株式会社オーガンテック 取締役CTO 小川 美帆 氏
            代表取締役COO 山口 慶剛 氏

 × 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏

器官再生技術を実装する

鮫島:近年、平均寿命の延伸とともに「Longevity(健康長寿)」という概念が世界的に注目されています。そうした中で、歯や毛髪、皮膚といった身体機能や外見に関わる要素は、生活の質、いわゆるQOLに大きく影響します。貴社は「器官再生QOL医療の社会実装」を掲げています。

小川:当社は器官再生技術をコアに三つの事業を展開しています。歯の再生医療であるバイオハイブリッドインプラント、毛髪再生、そして研究開発ツールとしての人工皮膚です。科学的エビデンスに基づく器官再生技術を事業として社会実装し、「みんなの再生医療」を創出することを目指しています。

山口:三つの事業は一見別の分野に見えますが、基盤となっているのは同じ器官再生技術です。器官が形成される基本原理は共通しており、その応用として歯、毛髪、皮膚という領域に展開しています。

鮫島:貴社は基盤技術を横展開している、技術プラットフォーム型の事業モデルと言えそうです。

山口:はい。ただし事業化の時間軸は異なります。歯の再生医療は医療機器として認可が必要で時間がかかります。一方、人工皮膚は研究ツールとして比較的早く事業化できます。新体制では研究テーマの選定においても、収益化の可能性を強く意識しています。

 

研究から事業化への転換

鮫島:御社の技術は創業者の辻先生が東京理科大学・理化学研究所で研究していた器官再生技術が出発点ですね。ただ研究成果を事業化するのは簡単なことではありません。

山口:はい。研究は着実に進んでいたものの、事業モデルの構築に時間を要した時期がありました。いわゆるディープテック企業が直面する「死の谷」です。転機になったのが小林製薬の出資で、新しい経営体制を作ることができました。現在は日野自動車の社長・会長を務めた下義生がCEO、私がCOOとして経営を担当しています。

小川:私は当初は大塚製薬からの出向でしたが、現在は取締役CTOとして創業者の辻と研究開発部門のコアメンバーになっています。

 

歯根膜インプラントという知財戦略

鮫島:歯科インプラントの世界市場を見ると、ストローマンやノーベルバイオケアなどの大手企業が骨結合型インプラント技術で競争しています。一方で貴社は「歯根膜を再生するインプラント」という全く異なるアプローチを取っています。これは技術の改良というより、競争の領域そのものを変える発想にも見えます。

小川:天然の歯には歯根膜という組織があり、クッション機能や感覚機能を持っています。現在のインプラントは骨に直接固定するため、天然歯とは機能が異なります。当社はインプラントの周囲に歯根膜を再生させることで、天然歯に近い機能を再現することを目指しています。

山口:既存インプラントメーカーは骨結合技術の改良を中心に開発を進めていますが、当社は歯根膜という別の機能に着目しています。そのため、既存の骨結合型インプラントとは異なる機能概念に基づく技術領域で競争できる可能性があると考えています。

 

毛髪再生における知財戦略

鮫島:もう一つの柱である毛髪再生分野では細胞移入療法やiPS細胞を使った毛包再生など、さまざまな研究が進んでいます。こうした技術領域では特許の取り方が事業の成否に直結します。

小川:当社では毛包の原基を再生する技術を中心に特許を出願しています。再生毛包の製造方法や細胞培養技術など複数の特許を組み合わせて技術を保護しています。

鮫島:再生医療では基盤技術と応用技術を組み合わせたポートフォリオ型の知財戦略が重要になりますね。

グローバル展開とNASDAQ上場

鮫島:御社は将来的にNASDAQ上場を視野に入れていると聞いています。昨今、日本のIPO市場はやや不安定な状況もあり、特にディープテック企業にとっては資金調達環境が必ずしも十分とは言えません。

山口:歯科インプラントや脱毛治療も市場は世界規模ですので、最初からグローバル展開を前提にNASDAQ上場を目標に準備を進めています。

小川:再生医療は長く「未来の医療」と言われてきました。私たちは研究の段階にとどめるのではなく、実際の医療として社会に届けることを目指しています。

 

―「THE INDEPENDENTS」2026年4月号 P.12より

※冊子掲載時点での情報です
 
 

 
株式会社オーガンテック 取締役CTO 小川 美帆 氏   <話し手>
株式会社オーガンテック 取締役CTO 小川 美帆 氏
(→ イベント登壇情報
 
生年月日:1982年11月10日
出身高校:新潟県立新潟高等学校
2008年に東京理科大学基礎工学研究科卒業後、大塚化学HD株式会社に入社し、オーガンテクノロジーズに出向。2012年にオーガンテクノロジーズ社の独立に伴い、同社、入社。2020年に理化学研究所の研究員として勤務。
2023年1月にオーガンテックの代表取締役、2024年9月より取締役CTOに就任。


株式会社オーガンテック 代表取締役COO 山口 慶剛 氏  

株式会社オーガンテック 代表取締役COO

山口 慶剛 氏

生年月日:1959年6月14日
1987年に大阪大学理学研究科卒業後、株式会社東芝宇宙開発部に入社。理学博士。
JAXA宇宙飛行士ファイナリストに選ばれた経歴を持つ。
2014年に東芝、理事を歴任し、ダボス会議に10回参加。
2024年9月より当社、代表取締役COOに就任。


株式会社オーガンテック
設 立:2008年4月21日
所在地:東京都中央区晴海二丁目5番24号晴海センタービル
資本金:10,000千円
事業内容:歯・毛髪等の器官再生技術の研究開発、医療機器の開発・提供ならびに関連サービスの提供

 


弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表弁護士 鮫島 正洋 氏    <聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。