看護科学で「外出」を健康長寿につなげる
「家の中で、ただ生きているしかない」
北海道大学発・札幌市立大学発の認定スタートアップ、株式会社かんごぷらす。創業の原点は、2014年に札幌市南区で行った高齢者の実態調査です。北海道大学病院の看護師を経て札幌市立大学で研究に携わった中田氏は、病気や身体機能の低下だけでなく、雪道や坂道、公共交通、経済的負担によって外出を諦める高齢者の姿を目の当たりにしました。「家の中で、ただ生きているしかない」。移動手段だけでは解決できない。外出する「安心」と「目的」までつくる必要があると考え、研究成果を社会実装するため2023年に創業しました。

「気づく」と「外へ連れ出す」を一つの仕組みに
同社は外出を健康維持につながる「健康行動」と捉えます。看護師が健康相談や測定を行う「まちの保健室」で支援が必要な人に気づき、看護師が関わるAIオンデマンド交通「おでかけぷらす」で外出を支援。将来はアプリに外出PHRや健康データを蓄積し、看護師AIが外出減少の兆候を捉えて早期支援につなげます。

実証から「事業」へ
札幌市内での実証やイオン北海道との共同事業では、「まちの保健室」の満足度90.5%、「おでかけぷらす」は95.2%、95.8%が「外出のきっかけになった」と回答しました。同時にフレイルや外出減少、うつ傾向のある人も把握し、地域に潜在する健康リスクを早期に発見する可能性も示しています。
受託型から、ストック型の健康長寿プラットフォームへ
現在は自治体や企業・施設との契約による収益が中心です。今後はアプリやPHRを活用した健康長寿プラットフォームを成長の中核とし、月額・年額利用料によるストック収益を拡大。2028年9月期の営業黒字化、2031年9月期の年商10億円を目指します。
北海道モデルを全国へ
札幌市、北海道大学、札幌市立大学、第一交通産業グループ、イオン北海道などとの産学官連携を基盤に、2031年には100地域・法人への導入を計画しています。看護、交通、商業施設、自治体をつなぎ、「外出」を起点に健康長寿を支える仕組みを北海道から全国へ広げていきます。
コメンテーターより

EY新日本有限責任監査法人
アソシエートパートナー
公認会計士 岩永 光正 氏
外出に困難を抱える高齢者が暮らすURや自治体、外出先となる商業・温浴施設、乗り合いワゴン車をAIで配車する企業など、多様な関係者を巻き込み、看護師同行という手厚い外出支援を日常的に利用できるサービスへ変える発想と共創力に強く共感しました。訪問先には、病院や行政に相談する手前の不安を受け止める「まちの保健室」も開設。この共創の輪をさらに大きく広げ、社会性と収益性を両立する持続可能な事業へと成長させることを期待しています。
※「The INDEPENDENTS」2026年10月号 - P.6 掲載
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