「中国不動産高騰にこんなカラクリが・・・」
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ヴェリタスアカウンティングファーム
代表 林 高史 氏
1990年名古屋大学経済学部卒業後、あずさ監査法人、ジャフコ(ジャフココンサルティング)を経て、2005年林公認会計士事務所開設。同年北京大学へ留学。08年大連市に事務所開設、ヴェリタスアカウンティングファームに統合。
【ヴェリタスアカウンティングファーム】 http://veritas-af.com/
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皆様こんにちは、林です。日本も寒いですが中国も強烈な寒さです。大連でも連日氷点下十数度まで下がり正に冷凍庫の中です。加えて大連は海岸沿いにあるため海風が強いのも特徴でこれが一層堪えます。ただ建物の中は政府が供給する温水ヒーター(暖気機といいます。24時間稼動しています)がありますので至って快適ですから我々のようなデスクワーク職にとっては何ら問題ありません。さて、このコラムの第1回で大連付近の不動産の高騰ぶりをご紹介いたしましたが、最近の個人向け融資の厳格化等の金融引締めにもかかわらず相変わらず不動産はあがり続けています。実際に私もここ1年程度大連付近の不動産価格の動向を継続的にウォッチしているのですが、海岸線等人気の高いところでは1年で20%程度は確実に値上がりしています。また購入にあたって銀行借入金を利用せず一括払い(一次性付銭といいます)の購入者もかなりいて本当に驚きです。銀行借入金の引締めをしてもなかなか効果がでないわけですよね。また東北地区では高層マンションの10階?20階の中住戸が人気です。なぜなら1.中国は窃盗が多い。2.東北地区は冬が厳しく窓が多い端住戸は暖房費がかさみ敬遠する。3.空気が汚いので出来るだけ高層で暮らしたい。4.ただ、良くある停電等でエレベータが止まっても何とか歩いて行動できる といった条件を満たしているからです。新築マンションでもそのあたりが最初に埋まり、最下層は売れ残っているケースが多く、人気の階層の価格がキャンセル待ち等で高止まりしている傾向もあります。
不動産価格が高止まりしている原因として最近特に目立ってきているのは、国営企業の不動産買占めです。中国ではインフラ周りはまだ国営企業が多くその大半は巨大な企業集団です。従業員数も数万?数十万にのぼります。国営企業はこれら従業員の福利厚生として不動産を購入します。購入時の価格には余り関心がありません。それよりも従業員の数だけ用意することが必要なのです。購入後これらの不動産を従業員に低廉若しくは無償で譲渡します。この現象は中国沿岸部各地に見られ「灰色の給料」(灰色收入)と呼ばれて問題視されています。個人の収入が余り高くなくても相当なマンションに居住できるのにはこんなカラクリもあったのですね。
中国人が不動産(居住用ということですが)を所有したい欲求がこれほど高いのには、雇用が安定しない社会的背景が影響しています。つまり失業すれば賃借料を払えなくなり住む場所を失う、こんなことがいつ起きても不思議ではない状況におかれている一般のサラリーマンにとって雨風を凌げる場所の確保はとても大切なことなのです。気候の厳しい東北地区にあってはこの傾向はさらに強いのかもしれません。(2011年1月28日)