「大学発モノづくりベンチャー」
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イービーエム株式会社
代表取締役 朴 栄光さん
1981年 生まれ 国籍:日本
2000年 芝浦工業大学高等学校卒業
2004年 芝浦工業大学システム工学部卒業
2006年 早稲田大学理工学研究科修士課程修了
2011年 早稲田大学理工学研究科博士(工学)取得
2006年 イービーエム創業、代表取締役就任(現職)
2008年 University of Pittsburgh Medical Center, Heart,Lung and Esophageal Surgery Institute客員研究員
2010年 早稲田大学 先進理工学部 共同先端生命医科学専攻 助手(現職)
2012年 米国ヒューストン メソジスト病院 心臓血管外科 客員研究員 就任(現職)
2012年 日本Advanced Heart & Vascular Surgery / OPCAB研究会(冠動脈バイパス手術の専門研究会)特別幹事就任(現職)
所在地:東京都大田区大森南4-6-15 テクノFRONT森ヶ崎508号
設 立:2006年8月9日 資本金:4,000千円
事業内容:医療用機器,医薬品の研究開発,製造販売および輸出入
http://www.ebm.vc/
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―早稲田大学発ベンチャーでありながら、大田区で起業しました私は修士過程から博士号を取得した現在に至るまでの8年間、早稲田大学梅津研究室で、外科手術訓練シミュレータの開発と外科技能の定量化に関する研究をしてきました。最先端の医療器具開発には臨床現場の理解と実践的ものづくりのノウハウが必要です。そこで2006年に大学発学生モノづくりベンチャーとして、町工場がひしめく東京都大田区にて創業しました。
―事業内容を教えてください
冠動脈バイパス手術訓練装置「YOUCAN(ヨウカン)」と「BEAT」の開発および自社での製造販売です。すでに国内100機関、海外では米国、中国、韓国、豪州、ドイツに納品実績を持ちます。血管の機械的特性を定量的に分析し、トレーニングに最適なモデルとして、「いつでも、どこでも、何度でも」訓練できる環境を実現し、心臓外科医の技術習熟の加速度的向上に貢献しています。
―なぜ手術訓練装置が必要なのですか
冠動脈バイパス手術は太さ2mmの血管を糸で吻合しますが、その技術を習得するまでには10年 かかると言われています。従来は豚の解凍した心臓を使って訓練しており供給が限られていました。先日、天皇陛下が心臓の冠動脈バイパス手術を行われましたが、非常に難易度の高い手術です。ところが若手医師が技術を学ぶ機会が少ないのが現状です。
―ニッチに見えますが市場規模はどれくらいですか
日本では人工心肺を使わないオフポンプと呼ばれる冠動脈バイパス手術の割合は6割で世界トップですが、海外ではまだ15%ほどです。海外でも、オフポンプ手術のニーズは高いのですが、トレーニング手段が整備されておりません。よって、米国やEUのコア拠点と連携していくことで、確かなマーケットを開拓することが可能です。この装置が普及することで、「外科医はより安心して、患者にはより安全な心臓外科手術」を提供できるようになります。
―プロの研究者・プロの起業家を目指しています
現在は早稲田大学と東京女子医科大学が共同で設立した「先端生命医科学センター(TWIns:ツインズ)」にて助手としても働いています。ここでは最先端の医療情報が手に入り、優秀な人材にも出会えます。二束のわらじで走り続けることは大変ではありますが、メリットも多くあり、大学も応援してくれています
―開発した知財はすべて大学が所有するのですか
私は早稲田大学の教員でもありますので、大学での研究に関係する発明は、職務発明になります。まずは大学に対して特許申請の届出をしますが、大学側が特許出願しなければ自社で出願します。また大学が特許出願してたとしても、出願後に大学側からライセンスしてもらったり、特許自体を購入したりと色々とオプションがあります。
―5年前の第55回事業計画発表会で発表されてからの事業進捗を教えて下さい
当時の事業計画通りに基本的には進んでいます。現在、売上1億1000万円、経常利益は2000万円、創業以来6期間黒字です。「YOUCAN」は単価@29,800円から(10個)の消耗品で、安定した収益商品となりました。手術トレーニング器具開発や世界展開を通じて得られる医療現場の深い情報をベースに新たなシミュレータを開発し、医療機器メーカーに提供する事業も大きなウェイトを占めています。
―日本のモノづくりは厳しい現状が続いていますが、課題はどこあると思いますか
下請け型中小企業は品質管理を大手企業の購買担当者に任せています。自社で品質管理できなければ少なくとも医療機器開発にはチャレンジできません。10ミクロン単位の加工精度は1個は作れても、10個以上となると作れません。今年のダボス会議に招聘され気づいた事は、日本は優れた技術は持っていても有効活用されてない点です。良いプロデューサーがいれば日本のモノづくりは必ずre-buildできます。
―今後の展開について教えてください
今期からは第2創業期と位置づけ、海外に向けた展開をしていきます。2012年6月からは心臓外科で有名なThe Methodist Hospital DeBakey Heart and Vascular Centerの客員研究員として、ヒューストンを拠点に日本発バイパス手術訓練カリキュラムの世界展開に挑んでいます。私は売上規模の拡大を目指すのではなく、創業の精神を大切にしたいと思っています。医工学連携、中小企業連携、産学連携等、異分野のエキスパートたちと「チーム」を組むことで、外科領域の発展に貢献していき、尊敬されるモノづくり企業になりたいと思います。
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※全文は「THE INDEPENDENTS」2013年1月号 - p8-9にてご覧いただけます