「昨年のIPOを振り返って」
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元野村證券株式会社
公開引受部 出原 敏 氏
野村證券で長い間IPO業務に係わる。2008年定年退職し、現在は非常勤監査役及びIPOコンサルティング等の業務に従事。
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昨年は政治がダッチロールを繰り返す中、経済は前半比較的順調な回復を見せていました。しかし、夏の暑さとともに円高となり、再び先の見えない状況に陥ってしまいました。今年こそは活力のある政治・経済となってほしいものです。さて、昨年のIPOは件数では22社となり一昨年より3社増加したとはいえ、一昨年に続き低調に終わりました。しかし、調達額では1兆3500億円となり大幅な増額となりました。
昨年のIPOで特筆すべきことは、まず大型IPOがあったことでしょう。3月にはPaltacが約400億円、4月には第一生命が約1兆円、12月になってポーラ・オルビスホールディングスが約360億円、大塚ホールディングスが約2,000億円と大型の調達が続きました。一昨年の調達額が1社最大で一建設の115億円であり、合計でも530億円でしたから、昨年が如何に大きな調達額だったかが分かります。ちなみに第一生命は世界でもGMの1.9兆円に次ぐ世界第4位でした(1位2位は中国の銀行)。次に公開価格割れが相次いだことです。22社の内11社が初値で公開価格を割り、18社が現値で公開価格を下回っています。第一生命はIPO後しばらく公開価格を上回りましたが、2カ月余りで公開価格割れに陥り、以後株価は低迷が続いています(12月22日現在)。その他の大型IPOも不調に終わってしまったのは憂慮すべき事態です。株式市場の不調もありましたが、公開価格に割安感があるにも拘わらずこういう事態に陥ったのは、IPOマーケットでの調達額が多すぎたのかもしれません。加えて、エフオーアイ社がIPO後わずか6カ月後の5月に粉飾虚偽記載で倒産したことも、IPOマーケットへの不信感を助長することになりました。
多くのIPOが不調に終わる中、わずかに新興市場のボルテージ、イー・ガーディアン等ITコンテンツ系は健闘しました。
また、最近は主幹事が少数の証券会社に集中する傾向が見られます。昨年、日系証券会社で主幹事となったのは野村、みずほ、大和のわずかに3社でした。中でも野村証券の主幹事案件が抜きん出て多く、70%を超えるシェアーとなっています。日本のIPO業務は世界的に見ても証券会社が係わる部分が多く、法人から引受、審査、販売、リサーチ等重層的に関係者を抱えなければ主幹事を務められないシステムになっています。したがって、IPOが減って来ると多くの証券会社ではIPO業務は赤字に陥り、業務を縮小あるいは撤退せざるを得ないのが現状です(米国では証券会社は引受=販売が中心で、日本に比べ軽装備となっています)。この高コストシステムは改善の余地があるように思われます。
ベンチャー企業のIPOは日本経済復活のバロメーターとなります。昨年暮れに金融庁・東証から相次いで、これまでの規制一辺倒から緩和を含めた上場制度変更の提案がなされました。過去、上場制度は規制と緩和の繰り返しでしたから、緩和への方向転換により、今年はIPO復活のターニングポイントになるはずです。期待しましょう。
一昨年は民主党政権となり大いに期待が集まりましたが、景気回復は遅々として進まない上に歳入不足は一層深刻となり、失われた時代となりかねません。長い議員生活にも拘わらず勉強不足が露呈、今になってもっと勉強しておけばよかったと後悔しきりの仮免明け総理が、独善暴走の決断をしないことを祈るばかりです。
※「THE INDEPENDENTS」2011年1月号 - p13より