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「中国現地工場の悩み」

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ヴェリタスアカウンティングファーム
代表 林 高史 氏

1990年名古屋大学経済学部卒業後、あずさ監査法人、ジャフコ(ジャフココンサルティング)を経て、2005年林公認会計士事務所開設。同年北京大学へ留学。08年大連市に事務所開設、ヴェリタスアカウンティングファームに統合。

【ヴェリタスアカウンティングファーム】 http://veritas-af.com/

皆様こんにちは、林です。現在山東省の青島に来ております。青島といえば「青島ビール」が有名ですよね。この「青島ビール」ですが、最近になってニセモノがかなり出回ってまいりました。コップに注いでみるとニセモノは明らかに色が薄く、飲んでいるうちに頭が痛くなってくることもあります。流石にこれまで青島ではお目にかかることはありませんでしたが、中国が誇る「ニセモノ文化」が中国を代表する飲料にまで及ぶとは考えものですね。

さて、1980年代以降日本のメーカー企業は中国の安い労働力を求めて各地に工場を建設し運営してきたことは周知の事実です。ところが最近では、人民元の切り上げや最低賃金の引き上げ等が相次ぎ、決して安いといえる水準ではなくなってまいりました。沿岸部各地で起こっている賃上げ要求は日系企業を直撃しています。
半年ほど前に起こった日系企業での中国人労働者のストライキは記憶に新しいですが、実は彼らの望みは賃上げだけではありません。他にも公平な人事制度の構築や寮、食事メニューの改善、従業員交流会の開催など日本人と同様の欲求があり、これらに真摯に応えていく姿勢が日本企業に求められています。

しかし上記の対応を一通り行ってきたにもかかわらず、工場の運営に必要な人数が確保できずに困っている日系企業があります。この会社工場は経済開発区にあり、服飾関係の製造業を営んでいて、周りの外資系企業と同等の賃金設定をし、寮、食事などに関する福利厚生も充実させているにもかかわらず毎年、春節(旧正月)、国慶節の長期休暇を過ぎると出稼ぎ労働者が戻ってこない現象が続いているのです。

原因は外資系企業の内陸への進出に伴い、出稼ぎ労働者の地元にも少しずつ従事できる仕事が出てきていて、賃金水準も全国的な最低賃金の引き上げ等から以前ほど沿岸部と内陸部とでの差がなくなってきていることによると思われます。また携帯端末やインターネットの普及で電子商取引が急速に増えてきており、若年層の間では「何も製造ラインで1日中拘束されなくても・・・」と製造業を避ける動きがあるのも事実です。さらに中国人の企業への帰属意識が薄いことも影響しているものと思われます。

上記服飾メーカーでは日本等海外からの注文は潤沢なのに従業員が安定して確保できていないことで生産計画に狂いが生じており、これが結果的に業績に響くことに現地総経理は懸念を抱いています。

従業員に関連して日系企業、特にメーカー企業の抱える問題解決は
一筋縄には行かないようです。

※「THE INDEPENDENTS」2011年1月号 - p17より