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「第85回事業計画発表会」

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■ 第一部 講演 「ベンチャー企業のための知財戦略」
鮫島 正洋(内田・鮫島法律事務所 代表弁護士)

―テクノロジー・カンパニーが顧客層
内田・鮫島法律事務所の顧客8割が技術系・IT系の中堅中小・ベンチャー企業です。当事務所にはIT・エレクトロニクス・化学工学・材料工学・バイオ工学などのテクノロジーに関する専門知識を有する弁護士が、法務・技術の各領域の専門性に基づいてビジネスゴールを勘案したソリューションを提供しています。

―経営戦略の一翼を担う知財戦略
知財戦略とは「知財を取得・活用することによって、事業競争力を向上させる為の戦略」です。
(α)技術開発をマーケティング理論に基づいて行っているか、(β)技術開発の成果を知財化しているか、(γ)取得した知財を活用できているか、まで一貫性を持つことが知財戦略のポイントとなります。中でも「市場が大きくかつ特許を取る余地が残っているか」など、知財マーケティングが特に重要です。最近は特許DBを活用するためのツールが急激に発展してきました。特許庁が発行する特許開発動向の調査レポートも有用です。これらによって研究開発テーマを予め選定することM&A先の探索などが容易になってきています。

最後に、ベンチャー業界にとって重要な法改正を2点紹介したいと思います。

1.売れ行きを見てから特許出願が可能に(特許法30条の改正)
学会発表や販売活動等で公知になった後には特許出願ができないのが原則でしたが、「特許を受ける権利を有する者のみの行為に起因して」公知になった日から6ヶ月以内に出願ができるようになりました。これにより製品を発売して「売れ行きが良さそうだから特許出願をする」という作戦が採れるようになります。

2.ライセンシービジネスへの投資に追い風(特許法第99条の改正)
ベンチャー企業においては第三者からの特許ライセンスをコアにしたビジネス基盤は法的に脆いものと見られていました。ライセンス権を取得しても、特許権者が無断で譲渡した場合、第三者には対抗できないという問題があったからです。しかし今回の改正ではライセンスを受けていることを証明する事によって対抗できるようになります(施行開始は来年4月1日予定)。つまりライセンシービジネスであっても、VCなどから投資を受けられる可能性が高まり、また上場審査上も問題ないという極めて重要な改正であると言えるでしょう。

【質問】月額顧問料について
ベンチャー企業の場合、月額顧問料が10万円を超えると厳しいようです。当事務所では、企業が成長して株式公開できる規模になるまでは最低限の報酬額で対応させて頂いております。私たちにとっては、面白い技術や経営者に出会うことが、最高のモチベーションとなります。


≪特許法30条の改正―売れ行きを見てから特許出願が可能に!≫
/article/item000360

≪特許法第99条の改正―ライセンシービジネスへの投資に追い風≫
/article/item000365


■ 第二部 事業計画発表

1.株式会社 創業(代表取締役社長 丹後 洋
丹後社長より、これまで手掛けてきたハイビジョン映像IP伝送事業の実績および今後のクラウド診断サービス事業の展望を発表頂いた後、手塚CTOより同社製品について解説頂きました。

≪松田修一氏のコメント≫
放送業界に対して提供してきたリアルタイムかつハイビジョン伝送技術を、どう横展開させるかというチャレンジをされている。日本の技術企業は、その弾力性が勝負になると見ている。それを踏まえ、今後医療分野で展開される際に、どうアライアンスを組んでいくかについて十分注意してもらいたい。特許管理など、最終的にきちんと自社が儲ける立ち位置にいること、そして大企業が数多く参入する中で、取り込まれてしまってもやっていけるオープンイノベーション戦略を構築することが重要。

2.株式会社池山メディカルジャパン(代表取締役社長 池山 紀之
池山社長より、オーダーメイド人工乳房の製作手順などについて発表頂きました。懇親会時には、実際の製品サンプルを用意し、他社製品との違いについて参加者と意見交換をされました。

≪松田修一氏のコメント≫
人工乳房製作において、IT技術と連携してシステム化する必要がある。社長の職人芸で終わらずに、多くの人に貢献できる組織にしなければならない。スタッフの養成方法や資金調達のストーリーも、そこから見えてくるだろう。また、一方で乳房を切除せずにがん治療を願う女性も多く、そのための治療法が確立されている現実も認識すべき。海外市場調査など、課題はたくさんあるが、社会性があり面白い事業だと思うので、頑張ってもらいたい。


※次回第86回事業計画発表会は11月17日を予定しております。<詳細はこちら>