「株価ギャップを埋める」
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株式会社インディペンデンツ
代表取締役 國本 行彦 氏
1960年東京都豊島区出身。84年早稲田大学法学部卒業後、日本合同ファイナンス(現・JAFCO)入社。2006年インディペンデンツ設立、代表取締役就任。
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エクイティの世界では、株価は永遠のテーマです。株価が市場によって形成される時、投資家は割安だと思えば買い、割高であれば売ります。
ベンチャー企業の場合は、決算書には表れない成長性をどう評価するかがポイントです。
しかも大概は市場性も情報量も少なく株価に客観性はありません。
一方で起業家は自分の事業成功に強い信念と確信を持っていますので、
投資家と起業家との株価ギャップは深くなりがちです。
VC(ベンチャーキャピタル)には、目に見えない企業価値を誰よりも早く評価できるか、
いわゆる目利き力が求められます。
しかし3年でのIPOを求めるVCと起業家の間には大きな時間ギャップがあります。
VCが探しているのは、極めて高い成長率を持つES(アーリーステージ)企業か、
IPOが見込めるLS(レーターステージ)企業など、短期間での資金回収を見込める先です。
最近の投資対象先は変化率の高いIT関連か、事業が安定しているサービス業に集中しがちです。
ただESのIT関連企業は設備投資額が少なく、LSのサービス業は金融機関から有利な条件で
借入できるので、投資チャンスは少なくなっています。
一方で研究開発や製品開発に長い時間を必要とするテクノロジー系およびサイエンス系の
ベンチャー企業はVCから敬遠されがちです。
資金調達額も多額となるので、ベンチャー企業にとって株価評価はさらに割安に感じます。
特に創業者である起業家にとっては、経営支配権を維持するためにも、低い(と感じる)株価は
容認できません。
投資家と起業家では、事業の魅力や成長性に対する理解度について、
大きな情報ギャップがあります。
ベンチャー企業にとっては、FSに多大な労力や時間を費やしてしまい、
結果的に事業チャンスを逃しかねません。
株価ギャップは永遠にあります。したがって溝を埋める工夫と妥協点が必要です。
種類株の活用によるデッド型ファイナンスで投資家の利回りを確保する方法、
株主割当増資(ライツイシュー)によって既存株主の希薄化を防ぎながら資金調達をする方法、
行使価格調整型の新株予約権など、株価ギャップを埋める手法はいくつも考えられます。
株価そのもの自体は妥協の賜物です。
起業家と投資家にとっては、時間ギャップや情報ギャップより、
株価ギャップを埋める事の方がはるかに簡単です。
※「THE INDEPENDENTS」2012年2月号より