<起業家インタビュー>
■ 地域に根ざし、世界で勝負する
「地域に安心と希望を、これからの100年も届ける企業へ」
これは小平(こびら)株式会社が掲げる存在目的です。
現在は、鹿児島県日置市に本社を構える地域密着型企業で、LPガス・電力・リフォームなどの生活インフラ事業から、ITソリューション、貿易、脱炭素事業にまで広がる多角的な展開を行っています。
1912年に鍛冶屋として創業、2012年に私はその4代目社長を就任しました。京都大学では農業研究に取り組むため、京都大学農学部に進学し、その後イリノイ大学大学院ではブロッコリーの研究を行いました。そして、ITコンサル企業を経て2007年農業ベンチャーOryza, inc.を創業、その後も2社を農業分野での起業を行い、うち1社ではVCからも資金調達しました。2012年に家業の小平株式会社の経営に携わり、2022年からは第4創業プロジェクトを牽引し、薩摩リーダーシップフォーラム(SELF)理事、アトツギファーストメンターとして地域人材育成にも尽力しています。 「地元に根ざし、世界と勝負する」ことをスローガンとし、ニューヨーク支店の開設も目前で、地域にいながら世界中と繋がれる今は“グローカル”の時代を迎えていると確信しています。
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■ 市長の誘致で生まれた「新しい老舗」
私どもが鹿児島県日置市湯之元に本社を鹿児島市内から移した背景には、日置市長・永山由高(ながやま よしたか)氏の「湯之元を一緒に盛り上げませんか」という一言がきっかけとなり、行政と企業がパートナーシップを結ぶことで地域の課題解決に取り組めると感じたからです。
鹿児島県の西部に位置する日置市は、美しい海岸線と温泉街、豊かな農産物に恵まれた自然あふれるエリアで、中でも湯之元温泉は、古くからの湯治場として知られ、観光と暮らしが融合する場所です。近年では、市としても脱炭素の先行地域に指定され、自治体主導のオフグリッド型市役所(自立型電力システム)など、持続可能な都市づくりを進めています。
永山市長は2021年、当時38歳で初当選し、就任後は「子育てしやすい街づくり」と「地域に根ざす企業誘致」に注力しています。実際、4年間で10社が日置市内に本社を移転し、人口も転入超過を達成し45,840人となりました。
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鹿児島県日置市 市長 永山 由高 氏 Nagayama Yoshitaka |
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生年月日:1983年7月6日(41歳) 出身地:鹿児島県日置郡伊集院町(現・日置市) 九州大学法学部法政策学科卒業後、日本政策投資銀行勤務、南日本放送ラジオコメンテーター、株式会社ECOMMIT取締役などを経て、2021年5月に日置市長に初当選。現在2期目を迎える。 |
温泉街に位置する本社は、ただのオフィスではなく、街全体を“オフィス”に見立てるTown as a Office構想を掲げ、街ぐるみでの企業活動を実践しています。実際に、2021年には出店料・使用料無料のシェアカフェ「Hamaoka Pocket Park(通称ハマポケ)」をオープンし、地域の人と外部をつなぐ交流拠点として機能しています。
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■ 脱炭素・DX・地域開発、三本柱の経営戦略
小平株式会社は、グループ会社の太陽ガスと連携した水力・風力発電、地域電力会社への出資など、脱炭素の先進地域づくりを牽引しています。また、ITソリューション部門では、さまざまな業種で中小企業向け業務効率化システムを開発し、全国展開しています。組織面でも、SlackやZoomなどのクラウドツールを積極導入し、スマートHRやAIの活用を通じた全社的なDX化を推進中です。まさに「新しい老舗」として事業を推進しています。
■ 地域発グローバルベンチャーのロールモデルに
私どもの目指す方向は、「地域の可能性を信じ、地域で生き、世界とつながる」と明快です。
「地域で生まれ、地域に根付く」パブリックカンパニーの育成が必要とされる中、私どもは地域密着でありながら世界に挑む姿勢を掲げる、地域経済の新しいモデルを目指しています。2025年4月、日置市で開催されたインデペンデンツクラブでは、地域に根差したスタートアップや企業経営者が鹿児島県外からも参加しています。小平株式会社は、常に次の冒険に挑戦する地域商社として、積極的に業務提携や出資も行っていきたいと考えています。
interviewed by kips 2025.5.7
【小平株式会社】
設 立:1965年(昭和40年) グループ前身は1912年
所在地:鹿児島県日置市東市来町湯田3319-13
資本金:10,000千円
事業内容:エネルギー(LPG、電気)、国際貿易、ITソフトウェア開発、ガソリンスタンド事業など多角的に展開する総合商社
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【代表者略歴】 小平株式会社
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※「THE INDEPENDENTS」2025年6月号 - P.2-3より