株式会社amidex 代表取締役CEO 伊原 晃 氏
 × 弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏

健康な歯を削らない治療の革新

鮫島: J-Startup WEST選定、おめでとうございます。まずはamidexの事業について教えてください。

伊原: ありがとうございます。我々は「歯を削らない治療」の実現を目指し、歯科医療の新しい選択肢を提供する企業です。歯が一本無くなったり折れたりした場合、従来のセラミック治療では健康な歯を削って被せる必要がありましたが、我々の開発した「デジタルインデックス技術」を用いることで、削ることなく高精度な修復を可能にしています。 

鮫島:それは素晴らしい技術です。従来の治療と比べて、患者さんにとってのメリットはどのような点にありますか。

伊原:大きな違いは、やはり治療の低侵襲性です。国内では9割以上の方が、できるだけ歯を削ってほしくないと考えています。また、侵襲性の高い治療の場合、長期的な予後が悪いリスクも存在します。

 

特許で技術を守り、ブランドを確立する

鮫島:amidexの技術は非常にユニークですが、知財戦略についてはどのように考えていますか。

伊原:現在、徳島大学等と知財契約を結び、3つの特許出願を進めています。我々の「二層構造のインデックス」は、世界的にも新しい技術であり、特許での保護が重要です。また、特許だけでなく、治療法自体をブランド化し、歯科業界に広く浸透させる戦略も進めています。

鮫島:二層構造のインデックスというのは、どのような仕組みなのですか。

伊原:内側が柔らかく歯にフィットする素材でできており、外側を硬い素材で補強することで、精密な形状を維持しつつ高い適合性を実現するものです。これは、従来のシリコンだけの型取りでは再現が難しかった部分を解決する画期的な技術です。

 

知財視点で競争優位をどう築くか

鮫島:amidexの技術は、歯科技工所などに模倣されるリスクはないのでしょうか。

伊原:当然、模倣のリスクはあります。特に、歯科技工所は小規模事業者が多く、一度市場に広まると同様の技術を導入する可能性は高いです。そのため、特許を活用して権利を主張することが重要だと考えています。

鮫島:それに加えて、ブランディングや事業モデルの工夫も必要になりますね。

伊原:その通りです。我々は単に特許で技術を守るだけでなく、治療法の名称を商標登録し、患者さんに「この治療ならamidex」と認知してもらうことを狙っています。また、特許を活用したライセンス戦略も視野に入れています。さらに、現在は歯科医師向けの研修プログラムを整備し、研修に参加した歯科医院に治療法を提供する形で事業展開しています。歯科医院にとっては、従来の治療法に加え新たな治療法を手札に揃えることができるという感覚で、多くの歯科医師が有料の研修に参加しています。

 

国内市場から世界市場へ

鮫島:今後の事業展開について、どのようなビジョンを描いていますか。

伊原:まずは国内市場での普及を進め、その後、海外展開を目指しています。特に、ヨーロッパ市場には高品質な歯科治療を求める患者が多いため、戦略的なターゲットとしています。

鮫島:海外展開となると、さらに知財の重要性が増します。

伊原: はい。特許ポートフォリオをしっかり構築し、競争が激しくなる前に市場での優位性を確立したいと考えています。そのためにも、知財戦略とビジネス戦略を一体化させた展開を進めていきます。

 

―「THE INDEPENDENTS」2025年4月号 P.12より

※冊子掲載時点での情報です
 
 

 
株式会社amidex 代表取締役CEO 伊原 晃 氏   <話し手>
株式会社amidex 代表取締役CEO 伊原 晃 氏
(→ イベント登壇情報
 
生年月日:1982年12月2日
出身高校:徳島県立城ノ内高等学校
NEDO SSAフェロー
長岡技術科学大学特任准教授
名古屋大学大学院航空宇宙工学修了後、環境系ベンチャー企業(現レノバ)、デロイトトーマツコンサルティングを経て、大学系VCにてディープテックSUへの投資・経営支援を実施。投資先にて4社役員就任経験あり。
創業者の想いに強く共感し、経営・投資の専門性を活かし、当社の成長にコミット。
 
株式会社amidex
設 立:2023年8月1日
所在地:徳島県徳島市蔵本元町1-22
資本金:3,800千円
事業内容:歯科治療の補助用具の設計、製造及び販売


弁護士法人内田・鮫島法律事務所 代表弁護士 鮫島 正洋 氏    <聞き手>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士 鮫島 正洋 氏
1963年1月8日生。神奈川県立横浜翠嵐高校卒業。
1985年3月東京工業大学金属工学科卒業。
1985年4月藤倉電線(株)(現・フジクラ)入社〜電線材料の開発等に従事。
1991年11月弁理士試験合格。1992年3月日本アイ・ビー・エム(株)〜知的財産マネジメントに従事。
1996年11月司法試験合格。1999年4月弁護士登録(51期)。
2004年7月内田・鮫島法律事務所開設〜現在に至る。