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「広告であることを偽ること~ステルスマーケティングのポイント」

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弁護士法人 内田・鮫島法律事務所
弁護士 伊藤 雅浩 氏

1996年名古屋大学大学院工学研究科情報工学専攻博士前期課程修了後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)入社、業務改革・情報システム開発プロジェクトに従事。2000年06月スカイライトコンサルティング株式会社設立に参画、主に情報システム企画・導入プロジェクトに従事。2007年03月一橋大学法科大学院卒業。2007年09月司法試験合格/11月 司法研修所入所(新61期)。2008年12月弁護士登録。2009年01月内田・鮫島法律事務所入所。

【弁護士法人 内田・鮫島法律事務所】 http://www.uslf.jp/

 本年1月に,飲食店の大手ランキングサイト「食べログ」で,飲食店に好意的な評価を投稿して,ランキングを上げる見返りとして報酬を受け取っていた業者が多数いたという報道がありました。このニュース以降,ステルスマーケティング(通称「ステマ」)という用語をよく見かけます。ステマの定義は様々ですが,ここでは「消費者・利用者に広告であることを気づかれないように行う宣伝行為」とします。

 ステマが問題視されているのは,宣伝を行う者が店舗などとは無関係の第三者を「装っている」ことによって,消費者を惑わせるというところにあると思われます。しかし,我が国の法制度上は,今のところこのような「装っている」行為そのものに対する規制は存在しません。ただし,法務的には以下の2点に留意する必要があります。

◎ 表示内容の問題
 一般の消費者が任意で書き込んだ内容が間違っていたとしても店舗の責任は生じません。しかし,店舗の指示によって行われた投稿は,第三者を装った投稿であっても,実質的に見て店舗の広告宣伝行為といえますから,景品表示法の規制対象となります。景品表示法では,「不当な表示の禁止」という規定があります。たとえば,「当店の鶏料理はすべて○△地鶏を使用!」と書かれていながら,実際には鶏料理には地鶏を使用していなかった,という場合など,実際のサービスより著しく優良であると消費者を誤認させる広告表示を禁止しています。この規定に違反すると,行政庁から不当表示を差し止めるなどの措置命令が出されることがあります。インターネットを利用した広告規制に関する詳細は,消費者庁が公表した留意事項が参考になります。

http://www.caa.go.jp/representation/pdf/111028premiums_1_1.pdf
※「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の公表について(消費者庁)

 また,ステマを請け負った事業者は,自己の業務の広告を行ったわけではないので,景品表示法の直接の規制対象とはなりません。しかし,近時の裁判例では,「積極的に広告表示の内容を決定した者」も「不当表示を行った者」として認められた例もあり,規制が及ぶ可能性があります。

◎ サイト利用規約違反の問題
 実際に店舗でサービスを受けてもいないのに業者を使って投稿をさせる行為は,口コミサイトの利用規約に違反することが多いでしょう。例えば,食べログの利用規約,ガイドラインでも「店舗関係者の方が関係店舗に口コミを投稿することを禁止しています」と明記されています。意図的に利用規約違反行為を行えば,ステマを請け負った事業者,依頼した店舗ともに,場合により当該サイト運営者から損害賠償請求等がなされる可能性があります。


【コラム】不利な情報も伝える
 紛争の相談に来られる依頼者の多くは,自分に都合の悪い事実はお話しされません。しかし,依頼者の話のみを聞いて訴えていると,相手方から思わぬ反論を返され,返り討ちにあってしまうこともあり得ます。弁護士も,「不利なことでも何でも話してください」というだけではなく,想像力を働かせて「おっしゃることが正しければ,こういう証拠があるはずですが?」などと突っ込んで確認することが求められます。私の場合,土地勘のあるシステム開発関連の紛争では,あるべきドキュメントがあるか,手段を踏んでいるかという観点で,時にはいじわるだと思われる質問をするように心がけています。当事務所では,ビジネスや技術の経験を有する弁護士を揃えることによって,起業家の目線に近いサービスを提供しています。ぜひともお試しください。

<内田・鮫島法律事務所 公式サイト> http://www.uslf.jp/

※「THE INDEPENDENTS」2012年4月号 - p30より