもとを売る活動を行いました。全国規模の食品メーカーに県産の食材を営業する場面を収録し、新聞広告やユーチューブにアップしました。初営業が商品化に結びつき、UHA味覚糖から熊本八代産晩白柚ぷっちょが全国発売され、晩白柚の全国的なPRが実現、売り上げにも貢献しました。

3.くまモン著作権利用料の無料化
原作者の水野学氏からくまモンの著作権を買い取り、2010年12月24日から利用許諾手続きを開始しました。熊本県や熊本県産品のPR・販促につながるものについては、県外事業者にも開放したことから、全国にくまモン関連グッズが広がり人気に拍車をかけました。

―くまモンの経済波及効果(県内のみ)
日銀の調査によると、平成23年11月から平成25年10月にくまモンが熊本県にもたらした経済効果(関連利用商品売上及び観光客増加)は1,224億円です。大河ドラマの効果が平均値で約200億円と言われていますのでこれは大変な数字です。

―経済面以外での大きな効果
くまモンは、蒲島県政が進める「県民の幸福量の最大化」にも大きな貢献をしています。海外のクオリティペーパーにくまモンが取り上げられました。福祉や登下校の場でも活躍しています。非常勤職員だったくまモンは、今や営業部長へ出世しました。NHK紅白歌合戦出場の夢も果たしました。このように経済面だけでなく、品格と誇り、安全と安心、夢という幸福量の最大化の4つの要因に大きな貢献をしています。
今後も県民の幸せの象徴として100年後も愛されるキャラクターとなるよう努力してまいりたいと思います。

※全文は「THE INDEPENDENTS」2014年4月号 - p13にてご覧いただけます