<起業家インタビュー>
■ 超高純度水素で世界のエネルギー変革に挑む
株式会社Ultra-High Purity(以下、UHP)は、2024年に設立された大分県発のディープテック・スタートアップです。事業の核は、バナジウム合金を用いた「超高純度水素精製技術」です。
バナジウムは、水素のみを効率的に吸収・透過させる特性を持ちます。この特性を極限まで引き出すことで、不純物を含むガスから、半導体製造や次世代エネルギーに不可欠な「99.99999%(セブンナイン)」以上の極めて高純度な水素を取り出すことが可能となりました。
すでに毎分10リットルの水素を生成可能な実機プロトタイプが完成し、大分県内での実証試験も開始。社会実装に向けた準備は着実に進んでいます。
■ 研究成果を社会に届けるべく、自ら代表へ
本技術は、大分高専における長年の公的研究プロジェクトを通じて培われたものであり、現在は当社はNDAを締結済みで、様々なノウハウ、及び特許等の独占使用権の交渉を進めております。さらに、バナジウムの耐久性を高める圧力制御など、現場運用を見据えた改良を重ねることで、独自の知財ポートフォリオを構築しています。
当社技術顧問である大分高専の松本佳久教授は、長年にわたり水素研究に取り組んできました。過去には事業化の試みもあり、私自身も外部から支援していましたが、アカデミアの技術を製品として成立させるには、想像以上の壁がありました。
「この技術を研究室の中で終わらせてはならない」
その想いから、研究成果を確実に社会へ届けるため、私自身が経営の舵を取る決断をしました。こうして2024年、UHPを設立しました。
私は大分高専卒業後、大手機械メーカーや地元鉄工所などで約10年、ものづくりの最前線に携わってきました。その経験があるからこそ、技術を“動く形”にする難しさと価値を理解しています。
「超高純度水素精製技術を実用化し、クリーンで豊かな日本を次世代へつなぐ」
その決意のもと、資本政策や企業連携を含め、経営のすべてに責任を持って取り組んでいます。
■ 高専ネットワークが育むイノベーション
UHPは、大分という地方に根ざしながら、世界市場を見据える「高専発ベンチャー」の新しいモデルを体現しています。
松本教授は2025年より高専機構本部で研究総括参事を務め、全国の高専の知財を統括しています。このネットワークを背景に、優秀な学生と連携しながら開発を進められる点は大きな強みです。
学生が磨いた技術を、UHPがビジネスとして社会に実装する。この循環により、地方からでも世界レベルのイノベーションが生まれる環境が整いつつあります。この理念に共感し、大手企業から大分へUターンしたエンジニアなど、優秀な人材も集まり始めています。
教育と事業が連携し、技術と人材を同時に育てていく。それが、私たちの描く地方創生の姿です。
■ 後悔しない人生を賭け、水素社会の実現へ
現在私は、父から継いだ商社の経営を信頼できる社員に任せ、人生のすべてをUHPに注いでいます。
その原動力は、「後悔しない生き方をしたい」という想いです。年齢を重ねた両親の言葉を聞く中で、「やれる時にやる」ことの大切さを強く実感しました。
動けるうちに挑戦し、全力で打席に立つ。それが起業の原点です。
UHPは今後、数億円規模の資金調達を経てIPOを目指します。あえてパブリックカンパニーを志向するのは、この技術を日本、そして世界の共有財産として広く普及させる責任があると考えているからです。
現在、複数の企業との共同開発や実証が進行しており、台湾政府機関からの招待など海外からの関心も高まっています。特に半導体や先端医療分野など、超高純度水素を必要とする領域から多くの引き合いをいただいています。
私たちは、地産地消型の水素供給基盤を構築し、持続可能な水素社会の実現に貢献していきます。
大分高専発の知財と、実装までやり抜く執念を掛け合わせ、日本発の技術で世界に貢献する。それが、次世代へバトンをつなぐ私の使命です。
interviewed by kips 2026.3.10
事業内容:超高純度水素精製モジュール(VASA module)の開発、製造、販売
従業員:3名
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【代表者略歴】 株式会社Ultra-High Purity
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※「THE INDEPENDENTS」2026年4月号 - P.2-3より
