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「名城大学発ベンチャー」

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株式会社名城ナノカーボン
代表取締役 橋本 剛さん

1973年 愛知県名古屋市生まれ
1992年 東海高校 卒業
1997年 早稲田大学商学部 卒業
1997年 三菱UFJ信託銀行 入社
2001年 株式会社スリーサンズ 入社
2003年 名城大学理工学部 安藤研究室 研究員
2005年 当社設立、代表取締役就任

所在地:愛知県名古屋市中区丸の内3-4-10大津橋ビル4F
TEL:052-971-2408 設立:2005年4月 資本金:39,800千円
事業内容:カーボンナノチューブの製造販売・用途開発
http://www.meijo-nano.com/







―創業の経緯を教えて下さい
カーボンナノチューブ(CNT)は1991年に飯島澄男博士(現名城大学教授)が発見したナノテク素材です。設立メンバーの安藤義則教授(現名城大学理学部長)は、長年CNT作製技術を研究してきました。当時研究室にいた私は、その技術を事業化して新しい製品市場を創りたいと思い起業しました。

―CNTの市場用途は
主にエネルギーデバイス向け(リチウムイオン電池添加剤、キャパシター電極)です。他にはスポーツ用品、航空機部材向けの軽量強度部材もあります。将来はタッチパネル、半導体素子、太陽電池、バイオ向けに開発が期待されています。

―CNTには単層(SWNT)と多層(MWNT)の2種類あります
MWNTは量産化でコストも下がり、市場規模は100億円を超えました。トップの昭和電工には100トンの生産力があり、応用開発も進んでいます。SWNTは、高性能ですが高価格のため、現在は研究開発用途のみです。

―貴社のポジションを教えて下さい
当社は国内唯一の単層カーボンナノチューブ(SWNT)製造販売会社です。分離したSWNTの販売や、グラフェンシートを提供できるのは世界でも当社だけです。取引先は素材メーカーを中心に200社あり、SWNT素材提供だけでなく、顧客要望に応じて加工提供できるのが強みです。ナノ材料には必須の分散技術をコアに、MWNT向けに分散液も提供しています。

―製造方法に特徴があります
当社はアーク放電法をよって、結晶性の高いCNTを作製しています。鉛筆の芯のような電極を釜の中でスパークさせ、その熱で固体カーボンを蒸発し冷却します。大きな温度差の中で純度の高い製品を作ります。MWNTでは一般的なCVD法(電気炉で蒸す)では、量産向きですが純度が落ちます。

―粗利が80%と非常に高いですね
原料のカーボンはキロ1万円ですが、販売価格はグラム1万円?30万円です。製造経費は、人件費、電力費程度です。現在は瀬戸市の窯業工場の一角を借りて6名体制で生産しています。生産能力には余裕がありますが、量産化には3億円程度の設備投資が必要です。

―特許は名城大学が保有しているのですか
特許10件と出願中10件が当社に関わる知的財産です。製造に関する特許2件は自社単独申請です。産総研、名古屋大学、北海道大学などとも共同出願をしています。

―今後の経営計画はどのように考えていますか
短期的にはMWNT分散液を自社量産化、もしくは顧客ライセンス生産により、年商5億円を計画しています。その後は低コスト量産化で、グラム100円が実現できればSWNT市場は急拡大すると考えています。中長期的には、SWNT中間製品(分散液、コーティングシート)開発で年商100億円が目標です。さらにはSWNTの特性を活かした用途開発も取り組みたいと思います。

―橋本社長のバックグランドは文系です
もともと大学時代から起業志向で、一旦銀行に就職しました。その後、ナノテクに将来性と事業性を感じ、社会人大学院で安藤教授の研究員を3年間勤め起業しました。CNTを分析する人は沢山いますが、実際作っている人は自分を含め少数です。

―株式公開についての考えを教えて下さい
VCからの出資を受けた段階でパブリックカンパニーの意識はあります。当社の規模で上場できるのであれば東証プロ市場も選択肢のひとつです。

※全文は「THE INDEPENDENTS」2012年9月号 - p4-5にてご覧いただけます