■ 介護の現場で大きな負担となる「送迎」

 介護施設では、利用者の送迎に多くの時間と人手が割かれています。実際、通所介護では業務全体の3割を送迎が占め、本来のケアに十分な力を注げない状況が続いてきました。さらに送迎中の事故も少なくなく、職員の負担とリスクは現場の大きな課題となっています。

送迎を伴う介護施設の実態 送迎が業務負担の3割を占める

■  タクシー不足と免許返納が進む地域交通

 一方で、地域交通も厳しい現実に直面しています。タクシー運転手の数は年々減少し、高齢化も進んでいます。免許を返納する高齢者が増えるなか、車がなければ生活が難しい「移動弱者」が増え続けています。一般のタクシーでは介助を伴う移動を十分に担えず、暮らしの足が不安定になっているのです。

■ 法改正が後押しする送迎外部化

 こうした状況に加え、介護報酬改定や働き方改革関連法の影響もあり、施設の業務効率化と職員負担の軽減が強く求められるようになっています。送迎を外部化し、本来業務に集中できる環境を整えることは、現場にとって喫緊の課題となっています。

■ 介護施設と介護をタクシーを繋ぐ「CareDrive」

 ソーシャルムーバーが生み出した「CareDrive」では、施設はアプリを通じて送迎を依頼するだけで、複雑な調整や事故リスクから解放され、質の高いケアサービスを提供できるようになります。介護タクシーにとっても、安定した収益に加え、利用者との関係を活かした日常的な外出支援へと広がりが生まれます。
CareDriveのサービスモデル
デイの送迎で馴染みの関係づくり

■ 群馬から全国へ、そして成長資金の確保へ

 2023年に群馬で始まった取り組みは、すでに複数の介護施設や事業者で成果をあげています。1982インパクトファンドからリードとして、しののめ信用金庫及び信金キャピタルからフォローとしてエクィティによる資金調達も実施し、今後は障害者施設や放課後デイサービスなどへ対象を広げ、全国への展開を進めていく計画です。


 
コメンテーターより
弁護士法人 内田・鮫島法律事務所 弁護士 奈良 大地 氏
 

 ソーシャルムーバー様は、群馬発のゼブラ企業であり、「介護人材不足」と「移動弱者問題」という社会課題の解決と、経済成長の両立を目指す企業です。
 専用の送迎管理システムを用いて、介護施設と介護タクシーをマッチングさせるというビジネスモデルは着眼点が新しく、群馬のみならず、他地方における社会実装も期待されます。
 知財戦略という観点では、巨大資本による後追い的な事業参入を防ぐための障壁をどう構築していくかが重要となるでしょう。
 福祉業界と交通(介護タクシー)業界を同時に変革していくことを期待しています。

弁護士法人 内田・鮫島法律事務所 弁護士 奈良 大地 氏

 
※「The INDEPENDENTS」2025年10月号 - P.15 掲載
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